カテゴリー「酒ネタ」の記事

恐るべし酒パワー

 以前、出入りしていた女性誌の編集部が、次号で美容特集を計画していたときのこと。編集者から「poronさんっていっつも肌がモチモチだよねえ。化粧品とかお手入れとかどうしているの〜? 特集で使うから教えてよう」と聞かれたのだが、そのころの私は風呂上がりに安い化粧水をバシャバシャするだけ。「洗顔石けんは?」「美容液とかは?」と矢継ぎ早に質問する編集者に「別にこだわっている化粧品なんてないよ。洗顔はスーパーで買った○○だし、美容液なんて持っていない」と答え、あまりのつまらなさにガックリされた経験がある。

 それほど、手入れのいらない肌だったのに、子どもを産んだころから私の肌荒れは一気に加速。さすがに化粧水だけじゃまずいと、あれこれ試したもののたいした効果もなく、時だけが過ぎていった。

 先日、ただでさえ調子の悪い肌がものすごくひどい状態になっていた。頬のあちこちに吹き出物が出現し、乾燥した肌はまるで粉ふきいものよう……。美容液を塗ろうが、クリームを使おうが一向によくならず、一時は皮膚科の受診を考えたほどだ。いったい、プルプル肌だったあの頃と何が変わってしまったのだろう。年齢? 食事? それとも……。

 私がさんざん考えて、考え抜いて、出した結論は「酒」であった。大好きで毎晩のように飲んでいた日本酒は出産以来、摂取量が減り続けている。最近は年のせいか飲むときは焼酎か泡盛。そうか、酒だ、日本酒なんだ。窮地に陥った人間は恐ろしい。生活習慣を見直した結果、出てきた答えが「酒が足りねえ」なんだから……。

 この期に及んで酒を浴びるように飲むわけにもいかず、また母親としての醜態をさらすことなく、酒成分を摂取できるものは何か……? 私が手にとったのは「酒粕」であった。そう、酒の残り物、日本酒の搾りかす。子どものころ、田舎から送られてくる酒粕を使い、しょっちゅう甘酒を作っていた。母が鍋で煮た甘酒を冷蔵庫で冷やし、コップでごくごく飲むのが我が家流。そんなことをふと思い出し、酒粕を購入してお砂糖控えめの甘酒を作ってみたのだ。

 ……翌日。酒粕パワーすげえ! もう、ビックリ! あんなにカサカサだった肌は一晩でしっとりモチモチ。ファンデーションの乗りのいいことったら。ヒアルロン酸でもQ10でも実感できなかった即効性を、酒粕は難なく証明したのである。結論。私にとって日本酒は欠かせないものである。

※ちなみに酒粕にはビタミンやアミノ酸などさまざまな栄養素が豊富に含まれているので、美肌や健康(病後や夏バテなど)に効果があるが、甘酒はカロリーが高いので飲み過ぎに注意。料理などに使うのもおすすめ。

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新宿でふたり酒

DSCN4781 先日、付き合いの長い編集者から「ちょっと遅めの新年会でもしません?」との誘いを受け、いそいそと新宿へ出かけてきた。「和食系でゆっくり話ができるところ」との要望に合わせて、西口から徒歩1分の「料理とお酒 わらびや」に予約を入れる。

 欲望あふれる新宿で40前後の女がふたり、ゆっくりと酒を飲むのは意外と大変だ。照明暗め、料理見映え重視、味イマイチ、値段ぼったくりな、いわゆる大人の隠れ家的な店をセレクトすると、カウンターあたりに今ここでハメかねないような濃厚カップルに遭遇する危険性が高い。かといって、焼き鳥の煙ただよう店は落ち着きがないし、1軒目からバーじゃ腹が空く。情報誌の常連みたいなチェーン店も嫌だし、OL時代に通っていた日本酒専門店は渋すぎる。新宿でほどほどを探すのは本当に大変なのである。

 その点、わらびやは駅近、大箱、よくあるこじゃれた和風創作料理店でありながら、他店とは決定的に違うものを持っている。それはものすごいハゲ&白髪オヤジ率の高さ。先日、行ったときも見渡す限り、50〜60代のオヤジ2〜3人組ばかりだった。みなさんとってもお行儀がよくて、酔っぱらって大騒ぎする人はいない。しかもこの店、満席なんてことはほとんどなく、いつ行っても女ふたりで4人席にゆったりと座り、テーブルに山ほど料理を並べ、閉店までゆっくりと酒を飲むことができる。料理はコレ、というものはないけれど、どれも当たり外れはない。そんなわけで、編集者やライターと新宿で飲むときは、たいていここを1軒目にしている。

 今回、編集者が私を呼び出したのには訳があった。なんと8年も勤めた会社を辞めたという。「ちゃんと会って辞めたことを話したかったんですよ」という彼女に、思わず「おめでとう!」と叫んでしまった。だって、もう何年も前から辞めたがっていたし、ずっと勤めていたとしても、彼女の「やりたい仕事」に繋がるような、スキルアップが見込めない仕事だったから。生きるため、稼ぐため……という意味合いで仕事をしているのでなければ、やりたい仕事をしたほうがいい。これっぽっちも興味のわかない記事をいやいや編集するのであれば、辞めたほうが自分のためにも、読者のためにもなる。

 ふたりで焼酎をちびりちびりと飲みつつ、いままでのこと、これからのことをたっぷり話してきた。真正面のテーブル席に座るオヤジの、ハゲ頭をながめながら「人生まだまだ。これからさ」とつぶやく夜であった。

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酒とギターと心地よい風

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 ひそしぶりに東小金井の海風へ行き、サンマの刺身をつまみながら泡盛を飲んできた。大人3人でボトル1本半をあけたものの、酔いはイマイチ。そこで夫と娘を先に帰し、私とあっくんは海風のナナメ前にあるHanging tsaka Araw(ハンギン・チャカ・アラウ)というバーへ。初めて訪れる店だったが、以前から「メニューのほとんどが500円だし、雰囲気もなかなか」と耳にしていて、1度は行ってみたかったのだ。

 木をふんだんに使ったロッジ風の店内、開け放した窓からは心地よい風、落とした照明とテーブルキャンドル、気さくなマスター、豊富なドリンクメニュー。うーん、いいねえ。

 最初に頼んだカクテルを飲み干してすぐ(しかもチェイサーが出てくる前。3口で。がっつきすぎ)、ギターを抱えた男性がライブを始めた。どうやら私たちはたまたま、ライブの直前に入店したらしい。ミュージシャンはR&Bの秋山登志夫氏。しっとりとした歌声と、郷愁を誘うオリジナル曲がたまらなくいい。しかも、ギターを奏でる指先のセクシーなこと!

