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魔が差した? 流用騒動

 外出から戻ったところ、家の電話に着信履歴があった。メッセージはない。番号(ナンバーディスプレイ)を確認したら、某制作会社からの電話だった。「もしかしてご連絡をいただきましたか?」と電話をしてみると、制作会社の社長は静かな口調でこういった。

「本当に失礼な話で申し訳ないのですが……」

 ここの会社とはちょっと前に仕事をしたきりで、ここしばらく新規案件の依頼もない。「失礼な話」とか「申し訳ない」といわれるとすれば、それは「ギャラ」のことに違いない。

   ギャラ、値切られる

   支払い遅延決定!

   悲しみに暮れる一家

 アタマのなかにはスポーツ新聞並みの見出しが踊る。ああ、今年はクリスマスも正月もナシか……。そんなことを想像して涙目になる私。すると社長は「実は……」と、話を切り出した。

 ちょっと前に私が手伝った仕事のことだ。一般読者から版元に電話が入り、とあるライターが書いた記事を「流用ではないか」と指摘されたという。編集を請け負っていた制作会社の社長は、あわてて指摘されたページと、流用元と思われる商業誌を見比べた。その結果「てにをは、と文章の順番は変えているものの、内容は流用と思われても仕方のないものであった」という。担当ライターに確認すると「取材先が協力的でなく、ほとんど話を聞かせてもらえなかった。この本にも紹介されているから、この記事を参考にしてくれといわれ、それを見ながら手を加えて入稿した」と答えたそうだ。なっち、じゃあるまいし。プロのライターだろうが。

 版元はこの仕事に関わったすべてのライターに対し「何の記事を参考にしたか。また、流用していないという念書を書いて出せ」と命じてきた。それを伝えるため、制作会社の社長が電話をかけてきたのだった。社長は本当に悲しそうだった。落ち込んでいるのが受話器から伝わってくる。気の毒すぎて、かける言葉もなかった。

 私自身、原稿を書くときに材料が足りなければ、他誌やwebサイトを参考にすることはある。しかし、原稿を書くというのは料理と同じで、材料が一緒でも創る人によって違うものが出来上がるはずだ。

 たぶん、そのライターはスケジュールが相当、厳しかったのだろう。いつもはそんなことをしていないのに、疲れて眠くて面倒になって「ま、いっか」とやってしまったのだろう。でも、そのことで悲しんだり、アタマを下げたり、眠れなくなった人がいることを忘れないでほしい。版元は弁護士を立てて先方に謝罪し、制作会社の社長は「もう、出入り禁止だ」「どうしたらいいのか、わからない」と落ち込んでいた。同じ時期に、大変な思いをしながら原稿を書いたライターとして、本当に悲しい出来事だった。

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コメント

一体どうしたことでしょう? 悲しいです。
幾千万もの言葉があり、ひとこと選ぶにも呻吟し吟味し、より完成度の高いモノをと思っているはずなのに……。相手の心を感じる感性があるからこそ、読者に伝えたい心があるからこそ、辛くとも寝不足だろうと這ってでも、この仕事を好きで頑張っているのではないのでしょうか?
残念です、そして本当に悲しいです。
広いようで、思いのほか狭いこの業界……網の目のように編集プロダクションや制作会社はつながっています。一体どうしたらよいのでしょう?
職倫理、人としての倫理観を再実感する出来事です。
残念です。その会社にも、そのライターさんにも、セカンドチャンスを与えて欲しい。
そう願わずにいられません。

投稿: さり | 2004.12.03 00:49

はるか昔、大学のクラブの仲間と静岡は大井川上流の食堂に入ったときのこと。オバチャンひとりの小さな食堂なのに、ラーメンが醤油・味噌・塩と3種類もあってなかなか本格的なのでした。そこでみんな口々に「シオ!」「おれはミソ!」「アタイはショーユ!」と注文したのでした。

すると食堂のオバチャン、目の前でインスタントラーメンの袋をバリバリやぶいて作り始めたではありませんか。何でもあるはずですわ。それから、包丁を持って店を出て行きました。おっなんだなんだと尾行すると、裏の畑でネギを取っています。みんなから「おおっ」というどよめきが起きたのでした。

アタシは無断引用などの誘惑にかられると、いつもそのことを思い出して踏ん張っています。インスタントラーメンでも、金を取るならせめて畑のネギを入れる。それがオバチャン、いやライターの矜持です。

ネギだけかい?! と突っ込まないでください。おおむねネギだけです。ココロザシ低いですから。

投稿: 市内のU | 2004.12.03 11:48

■市内のUさんへ

ラーメンの引用流用が何の関係があるのかしら、と
思いましたが、最後に納得。笑いました。
いやあ、ホントにその通り。
金をもらうのならば、せめてネギ。
これからこの言葉を胸に刻み(ネギを刻むのではない)、
自らを律して生きていきます。

投稿: poron | 2004.12.05 14:40

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