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2005年8月の記事

刺し殺す

 仕事で調べものをしているうち、なぜか怪し気なサイトにたどりついた。どうやら児童ポルノばかりを紹介するアダルトサイトらしい。いかがわしいキャッチコピーとともに、幼い子どもの裸体を映した画像サムネイルが
紹介されている。娘を持つ母親にとっては神経を逆なでし、吐き気すら覚えるようなサイトだ。

 画像サムネイルのひとつに、青いビニールプールで遊んでいる少女が映っていた。学校の校庭らしい場所で、裸のままプールに入っている。ほんの少しうちの娘に似ているじゃないか。同じ年頃だろうか。訳もわからないまま、こんな風にビデオで撮影され、性の対象として売られているなんて……。盗撮なのか、それとも金のために親が子どもを売ったのか?

 私はいたたまれない気持ちで、その画像をクリックしてみた。キャッチコピーには「金のために親が娘を12万円で売った! あどけない5歳の無修正ビデオ!」と書かれている。無料サンプルのボタンをクリックすると、動画が始まった。シーンは学校の校庭。カメラが少しずつ青いビニールプールに近づいていく。うつむきながらおもちゃで遊ぶ少女の身体を、カメラはなめまわすように映していく。

 あっ!

 カメラに顔を向けた少女を見て、私は思わず叫んだ。それはまぎれもなく私の娘だった! カーッとアタマに血がのぼり、身体は怒りに震える。いったい誰がこんなことを!

 そのとき、サンプル動画は娘のかたわらにいた撮影スタッフを映し出した。照明や音声、見たこともない男たちのなかに、たったひとりだけ見覚えのある男がいた。……夫だ! あの野郎、金のために娘をこんなことに利用したのか! 娘にこんなことをさせて、素知らぬ顔をしていたなんて! 最低だ! 殺してやる!

 夫はとある広告の撮影に出かけている。あと1時間ぐらいで帰ってくるだろう。家に入ったとたん、まずは問いただし、認めたところでぶん殴ってやろう。そして、包丁で刺し殺す。それでもきっと私は、腹の虫が収まらないだろう。

 ……そんな殺人計画を立てたところで、私はハッと目を覚ました。寝汗をビッショリかいている。……夢だった。締切りの原稿を書き終え、娘と一緒に昼寝をしていたのだ。暑さで寝苦しかったため、眠りが浅かったらしい。

 本当に広告の撮影に出かけていた夫はほどなくして帰ってきた。夢の話をし「あんたを刺し殺すつもりだった」と告白すると、彼は「うーん」といって黙り込んだ。「バッカじゃねえの」と笑うだろうと予測していた私は拍子抜けした。まさか……? まさか正夢だったらどうしよう……。

「まさか、心当たりがあるんじゃないよね」

 おそるおそる問いただす。すると夫は「あきれて何もいえなかったんだよ!」と怒り出した。ああ、よかった。私の見る夢はいつも、異常なほどリアルだ。子どものころ、見た夢を話すと母は「よくそこまで細かい設定で夢が見られるわねえ」とあきれかえっていた。心臓に悪いうえに、夫婦仲まで危うくなりかねないような夢。おちおち昼寝もできたもんじゃない。

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多摩川競艇花火大会

DSCN4317 25日に予定されていた多摩川競艇の花火大会は、台風で翌26日に延期。夫と娘、私の母、親友あっくんとともに出かけてきた。昨年に続いて2回目の見物。台風一過の晴天で丸一日、太陽が照りつけたアスファルトは夜になっても熱がこもっていて、シートを敷いて座り込むと死ぬほど暑い。あっくんは私の母に「オンドルみたいですね」と話しかけていた。お前はオンドル経験者なのか、北朝鮮じゃあるまいし、と問いつめたい気持ちだったが、せっかくの花火見物だ。適当に笑っておこう。

