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2006年8月の記事

いいんだよ

Dscn5175 税務署から更正通知書が届いた。「更正」という言葉=「いいんだよ」by夜回り先生をイメージするが、別に生き様を更正をしろってわけじゃなく、どうやら所得税の更正をしましたよ、というお知らせらしい。

 通知書には「この処分の理由」という、とてつもなく恐ろしい文言が書かれていて、なんだか死刑宣告されたような気分になってしまったのだが、その内容は「株式会社○○の源泉税44,000円を追加して更正します」というもの。会社の名前を見て、思い当たる節があった。

 サラリーマンなどと同様、私たちフリーランスのギャラは、源泉税(支払い金額が100万以下の場合は10%)が差し引かれている。源泉税はいわば「税金の預かり」みたいもので、ギャラを支払う会社は預かった源泉税を税務署に納付し、私たちは確定申告で「すでにこの分の源泉は支払い済みですよ」と申告する。年間の所得や経費を計算した結果、税金を払いすぎていれば還付されるし、足りなければ納付することとなる。

 ところが、処分理由に書かれていた会社は1度たりとて源泉徴収をしていなかった。ギャラの年間総額462,000円に対して一銭も……だ。初回振込時に源泉されていないことに気づいた私は、すぐさま取引先へ電話して「源泉が引かれていませんよ。そちらは源泉徴収する義務があるので、きちんと10%引いてください。じゃないと、確定申告のあと税務署から指導され、追徴課税されますよ」と説明した。でも先方は「経理と法務担当に確認しましたが、源泉の必要はないとのこと。確定申告時にそちらで処理してください」と答えた。

 いや、別にいいんですけどね。こちらで「源泉徴収されていない金額」を申告すれば済む話だから。でも〜、そちらは会社だし〜、絶対に後で面倒なことになるんだけどなあ……と思いつつも、どうにもならないのでそのままのギャラで受け取り、確定申告できちんと申告しておいた。

 たぶん、この件だろうと思ったが、念のため税務署に電話をしてみる。 電話口に出た税務署員に事情を伝えると「それはたぶん、あなたが出した確定申告書の計算ミスだと思いますよ」という。いや、そんなはずはないんですけど。だって確定申告書は国税庁の【確定申告書等作成コーナー】で作ったんだから。そもそも、この株式会社○○ってところは、一銭たりとて源泉徴収していなかったんだから、源泉徴収額が増えるわけがないでしょう。

 そう伝えると「お調べして担当官から電話させます」といい、電話を切った。しばらくして、なんだか元気いっぱいなオヤジから電話がかかってきた。

「あ、○○さーん? 武蔵野税務署の○○です。あのねえ、その件ねえ、上野の税務署から書類がまわってきたんですよ〜。その処分理由にかかれている株式会社○○がですね、本来徴収すべき源泉税を、ちゃんと徴収していなかったんでね、追徴課税になったんですよ〜。それでね、その株式会社○○から源泉税を受け取りましてね、その結果、あなたに還付すべき金額が44,000円、増えたってことなんですよ〜」

担当税務官は続けてこんなこともいった。

「もしかしたら、取引先から『ギャラの振込時に引いておくべきだった源泉税を引いていなかった。後からこちらで払ったから返してください』っていわれるかもしれませんよ。だってその会社はあなたに多く支払っちゃっているわけでしょ? え? 何もいってきていない? じゃ、いいんだよ。今さら請求できないと諦めたんじゃないの〜?」

 あわてて取引先にも電話してみたところ「以前、そちらから源泉引くように、さんざんいわれていたのに、必要がないと源泉徴収しなかったんですよねえ……。いいんです、うちのミスですから。そのまま受け取ってください」といわれた。

いいじゃない、いいんだよ……。人はね、正直に生きてるのがいいんだよ。誰かを傷つけてもないから大丈夫だよ。 昨日までのことはみんないいんだよ。まずは今日から、税務署と一緒に考えよう。還付金の追加っていうのも、いいもんだよ……。

 ……そんな夜回り先生の声が聞こえたような、聞こえないような。

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叱り屋稼業だったころ

 イマイチ調子の悪い夏を過ごしていた娘の調子も、いまや全開バリバリ。ようやくひと安心といったところだ。オネショをして踏み洗いをした布団(ウォッシャブルタイプ)は半日の天日干し&半日の乾燥機で見事復活。だがしかし、マットレスは復活ならず(やっぱりな)粗大ゴミの回収を待つばかりとなっている。

