もんもんは……
東小金井駅の居酒屋で友人と飲んだくれていたときのこと。カウンター席の隣に座ったオヤジは入店前から相当、酔っ払っていた。ビールを頼み、30分もしないうちに他の客にからみ始める。最初のターゲットはカウンターの隅でひとり静かに飲んでいたインド人男性だった。
「おい、てめえ。顔が黒いな。ビールなんか飲んでるんじゃねえ」「オレはなあ、ヤクザだ! もんもん入れた正真正銘のヤクザだ! 文句あっか!」
日本語がさっぱりわからないインド人も、雰囲気でからまれていることぐらい分かっているようだ。知らん顔をするも、オヤジのからみは止まらない。隣で聞いているこっちも、あまりのしつこさにゲンナリする。
ふと、インド人男性を見てみると、半べそでワタシを見つめていた。涙目で「助けてくれ」と訴えている。仕方ない、助けてやるか。
(手に持っていたコップ酒をドンと置く)
「いい加減にしなさい」
(オヤジ、こちらを向く)
「なんだ、ねーちゃん。オレはヤクザだ。文句あっか!」
(友人がまぁまぁと間に入る)
「もんもん見せてみ。どこの組よ。組のもんがカタギに迷惑かけているって電話してやるから」
(オヤジのまゆげがハの字になる)
「いや、その……」
(ん?)
「もんもんは……。入っとらん。組は……」
(笑)
「さっさと帰りなさい!」
ここで、ようやく店主が登場。ビール代を請求して、オヤジを追い出そうとした。しかし、ポケットから出てきたの100円玉と10円玉が数枚だけ……。ほどなく警察官に引き渡され終了。
1時間後、ワタシと友人も店を出た。すると駅前の交番でこってり絞られているオヤジを発見。泣きそうな顏で交番から出てきた彼は、なんとその足で目の前にある、別の居酒屋に入っていった。……10秒後。無銭飲食騒ぎを知っていたその居酒屋の店主に追い出され終了。
国際親善に加えて、犯罪を早期解決に導くという、有意義な夜であった。
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