 休憩を含めて約1時間、1,000発の花火を楽しんで帰宅。その夜、娘は「ポーン」という音の屁をこきながら「お尻から花火の音がする!」とゲタゲタ笑っていた。

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予算がない

 不景気になってからというもの、ふたこと目には「予算がない」というクライアントが増えている。腹立たしいったらありゃしない。

 数カ月前、とあるWeb制作会社の仕事を受けた。websiteの仕事は紙媒体よりも安いことがほとんどで、手間ひまは変わらない。しかも代理店が間に入っていたりすると、中間マージンをごっそり取られ、ライティングのギャラは「これってギャラじゃなくって謝礼ですか?」と嫌みをいいたくなるほど安くなる。はっきりいって「できれば避けたい仕事」だ。とはいえ、私はふだんからギャラの良し悪しよりも「気持ちよく仕事ができるか」を重視して取引先を選んでいる。

 web制作会社との交渉で決めたギャラは、やはり紙媒体にくらべれば安いといわざるを得ないものだったが、お互いに気持ちよく仕事ができればそれでいい。仕事が終わったあとで「いいライターさんを紹介してくれて助かったよ」と感謝されれば、紹介者の顔も立つ。そう思いながら、仕事を進めた。

 ところが……だ。仕事がもうすぐ終わろうとしていたとき、web制作会社から「急にですね。同じサイトのなかで、あと○ページ分の原稿が必要になりまして、追加でお願いしたいんですが」と連絡が来た。ちょっとした文量の追加ではない。最初に引き受けた仕事と同量ぐらいあるものだ。私は電話口で「追加料金はおいくらで?」と聞くと、なんと相手は「最初に頼んだ仕事と今回の追加を合わせて、料金はそのまま」といいだした。理由は同じサイトの仕事で予算は最初から決まっているから、という。しかも「もともと、ライティング用の予算がないんですよ」といった。 つまり、web制作会社はホームページを作る仕事を引き受けたものの、一式いくらの予算だったため、ライターに外注する予算を別枠で作っていない、という話だ。いくらなんでも、そりゃないだろうよ。

 プロの料理人が作るレストランに行って、さんざん追加注文をしたあげく「予算がないから最初に頼んだ1品分だけ金を払う」なんてことがあるだろうか。金がなければキャベツでも買って、自分の家で食えばいい。最近「予算がない」といえば、なんでも安く済ませられると勘違いしているクライアントが多すぎる。ここ数年、雑誌なんかもこの手が多く、あまりにも「予算がない」「予算がない」が続くと「編集部で原稿書きましょうよ」「本、出すの辞めたらどうです?」といいたくなる。

 いまどき潤沢な予算を確保しているところなんてあるはずがない。ならばせめて、気持ちよく仕事ができるかを考えたらどうか。「今回はこれしか出せないんだけど、できるだけ手間がかからないように努力するから」とか「ゴメンね〜、次回埋め合わせするから」などといわれれば、こっちだってむげにはしない。物はいいよう、人も使いようなんである。

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雨のなか、プールの撮影

DSCN4301 楽マル.jp のコラムに使う写真を撮るため、朝っぱらからプールの撮影へ。ここは小金井市、府中市、調布市の可燃ゴミを消却する処理施設で、毎年夏の間だけ併設のプールを開放している。入場料はなんと小学生以下は10円! 中学生は20円、高校生以上の大人でも30円という激安ぶりだ。地元民としては「ああ、あそこね」という感じで新鮮味もへったくれもないだろうが、実は10円で入れるプールというのは全国的にも珍しい。くわしくは26日(金)にアップするコラムに書いているが、いまのところ全国で3カ所しか見つけられなかった。

 今朝8時半に電話をかけ「いますぐ写真を撮りたい。9時にいくから」と強引にアポ入れ。台風が近づいているため、プールは閉鎖していたが、広報担当者の好意(つか、強引にだな)で撮影させてもらってきた。裸足+洋服+カメラという、およそプールには似つかわしくない格好で入り込み、シャッターを切る。待機していた監視員の兄ちゃんは「雨降ってますけど、そんなんで写真撮れるんですか?」とあきれ顔だ。「いいんすよ。とりあえずプールの形がしていれば」と答えておく。