 思いがけず、歌を聴きながら酒を飲む、という贅沢を味わった私は、そりゃあもういい気分で飲みましたよ。サイドカー(ショートカクテル/約30度)に始まり、I.W.ハーパーゴールドメダルのシングル・ロック(バーボンウイスキー/40度)、レモンハートデメララ151プルーフのシングル・ロック(ラム/75.5度)、ビーフィーターのダブル・ロック(ジン/40度)、おすすめで注文した名称不明テキーラをシングル・ロックで2杯……。 

 ほどよく酔いがまわったあたりでライブも終了。コーフン覚めやらぬ状態で、秋山氏を見つめていると、気をきかせたマスターが私たちを紹介してくれた。思い切って「夫がカメラマンで作品として職人を撮影している。伝統工芸だけでない、現代の職人としてぜひ撮らせてほしい」と頼むと、秋山氏は「いいねえ! 僕は自分を職人だと思いながら曲作りをしている。OK! 来月のライブでお会いしましょう」と快諾してくれた。

 おいしいお酒にすてきな歌声……。なんていい夜なんだ。

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新橋酒呑み事情・完

 はじめての方は「新橋酒呑み事情」「新橋酒呑み事情・続」からお読みください。

 パチパチパチパチパチ……。

 グラスの底から小さな小さな音が聞こえる。誰かが話をしたら、あっという間にかき消されそうなほどの小さな音。

「南極の氷だよ」

 店主がそういうと、常連客はみな「うふふふ」「クスクス」と笑った。事情がわからずポカンとしていると、普段着で日焼けした男性が「実はね僕、氷屋なんですよ。今日たまたま南極の氷をもらったんで、これで酒を飲もうって持ってきたんです」という。どうやら、りえ姐との話に夢中になっている間に、みんなのグラスに氷のおすそわけがされていたらしい。これを機に常連客たちと打ち解け、私たちはそれはそれは気分よく飲み続けた。

「さて、そろそろ帰ろうか」

 りえ姐と私は、次の立ち呑み屋へ行くため席を立つ。「お会計を」の声に橋幸夫はぶっきらぼうにこういった。

「ななせんえん」

 え? 間違ってない? そう聞く私に彼はもう1度「ななせんえん」とだけいった。あり得ない。だって私たち、これだけ飲んで食べたんだから……。焼酎水割り8杯、マグロと酢蛸、温泉卵×2、マグロとオクラの山かけ×2、オクラのおひたし、谷中しょうが、こんにゃくの田楽×2、コーンバター×2、焼そば。これで「ななせんえん」ってアリ? 新橋バンザーイ!

 あまりに楽しくっておいしくって安いんで、帰りの終電はこのオヤジみたいになっていました。もちろん、駅を乗り過ごし。新橋、サイコー!

(おわり)

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新橋酒呑み事情・続

 はじめての方は「新橋酒呑み事情」からお読みください。

 くたびれた橋幸夫はカウンターのなかから「なんだか、かったりいな」とつぶやき、ビールをあおった。まったくもってやる気のなさそうな店なのにマグロはうまい。油断ならねえ……。私とりえ姐は彼がかったるそうに出し続ける料理を食べながら、焼酎の水割りをガフガブ飲んだ。

 30代後半と40代前半の女ライターがふたりで飲んでいれば、話題はもっぱら業界ウラ事情。ありえないほどマージンを抜いているフリー編集者、風前の灯となった編集プロダクション、自転車操業で未払いを続ける有名カメラマンなどなど話はつきない。そうしているうち、いつの間にか10席の店内は常連客で埋まり、店主はあいかわらずかったるそうに接客を続けていた。

 見なれぬ私たちを横目で見ながら、常連客同士で会話がはずむ。なんだか私とりえ姐だけ、浮いてねえか? そんなことを考えたとき突然、橋幸夫が私のグラスに大きな氷を放り込んだ。まだ、飲んでいる最中じゃんか。いささかムッとした私を見て、彼はまたニタリと笑う。

「グラスに耳、当ててみな」

 な、なに? グラス? 耳? 8人の常連客と店主は思いがけない言葉に戸惑う私を、笑顔で見つめている。サラリーマンのおじさん、どこかの管理職をしてそうなおばさん、普段着で日焼けした男性……。みんな微笑みながら静かに私の様子を伺っているのだ。不思議そうなりえ姐の横で、私はグラスにそっと耳に当てた。

(つづく)

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新橋酒呑み事情

DSCN4200 酒飲みといえばココ、というわけでドブネズミスーツのオヤジたちが集う、新橋駅前ビルに出かけてきた。仲のいいライターりえ姐が以前から誘っていた「背負っている人以外はお断り」な店だ。(過去記事参照

 新橋駅前ビルはその名の通り、新橋駅直結の駅ビル。ビルの地下だというのに、新宿のしょんべん横丁やゴールデン街みたいな1坪店が軒をつらねる。立ち呑み屋、居酒屋、小料理屋などがギッシリで、もう入り口の段階で飲んべえのココロ踊る……といった感じ。しかも、27度もの熱帯夜だというのに、ここらの一画はクーラー全開、冷え冷え。チーム・マイナス6%とかクールビズなんてクソくらえってな雰囲気。いいねえ、いいねえ。

 1軒目は腹ごしらえも兼ねて、小料理屋に入る。りえ姐が以前、行ったことのある店だ。店は1坪ほどの広さでカウンターの10席のみ。くたびれた橋幸夫みたいな店主がビールを飲みながら、ひとりのサラリーマン客をもてなしていたところだった。

「いいですか〜?」

 りえ姐がのれんをくぐる。席に座ったとたん、店主は私を指差して「あ、あんた初めてだね」といいだした。さすが常連客ばかりの小料理屋。一見客をすぐに見破るとは……。「ええ、初めて。顔に書いてあった?」と軽くかわすも、立ち上がりは相手ペース。うう、なんだかくやしい。

 つまみをお任せで見繕ってもらい、最初に出てきた「マグロと酢ダコ」に箸をつける。……むう、おぬしやるな。1坪店だからとあなどっていた。刺身にはうるさい私が驚くほど、イキのいい中トロ。思わず「おいしい」と声に出してしまう。店主はニタリと笑い「マグロにはうるせえんだ」とつぶやいた。またもや、相手ペース。うう、くやしい。

(このネタつづく)

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備えあれば憂いなし。

 先日、ひさしぶりに酒を飲んできた。参加者のうちの男2名が飲み会の直前までこんなメールのやりとりをしていた、という報告を受け、複雑な気分に。(以下、ふたりに転載許可をもらい、一部伏字で公開)

Oです。
元気?
しばらくブログが更新していないので
ちょっと心配しています。
飲みつかれて寝てるのならいいけど。
何か有ったら呼んでおくれ。

ちょいと留守にしていたもので更新できませんでした。
今週末の飲み会を楽しみにしています。
覚悟して来るように!

