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怨念の一冊

 ずいぶんと昔の話になるが、夫の取引先から急ぎの原稿を頼まれたことがある。ムック(不定期刊行物)の校了間近になって、インタビューページの原稿が仕上がっていないのに気づいた副編集長が、あわてて電話をかけてきたのだ。8ページ分の原稿はテープ起こしすら済んでおらず、このままではムックの発売延期が確実だ。

 実はこのムック、クルマオタクの編集者が企画を立てて作っていたのだが、こだわりが強すぎるあまり、ライターへの発注はせず、ほとんどのページを自分で執筆していたらしい。インタビューの内容はメーカー技術者のうんちく。別の仕事を抱えていたし、締め切りの日程がキツかったが、夫が世話になっている手前、断るわけにもいかず仕方なく引き受けた。

 メーカー技術者が語るそれは専門用語満載でテープ起こしだけでも大変だ。それでも2日間、完徹をして仕上げると副編集長は「助かったよ〜」と喜んでくれた。ところが……である。こだわりのクルマオタ編集者は、仕上がったページを見て「自分が思い描いていたページと違う。こんな風にしたくなかった」とつぶやいたらしい。

 副編集長は「ふざけるな。テメエが抱え込んでいたくせに!」「発売延期になったら、すでに打ってある広告の損害は誰が責任とるんだ」と立腹。かなりのバトルになったそうだ。クルマオタ編集者の嫌がらせか、私の名前は奥付にもインタビューページにも載せてもらえず、後味の悪い仕事となった。そして、編集部から届いたムックは1度も開くことなく、我が家の本棚で眠ることとなる。

 そして、5年以上の月日が流れ……。ある日、オークションの落札金額を調べていたときのこと。あの「怨念のこもったムック」はすでに絶版となり、プレミア価格がついていることを知った。どうせ2度と開かない本だ、と出品したところ……。

 なんと発売価格の倍で落札! あの日のつらいテープ起こしも原稿書きも、安いギャラも、嫌味な編集者の仕打ちも忘れ、ようやく心が晴れた瞬間であった。  

 

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「仕事ネタ」カテゴリの記事

コメント

へえ~、そんなこともあるんだね。
どうせなら10倍で売れればよかったのにね。
まあ、よかったよかった。
それにしても「我が儘」な人間は多いなあ~。
げんなりしちまう・・・。(泣)

投稿: O氏 | 2005.07.02 00:25

クルマ好きのイメージを悪くするようなお方ですね。
(私は断じてクルマオタではありません(爆))

でも、苦労が報われたというか、過去の仕事が利益をもたらすってことあるんですねぇ。

私は逆に先々月、4年前に前の会社で担当した日本版401k(確定拠出年金)の
企業導入支援用の財務シミュレーションシステムが
ほとんど使われないままお蔵入りした話を
前の会社の先輩から聞き寂しくなりました(爆)。

その開発の時に身につけた年金の知識だけが財産です(爆)。

投稿: 株トムシ | 2005.07.02 09:00

因果は巡る糸車。
さしずめ「厄払い」が出来た気分でしょう?
わたしも、すっきりしました。
すべての所業はいずれ己に戻ってくると、そう思っています。
poronさんの心が晴れて、めでたしめでたし。

投稿: さり | 2005.07.02 12:46

あぁ~ん、のkeichanです。
こんな仕返しは、ダメです。(怒
思い出の中や、利益倍増しの中に、真実の御利益は無いの、ダス。(笑
ゴメン。orz

投稿: keichan | 2005.07.03 01:20

テープ起こし、ずいぶん苦労した覚えがあります。
今は音声を文字に変換できるソフトとかあるそうですが・・・。

にしてもこの編集担当者、自覚ゼロな方ですな。
こだわりたい気持ちもわからなくはないのだけど、
仕事(商売)なんだから、時間(納期)を守るのが大前提なわけで。
納期無視、スケジュール無視なら、そりゃ商業誌とは言わない気がします。

私は逆の立場でしたが、ライターさんに任せておいた
月刊誌の特集ページ(5か6ページ)をすっ飛ばされたことがありました。
結果、休み潰して取材やり直して校了前3日間貫徹してなんとかなりましたが、
この出来事中に起こったさまざまな事が、
業界から足を洗うキッカケになってしまったのがなんとも皮肉でした。

昔制作に携わった本にプレミアがついて、
復刊ドットコムとかにも「復刊希望」という声を聞いたりすると、
確かに嬉しい気持ちになったりしますが、
「なぜ今になって!」という思いも同時に発生しますので、
結局、心情的にはプラスマイナスゼロだったりします。

投稿: コロラド | 2005.07.03 03:18

■O氏

10倍になるのは希少な写真集とかでしょうね。
私は副編集長からの依頼だったので、その編集者とは
会っていませんが、その後しばらくして辞めたようです。

■株トムシさん

そうそう。大変な仕事でもそこから何かが
残ればいいんですよね。この本に関しては仕事上のメリットは
ほとんどありませんでしたが……。
まぁ、しいていえば副編集長と仲良くなったことかな。

■さりさん

この業界の仕事って特定の相手だけでなく、毎回取引先が
違いますよね。だから、仕事をやった後の気分もさまざまです。
いつもいっていることですが、安くても大変でも
「この人と仕事できてよかった!」という案件と
「2度とやるもんか!」という案件などいろいろ。
さりさんとはいつもいい気分で仕事ができていましたよ。

■keichanさん

気分を害してしまったようでゴメンナサイ。
でも私にとってこの本は営業で使うこともできず、
しかも自分で読んで楽しむ本ではなかったので、
捨てるしかなかったのですよ。
それがオークションで「ずっと探していた」という人に
渡ったわけで……。必要な人の手に渡るほうが、
燃やされるよりも本にとってはシアワセなのでは?

■コロラドさん

ライターさんにすっ飛ばされたなんて大変!
たまにあるようですね、こういうこと。
私は締めきり厳守がモットーなので、落としたことはなし。

こだわりって大事だし、気持ちはわかるんですが
埋め草みたいな記事を入れて、とにかく発売っていうのは
読者に対しても失礼。こだわるのなら、限られた
時間内でベストな方法で、最高の記事を作る。
抱え込むことばかりがベストではないんですよね。

この編集さんも、もっと早く「自分の思い描くページを
作ってくれるライターに依頼する」「自分が早く仕上げる」
ことをしていればよかったはず。まあ、いろいろと事情は
あるんでしょうけれど……。

投稿: poron | 2005.07.03 13:43

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