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学習能力

 ガーデニング取材が終わった2日の夜、とある編集者と新宿で飲んだ。予約していた、わらびやは創作和食の店で、駅からすぐ近くだというのに静かで落ち着いた雰囲気だった。テーブルもゆったり、お隣との距離もゆったり。席数はそこそこあるが、いわゆるオオバコ店にありがちな、騒がしさはない。その店で「カリカリじゃこと豆腐のサラダ」などをつつきながら、マッタリと日本酒を飲んできた。

 途中、トイレに行きたくなったので、編集者をひとり置いて席を離れる。トイレは店内同様、和の趣きのある内装で、個室のドアは引き戸である。リフォーム雑誌の仕事をしているので、うんちくを垂れるが、最近のトイレは「引き戸」「開き戸」が主流だ。内開きだと中で人が倒れても身体が邪魔になってドアが開かず、救出できないからだ。

「引き戸か……。飲み過ぎでぶっ倒れても安心だ」などと、妙な安心感を覚えながら、個室に入る。鍵は引き戸によくある「鎌錠」で、カンヌキがカマの形をしているタイプだ。

 ところが、たまたま入った個室の鍵はなぜか壊れていて、何度やってもドアの框(かまち)とカンヌキがはまらない。よくよく見ると框との高さが微妙にズレているため、カンヌキが咬まないのだ。「仕方がない、もうひとつの個室に入ろう」と思ったが、お隣はすでに使用中。すでに「する気満々で後は出るだけを待つ身」の尿意はすでに我慢の限界である。

「ドアを押さえながらしよう」

 酔っているせいなのか、ババアになって羞恥心がなくなったのか、我ながら大胆な戦術である。しかし、洋式便座に座りながら、片手でドアを押さえるのは至難のワザだ。やむなく片足と片手を駆使しながら、なんとか用を済ませた。

 軽い疲労感を覚えながら、トイレを出ると店長とおぼしき男性がスタッフと立ち話をしていた。「トイレの鍵、壊れている?」と聞くと「あ〜、すみません。壊れちゃっているんですよ。直しておきますね〜」とさわやかな笑顔。

 はり紙ぐらいしておけよ……と、心の中でつぶやきながら席に戻る。結局、私はその晩、2回もそのトイレに入るハメになった。1回目よりも2回目のほうが、足さばきも格段よくなり、スピーディに用を足すことが出来た。

 こんなところで学習してどうする、私。

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