貞子と私
先日、男友だちのあっくんと居酒屋で飲んでいたときのこと。小上がりで夕飯がわりのタコライスといつもの泡盛でまったりとしていたところ、バタッというタダならぬ音が耳に入った。音のするほうに視線を向けると、ちょうど私たちの目の前で女が座り込んでいる。隣席にいた「男ふたり、女ひとり」グループの女であった。どうやら、トイレに行こうと小上がりから降りたものの、すっ転んでしまったらしい。思わず、あっくんが「大丈夫?」と声をかけるが、反応はない。腰まで伸ばした長い髪をダラリと垂らしたまま、うつむいているので、まるでリングの貞子。そのままはい上がってきそうな雰囲気である。
連れの異常事態に気づいた男があわてて駆け寄り、貞子の脇を抱える。ようやく立ち上がった彼女の足元を見ると、履いているのは細くて高いかかとのハイヒールだった。
「その靴じゃ、ケガするよ。お店のサンダルがあるから、それを履いたら?」
あっくんがサンダルを指差し、親切にいう。貞子を抱きかかえた男も「そうだよ、これを履いたほうがいいよ」とサンダルを勧める。なのに、彼女は「いらない! いらないってば!」と激しく拒否し、フラフラとトイレに向かっていった。
「あの子、グデグデだねえ」と笑う私に、あっくんは「アンタもずいぶん似たようなことをやっているよね」と答える。ふん、余計なお世話。私はパンプスなんか履かないし、いつもオヤジサンダルでトイレに行っているよ。一緒にすんな。
貞子と同類にされて、ふて腐れていた私だったが、その翌々日、酒を飲みにいった帰り、駅の階段ですっ転び、ねんざしてしまった。しかも、慎重に階段を降りた挙げ句、最後の1段で転ぶというバカっぷり。もう、そこは階段ではなく、小金井の大地だというのに……。
今日から旅行に行くことになっているのだが、いま私の足首はおそろしいほどに腫れ上がっている。
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コメント
うまいなー。貞子と階段(怪談)をかけているのかなあ。さすがにプロですね。ご自分のタタリも笑いにして(笑)
いつも見るの楽しみにしています。
あっ あいさつ遅れました。でもあいさつするほどのものでもないので、失礼。
「悪徳不動産の独り言?」さから紹介されてから、見るようになりました。
おもしろい文章書くコツなんなり教えてください。企業秘密ですよね。やっぱり。
投稿: takkan45 | 2005.04.11 07:18
■takkan45さん
旅行に行っていたので、コメントが遅くなりました。
はじめまして! 階段と怪談……。
気づいていなかったです。わははは。
悪徳さんはどうもホメすぎでして、期待してここに来る人は
ガッカリしちゃうかもしれない、とビクビクしています。
悪徳さんのついで、でいいので、またお立ち寄りくださいませ。
投稿: poron | 2005.04.14 04:24
大丈夫ですかぁ?御御足!くれぐれもオチャケには気をつけて!!!!!
夢と希望の国って千葉なのに東京を名乗っているところ?
my 長男も高校の遠足で行ってました。雨模様だったので、乗り放題やり放題(オット、高校生なので、あくまでもアトラクションです。)と喜んでましたよぉ。
投稿: みっちー | 2005.04.15 12:12
■みっちーさん
遠足や修学旅行の学生さん、いっぱいいましたよ。
ああ、若いなあと見とれていましたが、
そのなかのひとりが、みっちーさんの息子さんかも。
投稿: poron | 2005.04.17 06:48