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羊の贈り物

 私がOLをしていたころは、まさにバブルの真っただ中であった。毎晩のように飲み歩き、会社のタクシーチケットで帰るのが当たり前だった時代だ。当時の会社は新宿の高層ビルだったので、飲むのは当然、歌舞伎町や2丁目である。バーやショーパブ、クラブ、おかまバーなどをはしごしていると、いろいろな人と顔見知りになるが、私はなぜか外国人に声をかけられることが多かった。
 
 そのなかでも忘れられないのはジョンという男だ。いきつけのバーで声をかけてきた彼は、流暢な日本語を話す黒人だった。その後も偶然、バーで顔を合わせ、すっかり仲良くなったのだが、話を聞けば聞くほど、あやしい匂いが漂ってくる。

 出身地はアフリカのケニアで、父親は医者。実家はものすごいお金持ちで、仕事は超大手コンピューターメーカーの通訳。友人とルームシェアしていて、高井戸あたりに住んでいる。

 思わず、ホントかよといいたくなる経歴の持ち主である。そんな男が、数回会ったのちにこんなことをいい出した。

「君はお酒が強いんだね。ケニアではお酒の強い女はもてるんだ。君と結婚したい。結婚してくれたら羊をたくさんあげる」
 
 私は丁重にお断りした。羊などいりませんと……。

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