 もちろん、アタマも服もずぶぬれ。水着をガッツリ着込み、水泳帽と水中メガネで撮影してきたら(しかも、仁王立ちとかで)、いいネタになったかもしれないが。

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便器を抱え、とある男を想う

 先日、ひさしぶりに酒を飲みすぎて吐いた。涙ながらに便器を抱えていると、ふと昔付き合ったヒロアキを思い出した。ヒロアキは5歳年下の大学浪人生だった。19歳の童貞浪人生と、24歳の百戦錬磨OL。それはそれは濃密で忘れがたい交際だと想像できるはずだ。

 休日の夜、私はヒロアキを連れて、新宿のバーで飲んだくれていた。彼が友だちとよく出かける、渋谷・千歳会館の洋風居酒屋と違い、黒いベストを着たバーテンダーがいる店。ジャズの流れるその店で、私はカクテルをしこたま飲んだ。

 ベロベロになった私をタクシーで連れて帰ったらしい。翌朝、目を覚ますとそこは高円寺の彼のアパートだった。吐く息はもちろんのこと、身体中が酒臭い。ヨロヨロと立ち上がり、トイレへ向かう。ヒロアキはまだ眠っている。ユニットバスのトイレにしゃがみこんだ瞬間、私はゆうべ履いていたジーンズがないことに気づいた。さては、ヒロアキったら……。まったく若いんだから。あんなに酔っぱらった私と……。

 シャツと下着だけでベッドに戻り、ヒロアキの隣でまたひと眠り。次に目を覚ましたとき、彼は起きてテレビを見ていた。

「私のジーンズ、どこ?」
「ゆうべ、脱がしたんでしょ? よく覚えていないんだけど」

 彼は悲し気な顔で「本当に覚えていないの?」といい、静かに天井を指差した。天井に取り付けられた吊りフックと洗濯用のミニハンガー。そこに私のジーンズは吊るされていた。

「ゆうべさ、タクシーを降りてすぐ外で吐いたんだよ。それでジーンズのすそを汚したから、夜のうちに洗濯して干しておいたんだ」

 天井から吊るされたジーンズは窓から入る心地よい風に揺れ、まるでモビールのようにクルクルとまわっていた。そんな、優しくて繊細な男と別れて10年以上経った今、私はひとり便器を抱えて涙に濡れる。

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夏休みが怨めしい

 娘が夏の皮膚病ハットトリック(命名・くっきもさん。コメント参照)になって、保育園を休んで早8日。やはり若さというものだろうか、とびひと手足口病はすっかり治ってピンピンしている。あふれんばかりの元気パワーに、私はやや疲れ気味。だってさぁ、娘がおとなしく家でジッとしているわけがないじゃん。ママ〜、プール行こうよ〜。公園行こうよ〜。自転車乗りたい〜。お腹すいた〜。アイス買ってえ〜。暑い〜。寒い〜。ウンチ出たぁ……。万事この調子だ。
 
 昼間は娘に付き合って直射日光を浴びまくり、娘が寝入った深夜に締切り原稿を書く。そんな8日間を過ごしたせいか、数日前から顔のあちこちに吹き出物が現れた。しかも、皮膚病ハットトリックの娘と違い、激しく治りが遅い。彼女のしっとりツヤツヤの肌を見るたび、ちくしょう、こんにゃろとつぶやく。

