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昔のオンナの呪縛

 私の誕生日だった11月29日のこと。夫と娘と買い物をしていると、私の携帯に着信が。見なれない番号に「?」と思いつつも、電話を取る。なんと、昔付き合っていた年下の男からだった。

「姐さん、誕生日おめでとう」

 別れてからもう何年経つだろうか。元気そうだなと感慨にふけりながら「よく誕生日覚えていたね」と聞く私に、彼は元気よくこう答えた。

「だって姐さんの誕生日、イイニク(1129)だろ。仕事をしていても思い出しちゃうんだよ」


 お客さんへの納品日を確認しながら、イイニクに気づく彼。
「あと1日で月末だ。もう少し成績をあげなきゃ」とカレンダーを見てイイニクを発見する彼。


 ……なんともかわいそうすぎる。1日でも早く、別れた女の呪縛から解放してあげたい、と願う私。

 そういえば、OLになりたてのころ、こんなことがあった。同期の宮本くんとは特別な付き合いをしていたわけじゃなかった。同期グループで飲みに行くメンバーのひとり。そんな彼が、入社して間もないある日、こんなことをいいだした。

「オレさ、給料振り込み用の口座を作ったんだ。それで、キャッシュカードの暗証番号を0823にしちゃったよ」

 実は私の名前は「はつみ」である。よりによって宮内くんはキャッシュカードの暗証番号を「ゼロハツミ」にしたのだ。あのときは気づかなかったが、よくよく考えると一種の告白だったのか。数日後、今度は同期の宮本くんが「実はさ、キャッシュカードの……」といいだした。同期入社の、宮内宮本ふたりそろって「0823」。おまえら、何やってんだ。

 OLを辞め、ライターになって早10年。宮内くんと宮本くんは、いまだあのキャッシュカードを使っているのだろうか。結婚しても子どもができても、金を降ろすたびに思い出される「同期入社の女」。銀行へ行くたびに蘇る「同期入社の女」。ああ、なんて罪深い女なのだろうか。私って。

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