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2007年4月の記事

犯罪

 その日、娘には「今日は学童はお休みにしたから、給食を食べたら帰っておいで」といってあった。昼過ぎ、そろそろ帰宅するころかなと時計を気にしながら、仕事をしていたところ、外から子どもの声が聞こえる。女の子の甲高い声……。集団下校をしてきた娘が、マンションの前で友だちと「じゃあね、バイバーイ」などと言い合っているのだと思っていた。……そして、1分後。けたたましいチャイムの音とともに、娘の叫び声。

「ママ! 開けて! 早く!」

トイレでも行きたいのかと思いつつ、あわててドアの鍵を開ける。血相を変えて飛び込んできた娘の言葉は、まったく想像をしていないものだった。

「そこに変なおじさんがいた!」

 どこに? どんなおじさん?何が変だったの? 矢継ぎ早に質問する私に、娘はしどろもどろで答える。

「すぐそこに変なおじさんがいて、こんにちはっていわれたから、こんにちはっていったの」
「マンションの人じゃない。見たことがない人。お客さんだと思った」
「いま、帰り?って聞かれて、そうですって答えたの」
「そうしたら、何かついているよって来て、スカートをめくってお尻を触ったの」
「辞めてください!って大きな声を出して、手をパチンとやって……」
「いいから、いいから。こっちにおいで。何かついているよっていうの」
「怖くなったから走って逃げて来た」

 ここまで聞いた私は、娘に「家にいて! 鍵をかけて!」と叫び、すぐさま玄関を飛び出した。娘がいう場所には、誰もいない。マンションの敷地と、それぞれの階段、道路の果てまで見たけれど、誰もいない。すぐに家へ戻り、学校へ連絡した。

応対した副校長先生は「とにかくすぐ、警察へ電話してください。パトカーがたくさん来ます。娘さんはショックだろうから、警察にはお母さんからお話をしてください」という。指示に従い、すぐに110番通報。電話に出た警察官は、事細かに事情を聞き「娘さんと話せますか?」といった。

電話をしている最中、抱きしめていた娘は思った以上に落ち着いていた。「おまわりさんが話したいっていうんだけど、どうする?」と聞くと「いいよ。お話する」と答えた。

やや戸惑いながらも娘は、警察官の質問にしっかりと答えていた。犯人の人着(人相・着衣)、逃げた方向、自転車か自動車か歩きか、腕をつかまれたりはしなかったか……。

「そろそろ、警察官が到着するころです。電話を切ってお待ちください」

そういわれて、電話を切ったとたん、玄関のチャイムが鳴った。てっきり警察官だと思いながら、ドアを開けると娘の担任の先生が立っていた。肩をはずませ、息を切らせている。娘の担任はまだ20代の、若くて元気な男の先生だ。学校からあわてて走ってきてくれたらしく、先生の顔を見て娘もホッとしているのがよくわかる。

「大丈夫ですか!」

 いま、警察へ通報したところです……と答えてすぐ、派出所から来たらしい警察官が玄関へ現れた。そして、間もなくパトカーが続々と到着。副校長先生も駆けつけてくれた。

「大きな声を出して逃げたんだって? えらかったね」
「怖かったね。落ち着いて逃げることができたんだね。えらかったよ」

担任の先生も副校長先生も、とにかく娘をほめちぎった。大げさなほどにほめてほめて、親としては少し照れくさいほど。でも、こうした先生方の対応が、のちに娘の心に大きく影響を与える。

生活安全課の刑事さんたちが、何台もの覆面パトカーで駆けつけた。車内で保護者立ち会いのもと、事情聴取を行なう。別々の刑事さんが、入れ替わり立ち代わりパトカーに乗り込んできて、何度も同じことを聞く。

「その人の特徴は?」「どっちに逃げた?」「他に何かされた?」「どこにいたの?」「どんな服を着ていた?」「身長は?」「年齢はどのぐらい?」「メガネはかけていた?」「どっちに逃げたかわかんないかなあ?」

 私自身、痴漢を現行犯逮捕をし、事情聴取を受けたことがあるので、こういうもんだとはわかっているが、あまりに同じことばかりを聞くので、イライラがつのる。

「それはさっきから何度も答えています」
「だから! 娘が逃げてきたんだから、その後のことはわかりませんって答えているでしょう?」
「通報時に電話でも伝えています」