 は、早く……。夏休みよ、早く終わってくれ……。もう、こっちは瀕死寸前。

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取りかえしのつかないことを

torikaeshi

※夏休み特別企画・お笑い画像。とあるサイトで拾ってきました。

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ぬこたんGIF

nukotan

※要クリック。夏休み特別企画・お笑い画像。とあるサイトで拾ってきました。

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チンコむらむら

muramura

※夏休み特別企画・お笑い画像。とあるサイトで拾ってきました。

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痴漢で死刑判決

shikei

※夏休み特別企画・お笑い画像。とあるサイトで拾ってきました。

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刺青ファミリー

 おかげさまで娘のとびひと手足口病はすっかり良くなり、連日どこかのプールへ出かけている。先日は知人から「安いうえにすっごくいいよ」と勧められていた某市の市民プールへ。猛烈に期待をふくらませながら出かけたところ、盆休み中ということもあって駐車場もプールも激混み。しかも、100円玉数枚で利用できるせいか、はたまた土地柄なのかは知らないが、TATTOOばりばりのヤンキー揃いでげんなりする。

 肩に蝶や十字架程度のTATTOOならまだカワイイ。幼児用プールで背中に観音像とか般若を背負った兄ちゃんが、茶髪の子どもと水をかけ合ったり、抱っこしたり。かたわらには同じく上半身に和彫りを施した女房が……。いや、いいんですよ。別に。でもねえ、誰かとぶつかるたび、いちいちガン飛ばすのは辞めなさい。ここは幼児プール。相手は子ども。

 私は刺青が悪いとは思っちゃいないし、カッコイイと見とれることもある。しかし、最近の刺青ファミリーの多くは得てしてマナーが悪い。喫煙所でもないところで寝転がったままタバコを吸ったり、ゴミを投げ捨てたり、気に入らないことがあると怒鳴り散らしたり……。そんな光景を見ていると、ついつい昔のヤクザはもうちょっと場をわきまえていたよ、といいたくもなる。

 訳あって(……といっても我が家は代々、堅気の家庭)子どものころから幾人かのヤクザを知っているが、彼らは刺青を見せびらかしたり、むやみに堅気を脅したりは決してしない。むしろ、オンナコドモには優しいから、ヤクザだと気づいていなかったぐらいだ。どんなに暑い日でも長そでを着ているので子どもだった私は「おじさん、半そで着ればいいのに」といったことがある。すると彼は「身体に模様が入っていて、みんなが怖がるから隠しているんだ」と答えた。プールに行ったとしても自分はシャツを羽織り、女房子どもが楽しんでいる様をプールサイドから見ているだけだ。

 そんな昔ながらの気風はもうないのだろうか。……と、利用料ン百円の市民プールで思いを馳せる。

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いい男「すんや」

 ただいま夏休み真只中。本当は8月下旬に休むつもりでいたのだが、娘が「水いぼ」「とびひ(伝染性膿痂疹)」「手足口病.」を併発し、やむを得ず前倒しすることしたのだ。保育園は「元気だったら登園してもいいわよ」といってくれているが、プールは入れないし、なによりとびひの患部がひどい有り様で、娘自身がへこんでいる。

 水いぼはどこかからもらったらしく春ごろ、ひざ裏に感染。いまは昔と違ってプール禁止にすることはなく(参考リンク/庄司こども病院・水いぼとプール)、皮膚科でも「免疫がつけば消えちゃうから」と積極的な治療はしない。そんなわけで娘もかゆみ止めの塗りながら様子を見つつ、ようやく治りかけてきた……と思っていたところ、患部がとびひになってしまったのだ。加えて数日前から手のひらや腕、足首などに針の先ほどの湿疹ができている。あわてて皮膚科に駆け込むと「ああ〜」と先生。もう最悪だ。3重苦ではないか。

 病院から帰宅し、すぐさま保育園へ連絡。すると園長は「あらぁ〜、手足口病は流行っていたのよねえ」という。水いぼもとびひも手足口病も感染する病気ではあるものの、いわゆる風邪と同じぐらいの扱いで特に「お休み」させる必要はない。しかし、娘自身がへこんでいるし、幸い仕事のスケジュールが伸びたこともあって「だったら夏休みを前倒ししちゃおう」ということになったのだ。

