冬の怪談
くも膜下出血で倒れた母は、10日以上たっても意識がはっきりせず、ときおり呼びかけにうなづいたり、手をにぎる程度の反応。脳へのダメージはしばらく経ってみないとわからないし、今はどうすることもできない。
病院へ行き、ベッドのかたわらで胃が痛むような時間を過ごす私に、しのびよる影が……。
「あの……、申し訳ありません。10月の請求書なんですが……」
手に紙を持った、看護師長さん。何だかとっても言いづらそうに話を始めた。
「3日分の請求です。自己負担額が……こちらなんですが」
総医療費が約430万、自己負担3割で130万円超!
不謹慎な話だが、SCU(脳卒中の集中治療室)で脳梗塞を起こしそうなほどビックリした。だって、3日分だもの!
命の値段というわけじゃないが、3日間で手術を3回やると430万もかかるんだあ。すげえな……と、請求書に見とれてしまった。請求書から目が離せなくなったのは、生まれて初めての経験だ。
たとえ自己負担額130万円を支払っても、限度額以上は高額療養費の払い戻しができることは知っているし、父の蓄えで支払えないわけではないが、還付されるのは4ヵ月後。それまでは毎月ごとの請求を支払い続ける必要がある。
すぐさま市役所にすっ飛んでいき、あれこれと事情を話し、限度額適用認定証の交付申請を行ない、病院の会計で手続きをおこない、請求金額の再計算をしてもらった。
これは平成19年にできた制度で、あらかじめ自己負担限度額の認定を受けておけば、それ以上の支払いをせずに済むというもの。入院が長引きそうなときや、今回のように緊急手術を行なったときなどは、請求金額がものすごいことになる場合があるので、早めに手続きしておくといい。絶対にいい。確実にオススメする。
母が倒れて血の気が引き、請求書で背筋が凍る……。まだまだ、気が抜けませんよ。
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