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私を染めた男・Kくん

 もう10年以上、おつき合いをしている出版社から封書が届いた。あて名は代書屋さんが書いた筆字、差出人は出版社の社長、封書に貼られている切手は「寿」デザイン。どう見ても結婚式の招待状である。

「社長が再婚すんのか!?」
「いや、そんなことで取引先に手紙出すわけねえな」
「たとえば紫綬褒章をもらったとか!? 」
「それとも何かのパーティか」

 そんなことを考えながら、おそるおそる封書を開けてみたところ。なんとKくんが編集長に就任した、というお知らせであった。

 駆け出しのライターだった私は、いくつかの女性誌に売り込みに行っていた。そのひとつが、この出版社。面談をしてすぐに「連載ものをひとつお任せしたい」といわれ、以来10年以上のおつき合いが始まる。まだ、本当に駆け出しで単発仕事とバイトで食いつないでいたころだ。ライターになって初めての連載ものは、本当にうれしかった。

 その連載ページの担当をしたのが入社したばかりのKくん。連載はテキスト中心の読み物ページで、OLが住むのにオススメの街を紹介する、というもの。ふつうであれば「自由が丘」とか「吉祥寺」などのセレクトになるであろう企画なのに、Kくんの企画趣旨はまったく違っていた。

 蒲田では「駅前では酔っぱらいが行き倒れ。取材中に万引き犯の大捕り物」、新宿では「ホストクラブに潜入取材。折り紙を折る男の正体」なんていうキャッチコピーがつくような、変わり種のページ。しまいにはKくんから「飛行機で通勤、つーのもいいッスね。大島に行ってきてください」といわれ、プロペラ機で取材に行ったこともある。さらに「ゴムボートで川下り通勤、やりましょうよ」といわれ、断ったことも。おかげで読者ターゲットのOLには不人気、数少ない男性読者には絶大な人気を誇るページとなった。男性カメラマンに「ファンです」とサインを求められたこともある。

 そんな無謀な企画を練り上げる新入社員のKくんが、いまでは編集長。あの連載あたりから、私のウリが「毒舌、無鉄砲、おしゃれ感まるでなし」になったような気がしてならない。Kくん、おめでとう。おしゃれな女性誌でライターとして活躍するのを夢見ていた私は、あなたのおかげでこんな風に成長しました。趣味ではじめたBlogですら、男性のコメントが多いという現実。ありがとう。本当に感謝しています。

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コメント

Kさん、編集長就任おめでとうございます。
そして、poronさんをこんな風に立派に染めあげてくださって、ありがとうございます。
深く感謝いたします。
これからも、第2第3のporonさんを染めあげてください。

投稿: さり | 2005.04.03 13:07

■さりさん

第2第3の……。
あんまりこういうのが増えると
困るのは編集者なのでは?と推察。

投稿: poron | 2005.04.04 09:12

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