 昨日はお昼寝布団のシーツを洗濯するため、娘と保育園へ顔を出してきた。ロッカーの前で荷物をまとめていると、年長クラスの男の子が「ねえ、ねえ」と近づいてくる。

「ねえねえ。○○ちゃん、どうして休んでいるの?」
「足の傷にバイキンがついちゃって、お休みしているんだ」
「痛いの?」
「うーん、シャワーのときはちょっとだけ痛いみたい」

 彼は、娘がひざにしている白いサポーターを見て「痛いんだぁ。かわいそうだねえ。治ったら保育園に来られるの? 早く治るといいねえ。保育園に来るの、待っているよ」といい、部屋から出ていった。

 彼の言葉に「なんていい男なんだ」と感激した私は、娘に「あの子、なんて名前?」と聞くと「すんや」といった。すんや……。すんや? すんや? あとで名簿をよくよく見たら「瞬也」だった。まあいい。すんやでも。

 すんや……。あんた、すてき。

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新橋酒呑み事情・完

 はじめての方は「新橋酒呑み事情」「新橋酒呑み事情・続」からお読みください。

 パチパチパチパチパチ……。

 グラスの底から小さな小さな音が聞こえる。誰かが話をしたら、あっという間にかき消されそうなほどの小さな音。

「南極の氷だよ」

 店主がそういうと、常連客はみな「うふふふ」「クスクス」と笑った。事情がわからずポカンとしていると、普段着で日焼けした男性が「実はね僕、氷屋なんですよ。今日たまたま南極の氷をもらったんで、これで酒を飲もうって持ってきたんです」という。どうやら、りえ姐との話に夢中になっている間に、みんなのグラスに氷のおすそわけがされていたらしい。これを機に常連客たちと打ち解け、私たちはそれはそれは気分よく飲み続けた。

「さて、そろそろ帰ろうか」

 りえ姐と私は、次の立ち呑み屋へ行くため席を立つ。「お会計を」の声に橋幸夫はぶっきらぼうにこういった。

「ななせんえん」

 え? 間違ってない? そう聞く私に彼はもう1度「ななせんえん」とだけいった。あり得ない。だって私たち、これだけ飲んで食べたんだから……。焼酎水割り8杯、マグロと酢蛸、温泉卵×2、マグロとオクラの山かけ×2、オクラのおひたし、谷中しょうが、こんにゃくの田楽×2、コーンバター×2、焼そば。これで「ななせんえん」ってアリ? 新橋バンザーイ!

 あまりに楽しくっておいしくって安いんで、帰りの終電はこのオヤジみたいになっていました。もちろん、駅を乗り過ごし。新橋、サイコー!

(おわり)

DSCN4202

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新橋酒呑み事情・続

 はじめての方は「新橋酒呑み事情」からお読みください。

 くたびれた橋幸夫はカウンターのなかから「なんだか、かったりいな」とつぶやき、ビールをあおった。まったくもってやる気のなさそうな店なのにマグロはうまい。油断ならねえ……。私とりえ姐は彼がかったるそうに出し続ける料理を食べながら、焼酎の水割りをガフガブ飲んだ。

 30代後半と40代前半の女ライターがふたりで飲んでいれば、話題はもっぱら業界ウラ事情。ありえないほどマージンを抜いているフリー編集者、風前の灯となった編集プロダクション、自転車操業で未払いを続ける有名カメラマンなどなど話はつきない。そうしているうち、いつの間にか10席の店内は常連客で埋まり、店主はあいかわらずかったるそうに接客を続けていた。

 見なれぬ私たちを横目で見ながら、常連客同士で会話がはずむ。なんだか私とりえ姐だけ、浮いてねえか? そんなことを考えたとき突然、橋幸夫が私のグラスに大きな氷を放り込んだ。まだ、飲んでいる最中じゃんか。いささかムッとした私を見て、彼はまたニタリと笑う。