> 覚悟して来るように!

・・・覚悟して??? う〜む、
(1)新しいパンツをはいていく?
(2)行く前に液キャベを飲んでいく?
(3)お金を仰山持って行く?
(4)赤チンを持って行く?
(5)担架を持っていく?

だんな、どれでしょうかね?

それはね、準備ですよ。覚悟とは、

(1)新しいパンツをはいていき、裸踊りがいつでもできる覚悟。
(2)行く前に液キャベを飲んでいき、出てきたものを全てたいらげる覚悟。
(3)お金を仰山持って行き、いかなる請求金額にも動じない覚悟。
(4)赤チンを持って行き、多少の怪我には即治療する覚悟。
(5)担架を持っていき、飲んだくれて倒れたporonさんを運ぶ覚悟。

以上です。覚悟できた?

おいおい、すべてですかい・・・!!

私はいつもこの覚悟でporonさんと飲んでます(キッパリ)。ホントか?

 ……私と酒を飲むのに、それだけの準備と覚悟が必要だったのか。命がけだな。

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貞子と私

 先日、男友だちのあっくんと居酒屋で飲んでいたときのこと。小上がりで夕飯がわりのタコライスといつもの泡盛でまったりとしていたところ、バタッというタダならぬ音が耳に入った。音のするほうに視線を向けると、ちょうど私たちの目の前で女が座り込んでいる。隣席にいた「男ふたり、女ひとり」グループの女であった。どうやら、トイレに行こうと小上がりから降りたものの、すっ転んでしまったらしい。思わず、あっくんが「大丈夫?」と声をかけるが、反応はない。腰まで伸ばした長い髪をダラリと垂らしたまま、うつむいているので、まるでリングの貞子。そのままはい上がってきそうな雰囲気である。
 
 連れの異常事態に気づいた男があわてて駆け寄り、貞子の脇を抱える。ようやく立ち上がった彼女の足元を見ると、履いているのは細くて高いかかとのハイヒールだった。

「その靴じゃ、ケガするよ。お店のサンダルがあるから、それを履いたら?」

 あっくんがサンダルを指差し、親切にいう。貞子を抱きかかえた男も「そうだよ、これを履いたほうがいいよ」とサンダルを勧める。なのに、彼女は「いらない! いらないってば!」と激しく拒否し、フラフラとトイレに向かっていった。

「あの子、グデグデだねえ」と笑う私に、あっくんは「アンタもずいぶん似たようなことをやっているよね」と答える。ふん、余計なお世話。私はパンプスなんか履かないし、いつもオヤジサンダルでトイレに行っているよ。一緒にすんな。

 貞子と同類にされて、ふて腐れていた私だったが、その翌々日、酒を飲みにいった帰り、駅の階段ですっ転び、ねんざしてしまった。しかも、慎重に階段を降りた挙げ句、最後の1段で転ぶというバカっぷり。もう、そこは階段ではなく、小金井の大地だというのに……。

 今日から旅行に行くことになっているのだが、いま私の足首はおそろしいほどに腫れ上がっている。

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奈落の底で快楽を知る、ということ

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DSCN3002 先日、吉祥寺いせや公園店で「笑顔のスタッフ」「家族連れでにぎわうホノボノ感」を目の当たりにした私はいささか不完全燃焼であった。いせやは「殺伐としているべきだ」というイメージ、そしてそれがじっとりと染み込んでいるこの身体。あの、本店のどん底空気がどうにもなつかしく、花見のついでに本店へ乗り込んできた。

さすが本店。グダグタ感てんこもり。

 昼の1時だというのに、1階のカウンター席(立ち飲みゾーンではない)はすでに満席。焼き鳥の煙にいぶされたような、コ汚いおやじ連中が焼酎をすすっていた。これだよ、これ。人生劇場最終回、みたいなこの感覚。いい。いいねえ……。

 記憶喪失のふりをして締切りを放り出してきた私、わざわざこのために保育園を早退してきた娘、こんなとこにいないで稼いでこいよの夫、ウツで休職しているのに元気いっぱいの男友だち……。真っ昼間からいせやを訪れているあたり「目クソ鼻クソ」であるが。

 しかしながら、今回は家族連れだったために立ち飲みカウンターは断念。2階の座敷でまったりと飲みつつ、おのれのダメさ加減を反省してきた。座敷に入るのは初めてだったが殺伐とした1階と違い、おばちゃんも兄ちゃんも公園店並みの接客ぶり。注文もスムーズで愛想もなかなかである。居心地のいい時間を過ごせたが、なんだかやっぱりモノ足りない。一度、奈落の底で快楽を見つけると、多少の刺激では満足できなくなる、そんなことを知った1日であった。

 

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吉祥寺いせや

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 先日、義弟のお嫁さんと姪っ子が訪ねてきたので、みんなで井の頭公園へ。まだ桜は1〜2分咲きで、花見としてはイマイチなので、公園口のいせやに入り、昼間から宴会を始めた。姪っ子はジャンボシュウマイを5つも食べた挙げ句、4歳の娘に「お腹がシュウマイだらけで爆発するよ」と突っ込まれ、6つ目を食べるのを断念していた。小学2年生、まだまだかわいいもんだ。

 実は私にとって、吉祥寺のいせやは思い出深い店だ。今回、行った公園店ではなく、本店のほう。OLのころ、女友だちと本店のカウンターで毎晩、立ち飲みをしていたのである。ファミリーやカップルが多い公園店と違い、グダグダのおやじが真っ昼間から酒を飲んでいる本店。サービス精神まるでなし、の店員たちは「すみませーん」なんて声をかけても見向きもしない。カウンターに立ち、焼き場の兄ちゃんがチラとこちらを向いた瞬間、

「熱燗1本タンハツ2本ずつ塩」

 息つぎは禁物。やるか、やられるかの殺伐とした雰囲気。迅速かつ的確に注文しなければ、次のチャンスまで「カウンターで立ちつくす人」の烙印を押されるのである。次のチャンスは「追加」でいきたい。できれば、ジャンボシュウマイとモツ煮。カウンターで2種類以上のオーダーは避けたいところだ。

