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2010年6月の記事

水の味

 月に1度、娘は思春期早発症治療のため、小児科へリュープリン注射を打ちに通っている。梅雨に入り、外は土砂降り。初老の、ちょっと無愛想な先生と娘との会話。

娘 「せんせ、昨日ね。浄水場に行ったんだよ」
先生「へえ。学校の授業で?」
娘 「そう」
先生「どんなところだった?」
娘 「水をきれいにしていたよ。微生物できれいにしたり、濾過したりするんだって」
先生「その水はどこから浄水場に来ているの?」
娘 「多摩川だったかな〜?」

先生「きれいになった水はどこに行くの?」
娘 「みんなの家や学校の水道に」
先生「ふうん、そうなんだ」
娘 「できたてのきれいな水、飲んできたんだ!」
先生「どんな味だった?」
娘 「甘かった!家の水と変わんないっていう子もいたけれど……」

先生「雨の味ってどんな味か知ってる?」
娘 「飲んだことない」
先生「飲んでみたら? 浄水場の水とは違うかもよ」
娘 「保育園のころ、口を開けて飲んでみようと思ったら、先生が汚いからダメって」
先生「降り始めはダメかもね(笑)」

 会話を聞いていた私、思わず割り込む。

私 「注射打ったら、帰りにやってみたら?」
娘 「ええ〜!」
先生「いいねいいね、今は土砂降りだし。ワハハ」
娘 「雨なんて飲んでも大丈夫?」
先生「……(ニヤニヤ)」
私 「お腹が痛くなったら、また先生のところに来ればいいよ」
娘 「そっか!」
先生「ワッハッハッ」

 小児科を出た娘はザーザーと降る土砂降りの中、傘をささずに歩き出す。もちろん、顔を天に向け、口を大きく開けて……。顔も髪も服もびっしょびしょ。

私 「どう? 味、わかった?」
娘 「こんなに降っているのに、口にはあんまり入らない!」

 歩きながら、ますます口を大きく開け、天を仰ぐ娘。道行く人が笑っている。せんせ、変なこといわないでくださいよ……。

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