« 新宿でふたり酒 | トップページ | 取材ノウハウ »

へその緒

 先日、娘の通う保育園で、とある講演が行なわれた。それは助産婦(師)さんを招いて「いのちとからだの話」をしてもらう、というもの。講演は父母会が主催したもので、私はその担当委員をつとめていた。

 コトの発端はここ数年の妊娠ラッシュにある。何人ものおかあさんが第2子、第3子を身ごもり、日々大きくなっていくお腹で送り迎えをするうち、子どもたちは「大きなお腹」と「これから生まれてくる赤ちゃん」に興味津々。私が娘を迎えに行くたび、子どもたちが「赤ちゃんがいるの? いつ生まれるの?」とむらがってくる。これはねえ、ただの贅肉なんですけど……。

 こうした子どもたちの興味に加え、子どもの質問にどう答えたらいいかという保護者の悩み、近年増加している子どもを狙った性犯罪の心配などから「いのちとからだ」について話を聞く機会を作ろうと企画したのだが、いわゆる「性教育」ということもあり、委員会のなかでも賛否両論だったし、私自身も「いったいどこまで子どもたちに話すの?」と慎重にならざるを得なかった。

 結論として私を含めた委員会メンバーは「保護者向けではなく、親子が一緒に聞けること」「保育園で行なわれている保健指導と連動させること」「過激な内容にならないよう、充分に配慮すること」という、3つの目標を決めて、約10カ月かけて講師探しと園長との打ち合わせを行なってきた。

 そして、当日……。妊娠3週目、1カ月、3カ月、6カ月と大きくなっていく妊婦さんのお腹の中を、イラストにして見せる助産婦さん。最初は豆粒ぐらいだった赤ちゃんが成長していく様子や、へその緒のこと、どんな風に生まれてくるのかを説明すると、子どもたちは「うわあ〜」「大きくなってる!」と目をキラキラ。さすが、あちこちの保育園で講演をしている助産婦さんだけあって、話がとてもわかりやすい。ちょっとドッキリするようなイラストもあったけれど、それは妊娠〜出産の流れで説明していることであり、その部分だけを切り取って「そこまで教えるのか」「過激すぎる」と思うのは大人のいやらしさなのだ。

 男の子と女の子は身体が違う。大人になると男の人と女の人は、赤ちゃんが欲しくてギュッと抱き合う。そして、赤ちゃんはお腹のなかでこんな風に育つんだよ。生まれてくるときは赤ちゃんもおかあさんも大変なんだけど、がんばるの。あなたたちもこうして生まれてきて、みんながとてもうれしくて幸せな気持ちになったんだ。そんな風に生まれてきたあなたたちはとても大切な存在。だから、自分の身体を大切にしようね。プライベートゾーンは汚い手でさわったり、人に見せたり触らせたりしたらいけないんだよ。

 講演が終わり、帰宅したとたん、娘は私が妊娠中に読んでいた出産本をひっぱりだし、夕方暗くなるまで真剣に見入っていた。

「ねえ、ママと私はお腹のなかでヒモでつながっていたんだねえ」
「そうなんだよ。そのヒモで赤ちゃんに空気や栄養をあげるの」
「ふうん、すごいヒモなんだね」
「へその緒っていうんだよ。見てみたい?」
「え? 生まれたときにチョキンって切ったんでしょ?」
「ちょっとだけ残すの。しばらくすると乾いてポロッと取れる」
「へえ!」

 白い糸がついた、黒くて小さな塊。約5年間、引き出しに仕舞いっぱなしだったへその緒と、それを興味深げに見ている娘を見て、私のほうがなんだかジンワリとしてしまった。

|

« 新宿でふたり酒 | トップページ | 取材ノウハウ »

「娘ネタ」カテゴリの記事

コメント

おはようございます

いたいけな子供たちに誤解を与えるような体型というものは如何なものかと・・・(爆)

でも、いいお話ですね。私もジ~ンときました。

投稿: poohpapa | 2006.02.08 08:29

「へその緒」はウチの母も残してくれていました。
残すことで、良い思いで・教育になると思います。

あと写真。
子供の頃はなんとも思いませんでしたが、
年を取るにつれ、幼い頃の写真の尊さが
強く感じられるもので・・・。
ウチは父が写真好きでよかったと思っています。
今なら映像も簡単に取れて保存できますから、
記念日にはなるべく撮っておいたほうがいいかなと。

たぶん、娘さんが嫁に行く頃に、
とっても良い思いでとして感じられますよ~!

投稿: コロラド | 2006.02.08 13:06

 我が家の小猿2号は、国分寺の某助産院で産まれました。
とうちゃんで有る私と、小猿1号は当然立ち会いました。
産まれたら、当然やらねばイケナイ作業、へその緒の切断はもちろんとうちゃんと来ざる1号の役目な訳で......

へその緒って、コリコリして結構硬いんですよね。

投稿: へらコブラ | 2006.02.08 18:52

なんだか私もじーんとしてしまいました。
いつもながら賢いお嬢さんですね。

「性教育」ってとてもデリケートな問題ですが避けて通れない
もので子を持つ親としては大変ですね。

へその緒・・・見せてもらったのはいつの日だったか・・・(遠い目)

投稿: よっつぁん | 2006.02.08 21:50

おはようございます。
紛失大王の私が、へその緒はちゃんと見えるところにおいていたのを見て、
オットがすごく驚いていたことがあります。
小さなものだけど…実は大きな存在だったりしますね。
ま、普段は忘れてるんだけど。

投稿: tsuyorin | 2006.02.09 09:37

■poohpapaさん

いいんです、いいんです。人生なんていろいろあるんだし
子どもたちも「見た目に騙されちゃいけない」とか
「赤ちゃんがいなくともでかい腹もある」とか
勉強になるんじゃないでしょうか? ……ダメ?

■コロラドさん

そういえば最近、めっきり写真の数が減ったなあと
反省しています。生まれてから3歳ぐらいまでは
とにかく撮りまくっていたんですけどねえ。
夫はカメラマンでありながら、あまり撮りたがらない。
料理人が家で料理しないのと同じなのかな?

■へらコブラさん

へえ、コリコリしているんですかあ? 知らなかった。
帝王切開だったもんで、生まれた瞬間は腹がパックリ、
血だらけ麻酔ビリビリで、へその緒を見る余裕も
ありませんでした。いいなあ、1度切ってみたいな。

■よっつあんさん

性教育、というと拒絶反応が出る人もいるようなんですが、
自分の身体のことをちゃんと知らないとダメなんですよねえ。
だから性病が増えたり、望まぬ妊娠をしたり……。
幼いころから「自分の身体を大切にする」ことを教える
必要を感じています。

■tsuyorinさん

うちもめったに出したり、ながめたりはしないですねえ。
あれってたまに見るからいいのかも(笑)。

投稿: poron | 2006.02.16 03:36

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 新宿でふたり酒 | トップページ | 取材ノウハウ »