 ……と、だいぶ誇張した部分はあるが、最初のころはカウンターのすみっこで様子見オーダーをしていたのは事実。常連オヤジから「おかえり」と立ち位置を譲ってもらうようになるまで、それは試練の道であった。店員の兄ちゃんやおじさんとは閉店後に飲みに行くほど仲良くなったが、酔っぱらうたびに「オレの焼き鳥はニッポンイチだ!」と叫ぶのは勘弁。今度はひさしぶりに本店に行ってみよう。

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お花見は危険な香り

DSCN0551 しばらく酒はうんざりだというのに、仕事で泣く泣く「花見酒」のコラムを執筆中。さくらラベルの日本酒やら焼酎の写真を見ながら「のどごしさわやか。冷やでどうぞ」などと書いているんだから、ライターというものは信用ならない。しかし、もっとも罪深き存在は出版社、編集プロダクション、広告制作会社である。頼むから「予算がないので、資料と電話取材でよろしく」という依頼は辞めてほしい。ホントにお願い。

 今年もすでに花見の予定を入れている私であるが、以前から花見で数々の失態をしでかしている。そのため、いつもこの時期になると「今年こそ、飲んだくれの花見ではなく、風流に花を愛でよう」と誓うのだが、所詮飲んべえのたわごと。まともな花見になったためしがない。

 OL時代は本社をあげての花見を、いつも私がセッティングしていた。宴会部長、ここにあり。花見当日は会社の車輌室をフル稼動させ、黒塗りのセンチュリーやクラウンでビールを運んだものだ。もちろん、白手袋の運転手付き。そして、続々と公園に集まってきた男性社員や常務や取締役から金をふんだくると、セッティングは終了。あとは自分も飲んだくれるのみ、である。

 気づいたら、4帖半もあるビニールシートを引きずって、ひとり新宿新都心をさまよっていたこともあった。ある年の花見では酩酊の挙げ句、花園神社で迷子になった。みんなと別れたあと、やはり花見でしこたま飲んだらしい、見知らぬオヤジとタクシーに乗って帰宅したこともある。我ながら、すばらしすぎる「花見経歴の持ち主」だと思う。さて、今年の花見はどんな危険が待ち受けているのだろうか。

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神様、反省しています

 バッグを落として以来、私は確かにへこんでいた。カードや携帯を止めたり、交番に行ったり、警視庁の落とし物問い合わせシステムに登録したり、合鍵を作ったり、タクシー会社に電話したり……。ただでさえ、仕事をため込んでいるところに、余計な雑用が増え、すっかり落ち込んでいた。加えて、猛烈な吐き気でトイレに駆け込むも、間に合わずに汚したカバーの洗濯、すっかり荒れ荒れになった胃が回復しないうちに家族の食事を作らなきゃいけないこと、週明けに襲ってくるであろう山ほどの原稿催促メールを考えるだけで、うんざりしていた。

 すべて自分が悪い。そう思いながら過ごした週末……。神様はそんな私の健気な姿を見て「もう、許してやるか」と思ってくれたらしい。そう! バッグが出てきたのだ! しかも、丸ごと!

 明け方に乗ったのは個人タクシーだった。あっくんは先に私を下ろし、家の前まで送ると、待たせていたタクシーに乗り、自分の家まで帰った。あっくんもすでに酩酊状態。足もとに黒いバックがすっ転がっていることには気づかなかったらしい。あっくんが持っていた領収書(あの状態でよく領収書をもらっていたと感心するが)でタクシーを割り出し、ようやく連絡が取れたのがついさきほど。タクシーのおじちゃんはなんと、隣町の、しかも私の実家のすぐ近所に住んでいた。ビール持参で引き取りに伺ったのはいう間でもない。

 おじちゃんいわく「土曜の朝方はアンタたちが最後だったんだ。それで、日曜日に定期検査に出したら、シートの下に何やら転がっていて……。たまたま土日休みだったからいいけど、あの後に他の客が乗っていたら持っていかれたよ」という。

 神様、しばらくはほどほどにします。それから「酒が飲みてえ」でコメントを下さった○子さん。ご主人に「くれぐれも飲み過ぎ注意」とお伝え下さい。

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宴会そしてバッグ紛失

 友人あっくんと電話をしていて、猛烈に酒が飲みたくなった。とはいえ、財布の中身に乏しく、飲みに行くほどの余裕はない。そこで「たまにはうちでどうよ」と誘い、あっくんが持参した泡盛750mlと、我が家にあった泡盛1升で宴会を始めた。

 つまみは前日の残りもの「肉じゃが」と、冷蔵庫をゴソゴソして、あわてて作った「唐揚げ」「ピータン豆腐」「マカロニサラダ」「きんぴらごぼう」などなど。それと、炊きたてのごはんで、おにぎりをたくさん作って並べておいた。

 宴会が始まったのが夜8時半ごろ。夫と娘は食事と入浴をすませて、夜11時ごろにて寝てしまった。リビングであっくんとふたり「まだまだこれから!」といいながら、酒を飲み続ける。途中、大量のポップコーンを作って、それをワシワシ食べながら「悪徳不動産屋の独り言」談義に花が咲く。

「悪徳さんがporonさんのことを『こういう親友が一人いたら、人生の幅が広がること請け合いです(*^^)v』って書いていたよねえ」
「うん、うれしいねえ。でさ、そういう人を親友に持つアンタはどう思っているわけ?」
「確かに人生の幅は広がるかもしれないけれど、いろいろと苦労もあるわけで」
「は? 苦労ってなんだ」
「志だけではどうにもならない、リスキーな面というか……」
「リスキーって……」
「悪徳さんとは、poronさんの親友でいることの苦労を共有したいなあ」

 そんなことを話しながら、泡盛を飲んでいたら朝の4時。すでに酔っぱらっている私たちは「これからカラオケに行こう」と盛り上がり、タクシーでカラオケ店へ。そこでまた酒を飲み続けたのがいけなかった。なんと財布や携帯、玄関のカギを入れていたバッグまるごとなくしてしまったのである。カラオケ店に問い合わせたが、見つからず。あとはタクシーに忘れてきたことを祈るだけだ。私たちを乗せたタクシーの所属している団体は、あいにくの土日休みで月曜にならないと連絡がつかず。最悪だ。しばらく酒はひかえよう。


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酒が飲みてえ

DSCN2912 3つの仕事の合間に確定申告をやり、取引先から頼まれたライター探しと、市の委員会の資料づくりをしている。そんなわけで更新が停滞中。メールもたまっているが返事が書けず。おまたせしている方、すいません。