 ここ数日は、お盆休みということもあって手が空いていたので、作品用のサイトを試作していた。最近、新規の問い合わせがいくつかあって「とりあえず作品を見たい」「メールで見積もりを」なんていうケースがあり、必要に迫られて作った次第だ。いままでは「誰かからの紹介→顔合わせなしでいきなり仕事」、もしくは「仕事発注するから、まずは電話か直接合っての打ち合わせを」というパターンだったから、メールだけで細かい部分のやりとりまでするのは、ちょっと苦手。でも、そうもいっていられない時代になってしまったのだろうな。

 サイトは「ID for WebLife*」というソフトの体験版で作ったもの。基本的にFlashオンリーのサイトは嫌いなのだが、写真コピーの心配はないし、テンプレに写真とテキストをはめこめば完成というお手軽さ。とりあえず2週間の体験版お試しで試作し、まあいいんじゃないのと製品版を発注した。でもねえ……、うちの古いiMac DV SE(2000summer)だと重たいんだよねえ。PCのスペックや回線によっちゃ、ストレスのたまるサイトかもしれません。何かお気づきの点がありましたら、教えてください。

 さてさて、今朝お友だちの理恵姐さんのBlogを読んでふと思い出したことがある。実はわたし、OL時代は社内屈指の「叱り屋稼業」だった。

 私のいた部署は専務取締役から常務取締役までが顔を揃える「営業本部」だ。社長秘書室と同室、ということもあって、社内のどの部署とも違い、それはそれは聖域チック。重たいガラス張りのドアを開けるとフカフカの絨毯、重厚なインテリア、豪華な生け花が目に飛び込んでくる。入社以来、1度も足を踏み入れたことのない社員は数知れず。「開かずの間」と恐れられていた部署である。

 そんな「営業本部」で、水商売と見紛うような姿形で仕事にいそしみ、長い間「開かずの間のお局様」の地位を確保していた私であったが、なぜか転属されてくる女の後輩は「おっとりしすぎて仕事になりそうもない新入社員」か、「他の部署から放り出された問題児」ばかりだった。門限が6時という箱入り世間知らずの娘A子、気が強くて同僚とのケンカが絶えず、困り果てた担当取締役が放出したB子、美人で男受けはいいけれどイマイチ仕事に興味のないC子……。そんな面々ばかりが、私のもとに配属されてくるのだ。

「ちょっとお、どうしてうちには即戦力が来ないのよ!」

 人事課のお局様や仲のいい常務取締役にグチをこぼすと、きまって彼らは「だって、あなたのところにしばらく預けると、その後は売り手市場なんだもの」といった。そう、売り手市場。私のもとで働いていた子は、1〜2年経つとどこかの部署へ転属になる。どの部署の担当取締役からも「うちに来てほしい」と引く手あまた。あれほど「もういらない」と手放した取締役ですら「やっぱりあの子を戻してくれ」と懇願してくるのだという。いわば、私のところは「修業先みたいなもん」だそうだ。

 私がいつも気を配っていたことは「身内主義に徹すること」だけ。開かずの間と呼ばれるほど、外からは見えない場所であったからできたことも多い。「他部署ではその子の悪口をいわない」「悪いことをしたら徹底的に叱る」「うまくできたら過剰なまでにほめちぎる」のである。

 どんなに問題児だとしても、かならずどこかにいいところはある。世間知らずでおっとりしている子なら、時間をかけて調べたり、ていねいに作る資料の仕事を与える。気が強い子には競争心をあおり、スピードと成果がすぐに見えるような仕事を担当させる。ちやほやされることが仕事みたいなものだった子には、容姿ではなく実力が問われる仕事をさせる。やる気がなかったり、手抜きをしたら、泣きだすまで叱り、きちんとがんばれば大騒ぎでほめる。それだけ。たったそれだけで、ほとんどの子は自分の得意分野と価値を知り、みるみるうちに社内でも有名な「デキル女」になっていく。

 それから、自分の部下になったら絶対に外では悪口をいわない。転属直後は元の上司や同僚が「うちの○○がそっちに配属されたけど、あの子はひどいもんだよ」「いやあ、大変だよねえ。こっちは助かったけど」などといってくる。たいてい相手は「そうなんですよねえ。ホント使えなくて困っちゃうんですよ」という答えを期待しているが、そんなときは必ず「すごくいい子ですよ。ハキハキしているし、計算は速いし、整理整頓も得意。うちに来てもらって本当に助かっています。手放してもったいなかったかもしれませんね」と答える。

 私が話す評価はまわりまわって、いずれ本人の耳に入る。軋轢のあった元部署の上司や同僚に対しても顔が立つし、ましてほめられればうれしいに決まっている。そうしたことを繰り返すうち、どこの部署からも欲しがられるOLに育っていくのである。
 
 ようやく即戦力になったと思ったころに、他部署に引き抜かれるのは本当にくやしいけれど、嫁に出すと思えばうれしいことこの上ない。叱り屋稼業の私は、いまは後輩ではなく、夫と娘を叱っている。いい人間に育ってくれればいいのだけれど、こいつらは一筋縄ではいかなくて……。

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早朝の大仕事

 いろいろとあって起きていたのだが、寝ていた娘が「ママ〜、モニョモニョ……」と何かいっている。寝言か? と思ったところ「ママ〜、オネショしちゃった……」とのこと。わ〜、オムツが取れて以来、初のオネショだ!