「グラスに耳、当ててみな」

 な、なに? グラス? 耳? 8人の常連客と店主は思いがけない言葉に戸惑う私を、笑顔で見つめている。サラリーマンのおじさん、どこかの管理職をしてそうなおばさん、普段着で日焼けした男性……。みんな微笑みながら静かに私の様子を伺っているのだ。不思議そうなりえ姐の横で、私はグラスにそっと耳に当てた。

(つづく)

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新橋酒呑み事情

DSCN4200 酒飲みといえばココ、というわけでドブネズミスーツのオヤジたちが集う、新橋駅前ビルに出かけてきた。仲のいいライターりえ姐が以前から誘っていた「背負っている人以外はお断り」な店だ。(過去記事参照

 新橋駅前ビルはその名の通り、新橋駅直結の駅ビル。ビルの地下だというのに、新宿のしょんべん横丁やゴールデン街みたいな1坪店が軒をつらねる。立ち呑み屋、居酒屋、小料理屋などがギッシリで、もう入り口の段階で飲んべえのココロ踊る……といった感じ。しかも、27度もの熱帯夜だというのに、ここらの一画はクーラー全開、冷え冷え。チーム・マイナス6%とかクールビズなんてクソくらえってな雰囲気。いいねえ、いいねえ。

 1軒目は腹ごしらえも兼ねて、小料理屋に入る。りえ姐が以前、行ったことのある店だ。店は1坪ほどの広さでカウンターの10席のみ。くたびれた橋幸夫みたいな店主がビールを飲みながら、ひとりのサラリーマン客をもてなしていたところだった。

「いいですか〜?」

 りえ姐がのれんをくぐる。席に座ったとたん、店主は私を指差して「あ、あんた初めてだね」といいだした。さすが常連客ばかりの小料理屋。一見客をすぐに見破るとは……。「ええ、初めて。顔に書いてあった?」と軽くかわすも、立ち上がりは相手ペース。うう、なんだかくやしい。

 つまみをお任せで見繕ってもらい、最初に出てきた「マグロと酢ダコ」に箸をつける。……むう、おぬしやるな。1坪店だからとあなどっていた。刺身にはうるさい私が驚くほど、イキのいい中トロ。思わず「おいしい」と声に出してしまう。店主はニタリと笑い「マグロにはうるせえんだ」とつぶやいた。またもや、相手ペース。うう、くやしい。

(このネタつづく)

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朝日新聞ご購読の方へ

 今日の朝刊はどうぞゆっくり読んでください。紙面のどこかでウンコライターがえらそうにコメントしております。

 ……いや、えらそうに出るつもりはなかったですよ。ホントに。私の書いた仕事用コラムを気に入った記者の方から「専門家じゃなくて実際の現場を見てきたアナタから、実用性のある話が聞きたい」といわれ「そーだ、そーだ。先生といわれるヤツらは意外と現場を知らねえってんだ」と共感し、取材先を紹介したり、ネタ提供をしたんですよ。……いやね、うちは読売新聞ご購読者なんですけどね。しかも昨夕、汗だくになって夕飯を作っているとき、朝日新聞の人が来ましてね。「奥さーん、新聞取ってくれませんかぁ」といいやがるんでね「この間、読売と1年契約したばっかりじゃ、ゴルァ!」と追い返したんですわ。

 ……でもって今日、朝イチで新聞屋に行ってきますよ、私。もちろん、朝日新聞を買いにいくためです。

※追記。朝刊の生活面に掲載されていました。「涼の知恵 昔に学ぶ」という特集でコメントのみです。以前、別誌で取材した男性をご紹介し、その方の写真も掲載されています。

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ナイスアドバイス

 締切りだの、たまったメールの返信だの、取材交渉だの、新規案件の打ち合わせだの、やることがたくさんありすぎてBlogまでエネルギーが届かない。なのにちょっと更新しないでいるだけで、ケツの穴がモゾモゾしてきて落ち着かないのはナゼなのか。

