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12年前のワタシ

DSCN1196.JPG 何を隠そう、私は新宿NSビルにあった建設会社で8年間のOL生活を経験している。派手なマニキュアをし、髪は茶色のソバージュ(歳がバレるな)。大酒飲みでヘビースモーカー、遅刻常習犯という、今だったら確実にリストラ対象に挙げられる女が、専務やら常務やらの秘書業務や営業事務をしていたのだ。どう考えても誤った人生だったように思う。同僚にとっても、記憶から抹消したい女かもしれない。

 気難し屋の専務は、なぜか昼時になると「バッテラ寿司を買ってきてくれ」というオトコだった。毎日、バッテラである。「専務、たまには太巻でもいかがでしょうか」などといおうものなら「バッテラだ! バッテラ!」と激しく怒られる。抜き差しならない気持ちを抑えつつ「かしこまりました」というしかない。

 建設省から天下ってきた常務は痛風持ちの酒好きだった。類は友を呼ぶ、というが常務とはよく飲みに行ったものだ。男性社員と一緒に連れ立って行くこともあったが、常務とふたりきり……も多かった。彼はワタシを赤坂や歌舞伎町の高級クラブに連れていき「娘なんだ」と見え透いたウソをついた。仕方がないので「お父さん」と呼びながら酒を飲むものの、すでに2軒目、3軒目のヨッパライだ。ソファに座って5分もしないうちに「ジョーム! あんな叱り方はないでしょーが!」となる。そんな無礼な部下に対しても彼は紳士的で、たとえ酔っ払っても嫌な気分にさせられたことはなかった。いまはどうしているのだろうか。痛風も心配だ。

 こんな懐古的なblogをかいたのには理由がある。OL生活の先輩から暑中見舞いメールが届いたからだ。彼女のメールにはこんなことが書いてあった。

「異動に伴い机の整理をしていたら、シティリビングに載ったあなたの記事が出てきて、これがあなたの第一歩だったのかなと懐かしく読み返しました」

 もう、12年も前のこと。都市部のオフィスに配られているフリーペーパー「シティ・リビング」のエッセー大賞に応募し、準大賞をいただいた。その半年後、ワタシは会社を辞め、無謀にもフリーランスで編集&ライター業を始めた。賞をもらったことが退社の理由ではないけれど、人生を変えるきっかけになったことは確かだ。彼女のメールを読みながら、8年のOL生活と12年のライター生活を振り返って、ちょっと懐かしい気分になったのである。

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