 クソ忙しくなると無性に酒が飲みたくなるのだが、そんなヒマがあるわけもなく、仕方ないのでドラマ『溺れる人』を見る。キッチンで料理酒をラッパ飲みしたり、ビールの自販機横を通りかかっただけで身体がワナワナ。見ているだけで、二日酔いの感覚を思い出すようなドラマであった。

 飲みに行くとワイン、日本酒、焼酎、泡盛をコップ単位ではなく、ボトル単位で飲んでいる私だが、実は自宅では飲めないタチなんである。友だちとエロ談義をしたり、おいしい刺身を食べたり、酔っぱらいにからまれたりというシチュエーションがあってこそ、飲む気もおこる。家でテレビを見ながら缶ビールなんて、絶対にムリ。あり得ない。

 ああ、飲みたい。一段落したらオフ会でもやるか。題して「はっちゃけオフ」。理性だの道理だのは一切なし。もちろん「そろそろ、電車が……」とか「このへんでぼちぼち……」は禁句だ。ぜひ、伝説を作ろうではないか。酔っ払いの王道を目指そうではないか。

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アップルちゃん

DSCN0001 広島から夫の両親が泊まりに来るというので、部屋中をひっかきまわしていたら、OL時代の写真が続々と出てきた。夫がそれに気づき、ジーッと見てひとこと。

「肌がぴちぴちぷるぷるだ……」

 余計なお世話、である。それにしても、どの写真を見ても「水商売」にしか見えない。当時は確かに間違えられることが多かった。

 上司とふたりでクラブへ行き、いい気分で飲んでいると隣から「オネエサン、水割り頼める?」と酔っぱらいオヤジ。「指名料がかかります」と切り返す私を見て「ねえ、夕方6時からこの子を預からせてくれないかしら?」と、上司にお願いするママ。そんなことがしょっちゅうだった。

 ある日のこと。女の先輩たちともんじゃ焼きを食べに行く約束をした。電話当番で会社を出るのが遅れた私は、ひとり歌舞伎町の店へ向かう。雑居ビルに到着し、エレベーターを待っていると、降りてきたエレベーターから白衣を着たおじさんが出てきた。手には満杯になったゴミ袋を下げている。このビルのどこかにある飲食店のスタッフだろう。

「あれ、アップルちゃん!」

 私の顔を見て、話しかけてくる白衣のおじさん。アップルちゃんってなんだよ。

「は?」
「アップルちゃん! アップルちゃんでしょう?」
「え? いえ、あの」
「アップルちゃんだよね」

 戸惑う私をよそに、おじさんは「アップルちゃん」を連呼する。

「あのさぁ、ゴミ出しをちゃんとしてよ」
「は?」
「ゴミだよ、ゴミ。ママにいっといて」
「あの……」
「アップルちゃん、頼むよ!」

 おじさんはそれだけを言うと、さっさとビルの外へ出ていってしまった。もはや、誤解を解くすべはない。アップルちゃん確定。どうにも納得できず、もんもんとしながらエレベーターに乗る。

「あ……」

 私は気づいた。雑居ビルのなかに「スナック アップル」があることを。そして、私はそこの女の子だと間違えられたことを。すでにもんじゃ焼き屋に集まっていた先輩たちは、この話を大笑いして聞いた。翌日から私は会社で「アップルちゃん」と呼ばれることになる。

「はい、営業本部の○○です」
「あ、○○室の○○ですが、アップルちゃんお願いしま〜す」

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パチモンストーカー(1)

 新宿でOLをしていたころは、夜な夜な西口や歌舞伎町で酒を飲んでいたものだ。あれだけ店がたくさん集まっている新宿とはいえ、毎晩「料理とお酒がおいしくて、値段はそこそこ」の店をハシゴしていると、次第に飽きも出てくる。その晩も、女友だちのミチコとふたり「どっかいい店ない?」と歩いていた。「そういえば、前に1度だけ行ってボトルを入れたお店があったじゃない。まだ残っているはずだから、行ってみない?」とミチコがいう。「ああ、そういえば行ったね。あまり気に入った店じゃなかったけれど、ボトルもったいないし、行こうか」と私。ふたりは雑居ビルの7階にあるその店へ向かった。

 あれ? 看板が違っている。内装はほとんど同じだったが、カラオケパブだったその店はなぜか「そっくりさんショー」を行なう店に変わっていた。どうやら、居抜きで店が変わったばかりらしい。さっさと帰ろうと思った瞬間、ボーイが飛び出してきて「どうぞどうぞ」と強引に案内を始めた。

「いや、私たち前の店だと思ってきたの。ボトル入っていたから」

 ボーイはすかさず「オープン記念ですから、ボトルをタダでお入れします。そっくりさんが接客しますよ」と誘う。ボトルタダでそっくりさんの接客! おもしろそうじゃない、というわけで私たちは入店した。まだ、早い時間だったせいなのか、オープンしたばかりなのか、店内の客は私たちだけ。必然的にそっくりさんが何人も私たちのテーブルにつくことになる。水割りを飲んでいる私の隣にいるのは長渕剛もどき。目の前には松田聖子もどき。石原裕次郎や松山千春、五木ひろし、デーモン小暮もどきまでやってきた。パチモン天国ばんざーい(笑)。

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パチモンストーカー(2)

 私たちはボトルもあることだし、と続けて数回、飲みに行った。2度目に店を訪れた数日後のことだ。私の部屋に無言電話がかかり始めた。最初はただのいたずらと思って無視していたが、あるとき相手が話しかけてきた。

「オレはアンタのことを知っている」
「最近、髪の毛を短く切っただろ」
「ベージュのスーツを着ていたね」
「今日はピンクのコートだった」

 電話をかけてくるたびに、内容がエスカレートしてくる。相手は私の家の住所も、勤務先まで知っているのだ。目に見えぬ相手に恐怖を感じた私だったが、いたずら電話の回数が増えるにしたがって、にわかプロファイリングを始めるようになった。

●相手は男、年齢は20代後半から30代そこそこ。
●無言電話がかかるのは夕方5時〜6時のみ。
●いつも公衆電話からかけてくる。
●深夜の電話は無言ではなく、話をしてくる。
●かならず後ろで何やら音楽が鳴っている。
●私の服装を知っている。
●髪を切ったばかりということも知っている。
●住所と電話番号、名前、会社名を知っている。

 最初に推理したときは、同じ会社の男だと思っていた。しかし、私はある日気づいたのだ。ボトルを入れるときに書かされた紙には住所や名前、電話番号、会社名を記入していたこと。髪を切ったことを店でミチコと話していたこと。そのときに接客していたのはひとりだけだった、ということ。そして、犯人が知っていた服装はあの店に行ったときのものだったことを。