 娘の訴えが間違いでないか、虚言ではないか、記憶違いではないのかを確認する必要があるのはわかるが、嫌な記憶を掘り返されるのは、気持ちのいいものではない。性犯罪にあった成人女性が警察へ行くのをためらう、ということを耳にするが、それも当たり前だと感じる。我慢の限界(娘ではなく、私の)が近づきつつあるころ、刑事さんのひとりが私だけを車外に連れ出し、小声でこう耳打ちした。

「お尻を触られたといっていますが、おかあさん。いちおう、念のため、ご自宅に1度戻り、娘さんの体をチェックしてください」

 予想外のことに愕然とする。そうか、確かにそうだ。娘ぐらいの年齢では、まだ何をされたのかもわからずにいることも多い。まさか……!

 あわてて娘を連れ帰り、女性の刑事さんとともにスカートや下着、体のチェックをする。娘は「お尻をペロッと触られただけだよ〜」と笑っている。たまたま、スボンとスカートが一体化した、いわゆる「パンツインスカート」というものを履いていたため、下着を触られたり、直接体を触られたわけではなかった。それでも、刑事さんに耳打ちされるまで、そんなことを考えもしていなかった自分にあきれかえる。

どうやら、犯人は集団下校の列の後ろから自転車でついていき、娘がみんなと別れてマンション敷地内に入るのを確認し、追いかけてきたらしい。そして、自転車を止め、さも来訪者のような顔をして声をかけてきたのだ。

入学直前、我が家では何度も子どもを狙った犯罪について、親子で話し合っていた。知らない人に声をかけられても、付いて行かないこと。話しかけられても、できるだけ離れていること。嫌なことをされたらすぐに大きな声を出すこと。変だと思ったらすぐに逃げること。たとえ、顔見知りでもパパのクルマ以外は乗っては行けないこと……。

こうした話をしていたこともあり、娘は逃げることができた。そして、先生方が真っ先にほめてくれたことで、事件当初は「怖かった」だけの気持ちが、すぐに「自分は大きな声を出せたのがえらかったんだ」と気持ちを切り替えられたことも幸いした。あれから数日……。娘は元気に学校へ行き、私と夫は交代でマンション前に立って登下校の見守りをしている。今度もし、犯人を見つけたらタダではすまさない。私たちの娘に怖い思いをさせたことを、一生後悔するほどの恐怖を味あわせてやろう。

追記・ほんの少し尻を触られた程度で、何を大騒ぎしているのかと思う方もいるかもしれない。確かに被害届を出すまでもない事件であろう。しかし、こうした犯罪はいずれエスカレートし、再犯を重ねるケースも見逃せない(日本では犯罪者の追跡調査をしておらず、正確な再犯率のデータは公表されていない)。

数年前ならいざしらず、現在は満員電車で「尻を触っただけ」でも、迷惑防止条例での検挙、もしくは強制わいせつの現行犯で逮捕される時代だ。特に子どもを狙った犯罪は年々、増えており、保護者の意識(この程度で大騒ぎをするなんてという、犯罪の見逃し)改革も必要と思われる。事実、事情聴取のときに話をした刑事さんは「このぐらいで通報するなんてと戸惑う人が多い。しかし、通報をする、パトカーが駆けつけるという行為だけでも、犯罪者にとっては嫌なもの。犯罪抑止のためにも、ささいなことでも通報してほしい」と話している。

参考リンク

子ども対象・暴力的性犯罪への再犯防止策について

子どもの安全 :警視庁


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ケツセレブ

 おととい、37度の微熱と悪寒、体中の痛みが始まったと思ったら、熱がグングン上がって38度に。1時間おきに腹がキリキリと痛み、トイレに駆け込むことの繰り返し。

 あー、疲れが出たのかいな。……と思っていたら、半日遅れで夫も発症。ふたりして38度台の熱と下痢に見舞われ、もうどうにもならない状態に。これはマズい! と慌てたものの時すでに遅し。娘も微熱が出始め、そのうち下痢の症状が出て来そうな様子だ。

 夜中も含め、1時間おきにトイレへ行っていると、2日目あたりから、ケツの穴が大変なことになってくる。何しろ、我が家のトイレットペーパーは12ロール298円のセール品。地球に優しいリサイクル物だから、紙質がいいとはいえない代物だ。そんなトイレットペーパーで1時間おきにケツを拭いてみ。サンドペーパーでこすっているような感覚が得られる。

