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チャレンジャー

DSCN4618 先日、実用書の仕事で西ノ宮まで取材へ行ってきた。ふだん、深夜から明け方まで仕事をし、日が昇ってから眠るという生活をしている私にとって、朝7時前に家を出るのは至難の技。結局、一睡もしないで大阪へ向かった。

 取材は滞りなく終わり、さっさと東京へ帰ろう……と思ったと同時に「化粧、取りてえ」とココロの叫び。OLからライターに仕事替えをして以来、ほとんどの日をすっぴんで過ごしているから、朝から晩までファンデーションを塗ったままでいると、息苦しいというか、何というか。とにかく嫌な感じなのである。

 絶対にそうなるのがわかっていたから、取材用のカメラバッグにちゃんと洗顔セットを忍ばせてきていた。新幹線に乗ったとたん、洗面所に直行し、シャッとカーテンを閉める。クレンジングも化粧水も乳液もタオルもある。これで準備は万端だ。持参したクレンジングを塗りたくり、手のひらで化粧を落としていく。すべてを洗い流した後のさっぱり感を想像しながら、私は満足感に酔いしれていた。ああ、この感じ。そうそう、この感じよ。ファンデーションも口紅もすべて流れて消えてしまえ!

 ……とそのとき、私は【洗顔フォーム】を忘れてきたことに気づいた。あいにくクレンジングは強力に化粧を落とすオイルタイプ。洗顔フォームでダブルクレンジングしなければ、ヌメヌメテラテラと光る顔で車中を過ごすことになる。

 新幹線の薄暗い洗面所で、私は窮地に追いやられていた。マタギに追われた手負い熊のように、もう後がない。化粧を落としたかっただけなのに、油まみれになるという矛盾。このまま負けるのか、それとも起死回生の策はあるのか……? がっくりとうなだれたとき、洗面ボウルの奥の【あるもの】に気づいた。窮地に追いやられた人間は何をしでかすかわかったもんじゃない。今から考えればなぜあんなことを考え付いたんだろうか。

 私は洗面ボウルの奥にあった、それに手を伸ばした。公衆トイレによくあるアレ。どう見ても人工的な緑色をした、変なニオイのするアレ。そう、液体せっけんだ。

「これもせっけん、これもせっけん」と呪文のようにつぶやきながら、私は液体せっけんで顔を洗った。そして、何度も何度も水ですすぎ、ようやくオイルクレンジングのヌメヌメから開放されたのだ。さっぱりとした顔で席に戻り、缶ビールをプシュと開ける。これを飲んで、後は東京までゆっくり寝よう。そんなささやかな欲望は、あっという間に打ち消される。ヒリヒリヒリヒリヒリヒリ……。尋常じゃない傷みとともに、妙なほてり感。液体せっけんで顔を洗うのは、やはりチャレンジャーだったらしい。

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コメント

来週名古屋日帰り出張の際においらもチャレンジしてみます。
帰る頃には脂っこい顔になってるはず。
皮膚の強さには自身あり!
結果を報告します。

投稿: しげちん | 2006.01.18 14:03

なんともチャレンジングというか・・・
涙なしには見れないエピソードですね(T_T)。

液体石鹸・・・って用途からして消毒性が強いんですから
poronさんのデリケートなお肌には辛いですよぅ。

新幹線ってなんでもあるようで実は無いんですよねぇ・・・。

投稿: よっつぁん@旧株トムシ | 2006.01.18 21:35

■しげちんさん

ぜひぜひお試しくださいな。で、報告を。
あれで洗って何ともないなんてあり得ないですよ。
要覚悟でチャレンジしてきてください。

■よっつあんさん

どうやら、あのせっけんってヤシ油を原料にした
カリせっけんというものらしいです。
意外にナチュラル系で驚きました。
http://www.saraya.com/products/hyakkaten/02.html

投稿: poron | 2006.01.24 14:20

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