 私はある日、電話の相手にこうカマをかけた。「ねえ、こうやってお客さんの家にいたずら電話をしていることを、店に知らせてもいいわけ?」

 黙り込む相手。やっぱりそうか。トドメだ。「あなた、デーモン小暮のそっくりさんでしょう!」

 その日以来、彼は2度と電話をかけてくることはなかった。さようなら、デーモン。

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想い出の店

DSCN2846 どうしてもコレが食べたくなって、約6年ぶりに吉祥寺の鳥良へ。いまではアチコチに出店している鳥良だが、私はほかの店には目もくれず、本店へ通っていた。カウンターで手羽先揚げと白レバーの刺身を食べながら、日本酒を飲む。混んでいて行列ができているときは、近くのいせや総本店 で時間をつぶしたっけ……。そんな思い出深い鳥良。心待ちにしていた手羽先揚げは、コショウが効いていてビールが進む。ああ、変わらない味だ。しかし、白レバーの刺身がメニューにない。やっぱり鳥インフルエンザの影響なのか。

「ねえ、白レバーの刺身、よく食べたよね。あれ、なくなっちゃったみたい」

「……。オレは結婚前に2回、連れてきてもらっただけ。白レバーは食ってない」

 うわあああああ! シマッタ! ここは前の彼氏とよく来ていた店だ。白レバーの刺身を一緒に食べていたのは夫じゃなかった! 思い出の店に夫を連れていくのは辞めよう、そう決意した夜。

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酔っています。

DSCN2808 東小金井の沖縄料理「海風」で飲み。ただいま帰宅しましたあ。いや〜、楽しかったよ。親友あっくんと私、夫、娘、そしてあっくんの後輩で25歳のK嬢。夫と娘は早々に帰ったが、残った3人で恋愛談義。K嬢いわく「お互いの部屋にも行き来する男性がいるのだけれど、友だち同士の関係のまま。自分は好きなのに相手がどう思っているのかわからない」という。ここは38歳の元裏番&歌舞伎町の蝶(私)と、44歳の元恋愛で泣いた経験も持つ男(あっくん)の出番である。

 K嬢がいうには、クリスマスイヴもすでに約束済み、男の部屋でごはんを食べるらしい。そこまでいっていて、何が問題なのかと思えば要は「恋愛感情にもつれこんで、友情をこわしたくない」という気持ちがネックになっているのだ。「女から好きだと告白して壊れる程度の関係なら、その程度の縁」と私の持論。「ちょっとカマをかけてみなよ」という私に対して、あっくんは「今どきの男は鈍感だ。カマをかけたぐらいで気づくわけがない」と反論する。

 いいじゃん。気づかないバカだったらそれで。「私のこと、どう思っている? 私は好きなんだけど」といって、男が「わからない」とか「別に恋愛対象じゃなかった」などと答えたら「じゃ、好きになって」といえばいいだけなのに。それで好きになってもらえなければ、諦めればいい。

 そんなことをコンコンと話しつつも「こうやって相手の気持ちを考えながら、ドキドキするのが楽しいのよね」とオバサン風味のことを考える私。ああ、だれか私もドキドキさせろよ、などとヤケッパチになりながら酒を飲んできた夜であった。

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キュウリ3千本の奇跡

DSCN2714.JPG 焼き鳥の名門、である。「チェーン店かつフランチャイズなんだけど名門」という、謎は別にして、約10年ぶりに訪れたかつての行きつけ。派手派手しい外観も、煙にいぶされた内装もまったく変わっておらず。昔は男の同僚や彼氏と酒盛りをしていたが今回は私と夫、男友だち、娘の4人。変わったのは私だけか。

 なつかしさのあまり、しょっぱなから「キュウリ3千本!」とオーダー。女子店員の笑顔が一瞬凍る。実はこの店、キュウリの塩もみを串に差したメニューがある。「キュウリ1本ください」と頼むと、店員が「キュウリ1千本!」と叫ぶのが、この店のしきたり。いわば、威勢、活気、景気づけ。なのに、客がみずから「3千本」と叫んでしまったので、落としどころがなくなってしまったようだ。女子店員は「3千本ですね」とつぶやき、去っていった。

 私と店員のやりとりを聞いていた夫は「さ、さんぜんぼ〜ん?」と驚きながら、メニューを確認。バカか、お前は。


DSCN2708.JPG 娘は、焼き鳥を食べるだけ食べたのち、メニューを読み上げはじめた。ひらがなに興味のある年頃だが、いままでは「これは“い”?」「これは“ら”?」と聞く程度。なのに、いきなり「あか、しろ、みの、つくね、ししとう」といい出したのである。初めて読んだ文字が、焼き鳥屋のメニュー。しかも、通好みのメニューをセレクト。なんだか、うれしくなったので「キュウリ4千本」をオーダー。さっきよりも1千本多め。

 この記事はささらほうさらの「感動の瞬間」にTBしています。

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張り紙に見る神の声

DSCN2468.JPG 娘と昼寝をしたところ、夜の7時半になっていた。あきらかに昼寝じゃなくて、単なる睡眠である。寝ている間に男友達あっくんから電話が来ていたので、かけ直す。酒の誘いだったので、ふたつ返事でOKする。場所はおなじみの海風。東小金井にある、沖縄料理を出す居酒屋である。

 ここの店は、やたら張り紙が多い。メニューの張り紙にまじって、店主の格言ともいうべき言葉も並んでいる。街中でよく見かける「汝悔い改めよ」「キリストは神の御子」とかかれた看板に似た香り。たとえば、こんなの。

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(クリックすると大きくなります)

 泡盛を飲みながら、何気なく店内を見まわすと目に飛び込む「ぐちゃぐちゃいわないこと」の文字。酔っ払ってぐちゃぐちゃいっていた日にゃ、しょげ返るしかない。横を向けば「いかしたお客さまへお願い」の張り紙。「しゃらくさい行為をした人は即退場」と、かかれている。こんなのが、店内いたるところへ貼りめぐらされているのだ。

 酒がつつむにつれ、つい超えてしまいそうになる「節度のボーダーライン」は、こうした張り紙を見ることで踏み止まっている。いわば、抑止力。キリスト看板を見て、我に返る人もいるのだろうが、私は海風の張り紙を見て、我に返る。

キリスト看板に興味のある人はこちらのサイトがオススメです。

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飲み過ぎ、のワケ

DSCN2339.JPG また、やってしまった。飲み過ぎ。できることなら触れたくないが、そうもいかない。だって、飲み会のメンバーにここの愛読者がいるから。顔を合わす機会がほとんどないので、ここで謝っておこうと思う。

