仕事と娘
なにかがおかしい。こんなに仕事が立て込むなんて尋常じゃない。富士山が爆発するとか、ニッポン沈没とか、きっと何かが起こる前兆じゃーないのか。
そんなことを考えたところで、原稿は真っ白のままである。
最近、娘は猛烈に仕事をしている母親が不思議でならないらしく、顔を見るたびに「お仕事するの?」「一緒に寝ないの?」と聞くことが増えた。娘は「仕事は金を稼ぐ手段」だなんて、ちっとも思っていない。だから「遊んでほしいのに遊んでくれない」とか「一緒に寝たいのに寝てくれない」という不満ばかりがつのっている。
ある日、娘はパックに入っているフローズンタイプのアイス「Coolish」が飲みたいといった。「お家にはないよ」というと、買いに行くとダダをこねる。原稿書きで買い物どころじゃないので「あのねえ、ママはお金がないの。お金がないとアイス買えないんだよ。だからママは、がんばってお仕事をしてお金をもらうんだ」と話した。
「そっかー、アイス買えないんだ」と納得する娘。ヨシヨシ、わかってくれたか……。
これで一件落着、のハズだったのに、そうはいかなかった。この日から娘のアタマには「ママはアイスを買うためにお仕事しているんだ」とインプットされてしまったのである。
ひさしぶりにスーパーへ行ったとき、約束していたそのアイスを手にした私を見て、娘はこう叫んだ。
「ママ! お仕事たくさんしたの? お金もらえたの? だから、アイス買えるの? ヨカッタね、ヨカッタねー!」
ワーイワーイと喜ぶ娘。泣きそうな私。スーパーでこんな親子を見たら、そっとしておいてください。
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