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書きたい人

「最近さぁ、書きたい人ばかりで編集したい人がいないのよ」

 先日、電話で話をしているとき女友だちがこうぼやいた。彼女はライターとして取材執筆もするが、編集者としても仕事をする。最近は電子書籍出版の編集をしているらしく、いろいろな「書きたい」「(本を)出したい」シロウトさんたちと会う日々が続いている。

 シロウトの書いた原稿をそのまま出版化するわけにはいかないので、構成を練り直したり、リライトをする編集作業が必要となる。当然、彼女ひとりで何冊もこなせないので「フリーの編集者」や「編集もできるライター」に声をかけてみるのだが、揃いも揃って「編集するんじゃなくて、私も書きたい」と答えるらしい。

「世の中、書きたい人ばかりで編集する人がいなければ、どんなにいい原稿でも本として完成しないのに」

 彼女はこういいながら、ため息をついていた。私自身も企画から構成、人の手配、リライトなど編集の仕事が多いから、彼女のいいたいことはよくわかる。Blogやwebサイトで書く楽しさを知るのはいいけれど、ただ文章を書きつらねるのと、作品として完成させることは別。いくらおいしい野菜が山盛りになっていたところで、料理をする人がいなければそれは単なる食材なのである。

 最近、ライティング(執筆)の仕事を引き受けても、編集者のディレクション能力が低くてイライラすることも多い。記事の構成がいつまでたっても決まらないから、取材すべきポイントがぼやける。文字数はどのぐらい? と聞いても「どのぐらいがいいですかねえ」という返事。読者ターゲットや文体も「どうしましょう」という感じだ。編集者が育っていないうえに、編集をしたい人も、編集ができる人もいなくなっている。書きたい人ばかりが増えている今、本が「おもしろくなくなった」のも当たり前か。

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仕事ネタ」カテゴリの記事

コメント

poronさん、お忙しそうですね。
わたしはプライベートでは「書きたい」けど、
仕事では「書きたくない」です。
というか「書けない」です。
プロフェッショナルな書き手さんの引き出しには、いろんな言葉がしまわれているんだもの。
よく思います。『餅は餅屋』……それぞれがプロとして役割を果たすことで、仕事は成り立っているのでしょうね。
表に出ない裏方だって、素晴らしい。
編集者さん(poronさんも)、無理しないでがんばってください。

投稿: さり | 2005.04.04 14:34

どうも、市内のunoです。
アタシが日頃から思っていることをエントリしてくださったので、コメント入れさせてください。

poronさんに反駁するわけではないのですが、アタシは、素人もプロも書きたいヒトがどんどん書けばよいかと思います。もっといってしまえば、ライターも編集も特別なシゴトではなくて、誰でもできるシゴトであります。やる気がなくても毎日こき使われていれば、3か月もあれば技術的なことは一通り憶えてしまうことでしょう。憶えられないヒトは、3か月以上この世界にいないことです。フォークリフトを運転できないヒトが、朝の魚市場でうろうろしているようなもので、みんなが迷惑しますからね。

それは別として、書きたいヒトがたくさんいるのであれば、書いてもらえばよいのでは? ほとんどはゴミ箱直行のスパムメールに近いものなのかもしれないけれど、万にひとつは玉(おいしいネタともいいますが)もありましょう。そんな希な出来事を、探したり待ったりすることが編集者のシゴトだとアタシは思います。取材の段取りをしたり、リライトするのも編集者のシゴトの一部ではありますが、それはまあ事務作業のようなものです。

相手が思わず油断してしまうようなスカスカのおヒトが、ひょっとしたら優秀なインタビュアーなのかもしれない。できればアタシは、そんなスカスカのヒトになりたい。ときおり芽生えてくる実体のないプロ意識を潰しながら、いつもそんなことを思っています。

投稿: uno | 2005.04.05 01:57

■さりさん

さりさんはどちらかというと裏方でしたが、
とってもいい仕事ぶりでしたよ。
書かせるのも撮らせるのもうまい。
おだて上手も編集者の技なのかも。

投稿: poron | 2005.04.06 02:32

■unoさん

うーん……。私は書きたい人が書くことに、とやかくいうつもりはないですよ。シロウトさんでも、下手なライターよりも才能がある人もいるし、プロでもひどい仕事ぶりの人もいる。書きたければ、どんどん書けばいいんです。

ただ、書きたい人ばかりで編集をする人がいない、編集ができる人がいないのって、ダメじゃないのと思ったのです。逸材を見つけたり、待っているのも編集者の仕事ですが、それをする人できる人がいなくなっている、という話。

段取りやリライトって事務作業ですかねえ。私はあれやこれやの交通整理をキチンとできる人がキチンとした編集者、だと思っていたんですが。ここのイメージがunoさんとは違っているのかもしれないなぁ。

投稿: poron | 2005.04.06 02:46

poronさん、こんにちは。
やっぱりみんな「主人公」になりたいのでしょうか。まあ、「編集」という仕事が、一般的にはあまり知られていないということもあると思いますけど。

私は出版業界のことがよく分からないんですが、自分の書いたものをプロの編集の方に添削してもらうとどうなるんだろう? と思ったりはします。どんな風に料理するものなのか興味があって。ま、もちろん、「料理に値するかどうか」が問題ですけどね(笑)

こんなことを考えるシロウトの輩がいるから、編集者が足らなくなるのかも・・。

投稿: Kako | 2005.04.06 11:56

unoです。

poronさんのエントリが、当方のツボにハマってしまい、長々とコメント返してしまい失礼しました。今、読み返せば伝え切れていないひとりよがりな文章だなと思います。でも、私の考えの基本センはそこにあります。

これを書くとまたまた長くなりそうですので、続きは当方のブログに移して後日TBしておきます。

投稿: uno | 2005.04.06 17:50

■kakoさん

kakoさんって悪徳のpoohpapaさんもいうように、
文章力ありますよ。
きっと編集者の添削も必要ないと思います。
(私が担当だったら赤入れはほとんどしません)
料理のしがいがある原稿も楽しいですが(笑)。

■unoさん

コメントはお気になさらず、どんどんしてくださいませ。
ご意見、TBお待ちしています。

投稿: poron | 2005.04.08 12:07

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