 いや、いろいろと書こうとはしている。しかし、何かと忙しいのだ。昨日もそうだ。夜、小金井市役所から電話がかかってきた。のびゆくのフェスタも終わったし、任期も7月末で終わったはず。まだ私に用があんのか? と身構えていたのに、職員が発した言葉は意外なものだった。

「会長(その言い方やめれ)、のし付きの缶知りませんか?」
「は? 缶?」
「ええ、缶です。包装紙に包まれたのし付きの缶」
「な、な、なに? なんのことよ」
「フェスタの後、荷物を会場から市役所に持って帰ったんですけどね。見慣れない缶がまぎれこんでいたんです」
「ふうん」
「紙に粗品、○○っていう名前が書かれていて……」
「封は開いていないの?」
「ええ。包装紙の状態なんですよ。フェスタ当日にどなたかが差し入れたものと思って」
「中身はどんな感じ?」
「たぶん、菓子店の缶なのでクッキーかと」
「誰あてとも書いていないんだよね」
「ええ」
「じゃ、開けちまえ!」
「えっ?」
「とりあえず開けてみろ。爆発するかもしれないけど。ボカーン!」
「い、いやですよ」
「じゃ、ゆすってみる」
「えええっ、いやです」
「とにかく開けてみて、食べ物なら口に入れる。でも……、死ぬかもな」
「そんな〜」
「今、ひとりで残業?」
「ええ、そうです」
「じゃ、爆発したり、毒殺されても発見は明日の朝か……」
「会長〜!」
「がんばれ〜、これぞ公僕の仕事じゃ。11万人の市民のために身体を張れ」
「え、いや、その……」
「おつかれ〜。ガチャン」

 よかった。迷えるひとりの公務員を、正しい道に導くことができた……。ナイスアドバイス。お疲れ、アタシ。

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のびゆくこどもフェスタ

 30日(土)に小金井市公会堂で行なわれた「のびゆくこどもフェスタ」は朝からたくさんの来場者があり、思いがけないほどの大盛況で終了した。参加団体のメンバーやスタッフを含めると、公会堂を訪れたのは1,000人近く。ホールでのパフォーマンス、会議室での子ども向けイベント、市内団体のパネル展示など、どの部屋も子どもたちでギッシリ……という感じ。それはそれは、笑顔がいっぱいのイベントであった。

 のびゆくこどもプランを一緒に作った、学芸大の先生も「こう暑い日に大人がワサワサ集まると、ちょっと殺伐とした雰囲気になるけれど、子どもがいると大人もニコニコ顔になっちゃうよねえ」と感心していた。本当にそうだ。いかめしい顔つきのアンタ(先生)が、えらいニコニコしているもんな(笑)。

 私はほとんど寝ずに会場入りし、朝から会場の設営を行なった。みんなで何キロもあるパネルを運び、次々と設置をしていく。スタッフ全員、首からタオルをかけて、まるで工事現場のオッサンみたいだ。オープニングの段階でヘロヘロだったけれど、みんな本当によく働いてくれたと思う。

 無事に終了したあとは居酒屋で打ち上げ。委員や事務局の職員から「会長の締切り催促はものすごく厳しかった」「宿題を忘れたときは、殺されるんじゃないかと思った」「あの催促はまるで借金の取り立て屋のようだった」など、ありがたくない感想をいただきながら、焼酎をガブ飲みしてきた。あまりに楽しくて飲みすぎてしまい、朝、目が覚めたとき私は、リビングで大の字になっていた。しかもパンツ一丁で豪快に。

 こんなはっちゃけ女のできそこない会長を、あたたかくサポートしてくれた委員のみなさん、そしてフェスタを盛り上げてくれた参加団体のみなさん、何ヵ月も前から準備を手伝ってくれた外部スタッフ、制約がいろいろとあるなか、たくさんの協力をしてくれた事務局(小金井市の子育て支援課)、忙しいなか駆け付けてくれた稲葉市長、暑いなか足を運んでくれた市民や市議会議員のみなさん、本当に本当に感謝します。どうもありがとう。

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