 花粉症の人向け超高級ティッシュみたいに【下痢でお悩みの人用・超高級トイレットペーパー】はないのだろうか? ……と思ったらあったのね。

鼻セレブ・肌セレブシリーズ|ネピア

ネーミングが肌セレブじゃなくて「ケツセレブ」だったら即買なんだけど(笑)。

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秘境の奥地は加齢臭

 夫の枕カバーやパジャマを洗濯するたび、おやじ臭が気になっていたのだが、ネットニュースでこんな恐ろしい記事を見つけて愕然とした。

加齢臭:「おじさん」だけじゃない 子宮内にも原因物質−話題:MSN毎日インタラクティブ

浜松医科大などの研究チームは、子宮内に「おじさん臭」や「加齢臭」のもととして知られるノナナール(ノネナール)など2種類のにおい物質があることを、世界で初めて突き止めた。受精卵が着床する際、このにおいが「道しるべ」になっている可能性があるという。(以下略)

日頃、パジャマの襟元から漂う匂いを嗅ぐたび「クサッ! オマエの首からはどんな液体がにじみ出ているんだ」と夫を責め立てていたのだが、今日からはそうもいかなくなる。だって、子宮内ですよ。秘境の奥地がそんな匂いを発しているなんてアンタ、もうどうしたらいいのやら……。

それにしても、精子も精子だ。何も加齢臭を道しるべにすることはなかろうに。

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娘へ

_dsc1533_5○ちゃん、小学校入学おめでとう。あなたがまだママのお腹で、小さな命を育み始めていた頃、ママは3カ月を過ぎるまで気づきませんでした。そういえばしばらく生理がないなぁ、変だなぁと産婦人科へ行ったら、「もう、3カ月よ。普通ならつわりが起きているころ。まったく気づかなかったの?」と先生に叱られました。 3カ月も気づかず、お酒を飲んだり、走ったり、徹夜をしていたのに、よく無事だったよね。がんばってくれて、ありがとう。あのときは本当にごめんね。

 あなたがお腹の中でぐんぐん大きくなっていく間、ママはとても幸せでした。ハッピーホルモンが出ているんじゃないかと思うほど、何をしても、何を見ても心がホカホカしていたことを覚えています。

ママはとても元気だったから、臨月まで自転車に乗ったり、取材に行っていました。取材先の人はママの姿を見てビックリ。そりゃそうだよね。はちきれそうなお腹を抱えた女の人が「ライターです。話を聞かせてください」って来るんだもの。みんな、どうしていいかわからず、本当に戸惑っていたよ。

あなたが産まれる前日も、パパと一緒に焼き鳥屋さんへ行き、ウーロン茶を飲みながら焼き鳥をモリモリ食べていました。カウンターで焼酎を飲んでいた作業着のおじさんがグラスを片手に、ママのお腹をしげしげとながめます。『おとうさん』と呼ばれるその人は、おかみさんのご主人。いつも仕事を終えて、この店に飲みに来てママやパパもとても良くしてもらっていました。『おとうさん』はママのお腹をそっと触り「……うん、もうすぐ産まれる。この子は元気な女の子だ。楽しみだなあ」といいました。

焼き鳥屋さんから帰宅したあと、ママは破水し、病院へ向かいます。明け方になっても陣痛が起きず、お医者さんは困惑顔。「自然分娩で大丈夫そうだけど、もう少し待つ?」と聞くお医者さんに、ママは「手術してください」とお願いしました。なんだか、そうすべきだと感じたのです。

 手術をして、あなたが産まれました。お医者さんは「逆子に加えて、片足だけ上げた変な体勢になっていた。あのままじゃ、出て来られなかったよ。自然分娩にこだわっていたら、細菌感染を起こして危ないところだった。母親の勘はすごいね」とビックリしていました。

あなたはこうして、私たちの家族となり、大きく成長しました。笑顔でお腹をさすっていた、焼き鳥屋の『おとうさん』はその後、ガンで亡くなりました。5歳になったあなたを連れ、ひさしぶりにお店を訪れたとき『おとうさん』の死をを聞きました。

あなたは小学校へ入学し、私たちの手から少し離れて、いろいろなことを経験します。ママやパパとケンカをしたり、反抗的な気持ちになることもあるでしょう。でも、あなたは望まれてこの世に生まれ、たくさんの人の愛情を受けて育ってきたのです。 あなたが産まれるのを心待ちにしていた人がたくさんいます。決して、そのことを忘れずにいてください。

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