ある夜のメールから(4)
※初めての方は「ある夜のメールから」と「ある夜のメールから(2)」、「ある夜のメールから(3)」からどうぞ。
取材を申し込んできたのテレビ局ではなく、出版社だった……ということを知り、思い出したのは皮膚科で見た、ある雑誌のことだった。
「雑誌の取材を受けました」
およそ病院には似つかわしくない、こんな貼り紙に気づいたのは待ち合い室の長椅子に腰かけたときだった。本棚には子ども向けの絵本とともに、同じ雑誌が何冊も並んでいる。私はそのうちの1冊を取り出して、付箋紙の貼ってあるページを開いた。
見開きのモノクロページに、華々しいキャッチコピーと先生のインタビュー記事。開院までの経歴や患者に対する気配りなど、それはそれは「すばらしく」書かれている。インタビュアーは女性タレントのか○うかずこ。にこやかな笑顔で先生にインタビューする様子が写真で掲載されていた。
「へえ……。見開きとはずいぶんとチカラを入れたもんだ」
ライターという仕事柄か、素直に雑誌を見ることができない性分である。ついつい他のページを、あら探しでもするようにめくっていく。ああ、なるほど……。病院、企業、飲食店となんでもアリ、インタビューだけで構成されている雑誌か。しかも、どの取材先でもタレントやら俳優やら女優やらがインタビュアーをつとめている。要するに普通の雑誌とは違い、編集ページを装った広告記事だけで成り立っている雑誌なのだ。 そのとき、ちょうど診察室に呼ばれた私は、先生にいじわるな質問をする。
「センセ、雑誌見ましたよ。取材を受けたんですか?」
「ああ、そうなんだよねえ」
「インタビュアーがか○とうかずこさんでしたね」
「うんうん、そうなんだ」
「取材させてくださいって来たんですか?」
「そうなんだよね。それでインタビュアーはタレント3人のうち、誰がいいですかって聞くから、か○うさんがいいってリクエストしたんだよ」
「……で、取材は無料でしたよね?」
「え?」
「お金、取られたんですか?」
「え? ま、まあ」
「それって取材じゃなく、広告ですよ」
「……」
「宣伝になりますよって、何冊も買わされたでしょう」
「……」
コムベトナムへの取材はこれと別の雑誌だが、やっていることは同じはずだ。すぐさまpoohpapaさんにメールを送り、事件の全貌を説明した。(最初のメールを開封してから約2時間18分が経過=午後11時18分)。しかしその直後、彼はいくつかの疑問を私に投げかけてきたのであった……。
(つづく)
明日あたり&全5話で終わらせたいが、どうなることやら。19日から海行くからさぁ、その前になんとか……。
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コメント
海水浴ですか・・・。いいですね。そろそろ梅雨も明けそうですし。
お嬢さんも前々からずっと楽しみにしていらっしゃることでしょう。
どうかそれならば、ブログの更新は無理をなさらないでくださいね。
次を楽しみに待つっていうのもなかなかいいものです。
それにしても、どんな結末を迎えるのでしょう。
第5話楽しみにしています。
投稿: ぷるぷるぷりん | 2005.07.17 03:14
おはようございます
その時のお医者さんのショックはこんな感じでしょうか?
「俺さあ、クラスのマドンナのS子から告白されて、やっちゃったことあるんだよ。ほら、こんなラブレターも貰ってるし」
「へえ・・・、でも、オマエ知らないだろうけど、S子、床屋の椅子みたいな女だよ。K男もF彦も、それにT郎も、あとA、B、C、D・・・、誰の尻でも乗せるらしいよ」
「・・・・・」 (-_-;)
それにしても、poronさんの会話再現は凄くリアルですね。お医者さんの落胆ぶりが目に浮かぶようです。その後、poronさんは不必要な太い注射、打たれたりしませんでしたか?
投稿: poohpapa | 2005.07.17 05:05
poronさん、ごぶさたしてます。
海の日に海ですか? いいなぁ。
『ある夜のメールから』連載、力入ってますね。こういう輩が多いので、本当の雑誌の取材でも、勝手に詐欺だ、広告だと誤解され「あっ、けっこうです」な~んてことも逆にありますよね。
皮膚科の先生の場合は、実際にタレントを連れてくるわけでしょう? 7万円のうち、タレントはいくらギャラもらうんでしょう?
いずれにしても、その手の広告雑誌に出ているタレントはかなり落ち目。少しでも露出するためならなんでもという事務所サイドの考え方もあるんでしょうか。
その広告は、タレントと商店主や開業医両者の弱い部分を、うまく利用して成立しているということですね。もちろん出版側から言えば「先生を取材して(広告)記事を作る」ということなのでしょう。あえて広告と言わないところがズルいけど、営業テクニックの範疇になっちゃうのかな。
ライター、カメラマンにはちゃんとギャラが出るんでしょうか? ここでも、書きたいライター、写真を載せたいカメラマンが利用されているのかもしれませんね。
ホント、怪しい仕事が横行する世界なんですよね。逆に、ライターをやっているなんて言うと、自分を宣伝してほしいという気持ちで近づいてくる人もいるんだということも、最近、思い知ったとです(^-^;
長年、出版業界にいて、いまさらながら世間知らずだったと反省する今日このごろです。
とはいえ、それで人を信用しないというのもイヤだしねぇ。失敗は経験という糧にするしかないですね。
投稿: ぷれこ | 2005.07.17 16:59
なるほど。。。
編集ページを装った広告記事だけで成り立っている雑誌!
こんなのもあるんですね(・◇・)アヤヤー
勉強になります。
続きが気になりますが、poronさんのことだから旅先の海でも何か事件に遭遇するんでしょうね?断崖絶壁に訳ありそうな男と女が!とか?
そちらも期待してます!
投稿: しげちん | 2005.07.18 15:32
■ぷるぷるぷりんさん
亀レスですみません。
おかげさまで何とか最終話を突っ込んで、
無事に出発できました。楽しかった〜!
ところで悪徳さんのところで、キリ番取ってましたよね。
poohpapaさんは非常にいい方なので、思いっきり甘えて
欲しいものをリクエストしてみましょう。
きっと涙目になりながら、プレゼントを
用意してくれますよ(笑)。
■poohpapaさん
太い注射ですか!? いえいえ、ありません。
逆にパンツ下げて、おっ広げてきました。
ご期待に添えましたでしょうか?
■ぷれこさん
さすがは業界人。鋭い指摘&推理で最終話を前に
どうしようかと思ってしまいました。当たっているし!
その出版社のサイトを見たら、どうやらライターの同行は
ないようで、カメラマンと司会者が行くと書かれていました。
たぶんカメラマンは社カメ、司会者は広告営業か編集者だと
思います。つまり外注のギャラはないんでしょうね。
私もよくアポ入れのとき、広告や詐欺と間違えられて
ピシャリと断られることがありました。
最近はまず電話をしたときに「広告ではありません。
お金はいっさいいただきませんが、こちらからの謝礼金も
ありません」などと説明するようにしています。
そうじゃないと話すら聞いてもらえないんだもの……。
本当にいやな世の中ですよねえ。
■しげちんさん
いやぁ、旅行中はいろいろとありました。
宿とのゴタゴタ、あやしい旅行カップルなどなど……。
順次、ネタにしていく予定ですので、ヨロシク!
投稿: poron | 2005.07.23 02:02