   飲み過ぎました。ごめんなさい。

 いやぁ、楽しかった。楽しすぎた。飲み過ぎてしまったワケとして、ひさびさの飲酒で自らの限界を計り間違えたこともあるが、根本的な原因は他にある。間もなく降りかかる災難を忘れたいがための痛飲だったように思う。やや怪しい自己分析だが。

 その災難とは市役所がらみの仕事だ。何度も書いているが、私は小金井市の子育て支援計画をチェック&見直しを行なう委員をしている。委員は国立大の教授や保育園園長、小学校校長など「肩書き満載」のメンバー。そんな、人生もキャリアも大先輩、という人たちのなかで、「子育て経験たったの4年、ロクな肩書きなし、態度だけはイッパシ」の私は浮いた存在。そんな私が、なにを間違えたのか委員会の会長になってしまった。

 これって「アイツさー、エラソーだから学級委員にさせちゃおうぜ」みたいな感じか。私の知らない間に進んでいた話である。飲み会の3日後にはシャンシャン総会ならぬ、シャンシャン会議が行なわれる。次第書(会議のシナリオ)もすでに作られていた。

「どなたかご推薦はありませんでしょうか」
「○○さんとの声あり」
「○○委員を推薦との声がありましたが、いかがでしょうか」
「異議なし!」
「ご異議なしと認めます」

 会長選任までのカウントダウン。断わりたいのに断れず、飲みに走ってしまった私。13階段をのぼっているような気分。飲んだ翌日、娘は私にこういった。

「ママ。昨日、オットットしてたね」

 娘よ。大人になると、オットットしたくなる日もあるのさ。

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水商売の思ひ出

_DSC0040.JPG まだ、ライターとして駆け出しのころ、水商売をしていたことがある。どうにも食えない私を見かねて、男友だちが行きつけの店を紹介してくれたのだ。内装はしゃれたショットバーなのに、カウンターにいるのはママと女の子という、風変わりな店だった。もちろん、カクテルを頼む客などおらず、みんなJINROかウイスキーのボトルを飲む。

 スピリタスをたしなむ私にとってJINROは、もはや水。客が「poronちゃんも飲みなよ」などと、うっかり口を滑らそうものなら、店は祭り一色になる。

 客が水割りやウーロン割りにしていても、私はロック。飲み始めたら、客の飲酒ペースなどおかまいなしだ。あまりにも早くグラスが空になるので、客は「お代わりしなよ」といわざるを得ない。こうして、ボトルの中身は減っていく……。

 入店1カ月後の私は、客からこう呼ばれるようになっていた。それは……。


   ボトルキラー。

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スピリタスな夜

 吉祥寺のバーで飲んでいたときのこと。その日、私は男友だちとふたり、カウンターで静かに飲んでいた。薄暗い店内に流れるジャズの音色。コンクリートとスチールを使ったシックなインテリア。初老のバーテンダーの控えめな接客は、ゆったりとした時間を過ごしたい自分にはなによりだ。

 10時を過ぎたころ、女性がひとりで店に入り、私の隣に座った。歳は25〜26か。スレンダーな美人だ。

「えっと……。スピリタスをください」

 メニューを見ながらつぶやいたことばに、バーテンダーだけでなく、カウンターに座っていた客全員が息を飲んだ。スピリタスはアルコール度数96度を誇るポーランドのウォッカだ。口元に近付けただけで、くちびるが乾くほどの強い酒である。だれもがこの先の展開を知りたがるように、ジッと耳をそばだてていた。初老のバーテンダーはゆっくりと女のほうを向き、諭すようにこういった。

「お客さま。スピリタスはアルコール度数が96度もある強いウォッカですが……」

 そのことばを聞き、女は一瞬とまどいを見せた。が、すぐに「だったら、ソーダで割ってください」と頼んだ。

 バーテンダーは先ほどよりも、少し強い口調でこういった。

「ソーダで割っても、普通のカクテルよりもかなり強くなります。女性がお飲みになるのはおすすめできません」

 もはや「スピリタスはお出しできません」といっているも同然だ。彼は彼女のことを案じ、あえて断わったのだ。バーテンダーとしてのプライドと優しさ。私はそんな「プロ」の仕事ぶりに感心しつつ、グラスを傾けた。

 そのとき……。私は気づいた。いま、私が手にしているのがスピリタスだということを。それも、ソーダ割りじゃなく、ショットである。初老のバーテンダーはスピリタスのオーダーを咎めることなく、サッサとグラスに注いでいた。なぜだ……。そう、考えていたのを見透かしたように男友だちはつぶやいた。


  「バーテンダーも人を見るのさ」

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スツールはケツが痛い

DSCN1944.JPG 友人あっくんと飲む。沖縄居酒屋で泡盛を飲んで、腹いっぱい食らう。ボトルを飲み切ったので、店を出て「どうするよ」と聞くと、あっくんは「もう飲むだけでいいや」といった。いや、そーいうことじゃなくて「帰るかい?」という意味なのだが。

 そういえば、駅から少し離れたところに気になる店がある。せっかくだからと、ふたりして行ってみることに。そこはいわゆるバーで、ワインや日本酒をグラス出ししている店だ。坊主頭に手ぬぐいを巻いた海坊主のようなあっくんと、スッピン短パンのワタシは明らかに場違いである。

 以前、オーセンティックな店ばかりを集めた本で、BARを30軒以上取材したことがある。そのときの原稿風で今回の店を紹介するとこんな感じだ。

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 閑静な住宅街にひっそりと佇むその店は、10人も入ればいっぱいになる細長い造り。ぐっと落とされた照明と、控えめに流れるジャズの音色が、落ち着いた空間を作り上げている。なめらかな手触りのカウンターは無垢の杉で作られたもの。木を組み合わせるために開けるほぞ穴が、古材であることをうかがわせる。
 メニューは日替わりでワインが15種、日本酒が4種。どれも600〜800円と手ごろな値段なので、あえて初めての銘柄を試すのも一興。おすすめを聞いてみれば、かならず納得の一杯が見つかるはずだ。
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 そんな店に海坊主とスッピン女。オーナー・バーテンダーの心境はさぞ複雑だったに違いない。話しかけるたびに困ったような顔をしていたのが印象的だ。酒を2杯ほど味わったころ、下半身がしびれ始めていることに気づく。小さなスツールの座面に大きな尻で座り、なおかつ足が届かなくてブラブラしていたのだから、しびれるはずだ。このままでは要介護スッピン女になりそうなので、早々に退散。

