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2010年1月の記事

ウットリさん

 厳しいこのご時世、働き盛りの人たちがリストラや派遣切りなどで、大変な状況だというのは見聞きしていたが、30代の弟も例外ではなく、昨年秋に検体回収の仕事をリストラされた。理由は会社の業績悪化だが、独身で実家住まいというプロフィールも、リストラ対象として都合がよかったのだろう。

 住む場所、食べるものは困らないにしても、当然のごとく弟はすぐに就活スタート。しかしながら、どこの会社も募集をかければ、応募が殺到し、面接はもとより、書類のエントリーすらできないような状況。年末が近づくにつれ、このまま無職で年を越すことになるのか……と弟だけでなく、母も父も私も絶望的な気持ちになっていた。

 ある日のことだ。「ダブルワークとして始めたけれど、うちの病院って時給はどうなんだろう」と疑問がわき、何となく新聞チラシのアルバイト情報を眺めていた私。たまたま掲載されていた障がい者福祉に関連する募集記事が目にとまった。

 ふーん、老人介護じゃないの?
 民間会社じゃなくて、公益法人なんだ。
 実績もあって、安定しているし。
 仕事は地味だけどやりがいがありそう。
 弟に意外と合うんじゃないの?

 勝ち気な姉とは違い、弟はとても優しくて、声を荒げたことは1度もない。温厚な性格でコツコツ型、でも競争力や欲はいまひとつ。営業マンに向いているタイプではないのに、営業職ばかり探している。そんなわけで、まったく福祉に興味のなかった弟を説得し、先方に問い合わせをさせてみた。結果……、すぐに面接→採用となり、無事に年を越すことができたのである。

 何よりも良かったのは、まったく志望していなかったにも関わらず、仕事を始めたとたん、楽しくて充実しているとのこと。資格取得など、一生の仕事として新たな目標を見つけたようだ。

 弟から採用されたという連絡をもらい、つい夫と娘に「ほらほら、やっぱり弟にぴったりの仕事だった! 私と違って優しいし、根気があるもの」とつぶやく私。

 それを聞き、娘がひとこと。

「そうだね。●●くん、ウットリさんだもんね!」

 ……?

 それをいうなら【ウットリさん】じゃなくて【おっとりさん】ですけど。
 
 

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