「あ、そう。じゃ、シャワーしようね」

 つとめて冷静に、おだやかに。でも、心の中じゃあ「うわ〜、布団どころかマットレスまで染みているよ!」と動揺しまくり。そんなわけで、娘を来客用の布団に寝かせ、ただいま洗濯機でシーツとカバーを、風呂場で布団の洗濯中(パンツ一丁)。ちょっと血迷ってマットレスまで踏み洗いをしております、ハイ……。

ふつうは洗わないよね、マットレス……。
きっともうダメになっちゃうよね、マットレス……。
ダメだったら捨てりゃいいよね、マットレス……。
古かったから買い替えたかったんだよね、マットレス……。
この際、洗ってみてもいいよね、マットレス……。

でも……。外に干そうとしたら、雨なんですけど……。

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ガチンコ対決

Dscn4303 Dscn4298

 先日、起きたプールの事故。大事に大事に育ててきた娘をあんな形で失うなんて、本当にやるせない思いだろう。子を持つ身としては、しばらくプールはやめておきたいところだったが、ウイルス性胃腸炎で7月中はほとんど遊べなかった娘にねだられ、地元のプールへ出かける。 調布市、府中市、小金井市で運営している二枚橋衛生組合(ゴミ焼却場)のプール。昨年もちょっとblogでネタにしたが、ココはいまどき大人30円で2時間楽しめる激安プールだ。

 消毒槽で腰までつかり、冷水シャワー浴び、さてプールに……と思ったら、監視員のニイちゃんが仁王立ちになり、「シャワーはアタマからかぶってください」と行く手を阻む。ああ、ごめんなさい。すいません。監視員のニイちゃんは次から次と入ってくる客にニラミをきかせ「腰までちゃんとつかって〜!」「アタマからかぶって〜!」「走らな〜い!」「ふざけな〜い!」と注意している。やっぱりあの事故の影響は大きく、いつも以上にうるさい。でもまあ、このぐらいうるさく言わないとダメなんだよ。ニイちゃん、がんばれ! プールの安全はキミ次第だ!

 監視員のニイちゃんのヤル気満々ぶりに触発された私は、彼の前に仁王立ちになってみた。水着姿のふたりが仁王立ちで向かい合う。なんか、ガチンコ対決みたいじゃん。先攻は私。

「排水口……どこ」

 思わぬ攻撃にちょっと面食らう監視員。焼けた素肌が光っている。

「え……、あの……。あそこの、ちょうど監視員が座っているイスの、あたりです」
「イスのあたりって……どこ」
「あの、あの……。あのイスの、ちょうど真下のあたりにあります」
「ああ〜? 真下?」
「ま……、真下っていうか、イスの真下はプールサイドですけど、イスのすぐ下のプールの中にあって……」


 私は攻撃の手をゆるめない。なぜなら、予測できない事態にどう対処できるかが、監視員の手腕だと信じているからだ。

「プールの中……?」
「ええ、ええ。プールの中に」
「壁? 床?」
「えっと、床に……」
「ふさいでいるのは?」
「えっと、鉄板。穴のあいた鉄板です」
「取れないの?」
「取れないっていうか、はめてあって……」
「取れないの?」
「ボルトでとめてあって、はめてあって……」
「とめて……いる?」
「四隅をとめてあって、簡単にははずせないような感じで」
「ふーん。はずれない?」
「ええ、はずれないです」
「ああ、そう。吸い込みの力は?」
「……」
「吸い込み!」
「え、えっと強くは吸い込んでいないので」
「どのぐらい」
「触っても吸い込まれた〜って感じはないぐらいで……」
「あ、そう。大丈夫ね」
「大丈夫です」

 私は攻撃の手をゆるめない。なぜなら、予測できない事態にどう対処できるかが、監視員の手腕だと信じているからだ。

「点検したの?」
「え……?」
「点検はいつしたの?」
「今日もしました! 毎日しています!」
「ホント?」
「ホントです」
「大丈夫なのね」
「大丈夫です」
「何かあったら……」
「え?」
「許しませんよ」
「あ、はい!」

 これで大丈夫。あとは親の私がちゃんとつきっきりでいれば事故の確率はグッと低くなる。プールの安全のためにも、ときどき出かけて監視員とのガチンコ対決をしておこう。

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