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はしご酒と天敵O氏

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DSCN1926.JPG 男友達あっくんと東小金井の沖縄居酒屋「海風」で飲む。夫と娘も連れていき、オリオンビールや焼酎を飲みながら話に花が咲く。夜9時すぎ、翌日仕事のある夫と保育園に行く娘は、ひと足先に帰宅。さぁ、これからが本番だ、とばかりに盛り上がるも、焼酎のボトルが空となり、やむなく店を出た。

 そうだ。今日は学童保育関係の会議があって、それが終わったあと武蔵小金井で飲んでいるはずだ。酒飲みによる、酒飲みのための情報はネットなんかよりも早く的確である。あっくんとふたり、タクシーに乗り込み、みんながいると思われる居酒屋に乱入。

 座敷には総勢11名ほどの父母がおり、ビールを飲みはじめたところだった。その過激な発言ぶりから「爆弾男」と呼ばれているO氏もいた。ちなみに私は「装甲車女」と呼ばれ、爆弾男とセットでいるとロクなことがないといわれている。お互い、歯に衣着せぬ物いいで気が合う部分も多いのだが、一歩間違えると一触即発の危険性が伴う。

 実は先日、O氏が主催した飲み会に参加し、大変な目にあっている。飲み放題の日本酒に手をつけ、すっかり泥酔してしまったのだ。他の参加者もひどい有り様。なのに主催者の彼は最後までシラフだった。もともと酒が飲めない彼は、私たちの泥酔ぶりをしっかり目に焼きつけていて、語りべのごとく、そのときのことをおもしろおかしく話し始めた。

「いやぁ、すごかったよ。この間は」

 酔っ払ったほうとしては、あまり聞きたくない話だ。思わず、O氏に毒を吐く。

「あのねえ、ひとりシラフでいて、後から酔ったときの話をするなんて卑怯! 今度はつぶしてやるから覚えておけ」

 O氏はニヤニヤと笑っていた。本当に小憎らしい男である。

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もんもんは……

DSCN1513.JPG 東小金井駅の居酒屋で友人と飲んだくれていたときのこと。カウンター席の隣に座ったオヤジは入店前から相当、酔っ払っていた。ビールを頼み、30分もしないうちに他の客にからみ始める。最初のターゲットはカウンターの隅でひとり静かに飲んでいたインド人男性だった。

「おい、てめえ。顔が黒いな。ビールなんか飲んでるんじゃねえ」「オレはなあ、ヤクザだ! もんもん入れた正真正銘のヤクザだ! 文句あっか!」

 日本語がさっぱりわからないインド人も、雰囲気でからまれていることぐらい分かっているようだ。知らん顔をするも、オヤジのからみは止まらない。隣で聞いているこっちも、あまりのしつこさにゲンナリする。

 ふと、インド人男性を見てみると、半べそでワタシを見つめていた。涙目で「助けてくれ」と訴えている。仕方ない、助けてやるか。

(手に持っていたコップ酒をドンと置く)
「いい加減にしなさい」
(オヤジ、こちらを向く)
「なんだ、ねーちゃん。オレはヤクザだ。文句あっか!」
(友人がまぁまぁと間に入る)
「もんもん見せてみ。どこの組よ。組のもんがカタギに迷惑かけているって電話してやるから」
(オヤジのまゆげがハの字になる)
「いや、その……」
(ん?)
「もんもんは……。入っとらん。組は……」
(笑)
「さっさと帰りなさい!」

 ここで、ようやく店主が登場。ビール代を請求して、オヤジを追い出そうとした。しかし、ポケットから出てきたの100円玉と10円玉が数枚だけ……。ほどなく警察官に引き渡され終了。

 1時間後、ワタシと友人も店を出た。すると駅前の交番でこってり絞られているオヤジを発見。泣きそうな顏で交番から出てきた彼は、なんとその足で目の前にある、別の居酒屋に入っていった。……10秒後。無銭飲食騒ぎを知っていたその居酒屋の店主に追い出され終了。

 国際親善に加えて、犯罪を早期解決に導くという、有意義な夜であった。

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蹴ってください

 暑くなってくると焼鳥で一杯飲みたくなるが、子どもが生まれてからはすっかり飲みに行く機会が少なくなった。OLのころは毎晩、吉祥寺のいせや総本店で、コップ酒を立ち飲みしていたのに……。

 ある日、いせやで飲んだあと、なじみのスナックにもぐり込んだ。深夜まで大騒ぎをして、いい気分で店を出る。タクシーを拾おうと近鉄百貨店の前を歩いていたら「すみませーん。すみませーん」と声が。あたりをキョロキョロと見まわしてみると、ひとりのおじさんが道ばたで正座をしている。彼が私を呼んでいたのだ。

 こんな深夜に道ばたで正座をする男に呼び止められ、どうリアクションすればいいのか? ぼう然と立ちつくす私に彼はこういった。

「あ、あの。蹴ってもらえませんか?」
「は?」
蹴ってほしいんです。そのパンプスで」
「え?」
「あなたならやってくれると思って……」

 酔っていたせいか、パニックしたせいなのかはわからない。思わず彼に「あなたはどなたですか?」と聞いていた。聞いたところで何になるのか。すると彼は「怪しいものじゃありません」といいながら、しずしずと名刺を差し出した。超一流企業の部長だった。名刺だけ奪って逃げたら、おじさんは正座をしたまま「待って〜」と叫んでいた。

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笑いの夜

DSCN1200.JPG 締切前日に原稿を完成させ、飲みに行く。女友だちから「ねえ、ひさしぶりに会えない?」という電話をもらい「いいよいいよ、行くもんね」と約束した日は、400字×6本分の締切前日。二日酔いでまともな原稿がかけるはずもないので、さっさと入稿。人間、目標があるとがんばれることを証明したかったんである。

 先日、編集者と行った創作和食店を予約し、明け方に原稿を仕上げて、少しだけ仮眠をとって、晩ご飯を作って出かける。ひさしぶりに会う彼女は、10年ほど前に仕事で知り合ったライターである。ワケあって昨年、未亡人になったばかりだ。あっちは未亡人、こっちは育児疲れ、おまけに締切に追われる身とくれば飲みたくもなるわけで、ふたりで黒糖焼酎をグビグビと空けた。

 飲んでいるうちに、彼女が「新橋にさ、いい立ち飲み屋があるのよ。今度、行かない?」という。いいね、女ふたりで立ち飲み。でもさ、立ち飲み屋って殺伐としていて、チャラチャラ飲めないよね。店で浮かないで、かっこよく飲みたいねえ。などと答えると、彼女は真顔でこういった。

「立ち飲み屋ってさ、背負っている人以外お断り、よね」

 未亡人がいうセリフとしては最高傑作だ。「あんたはもうすでに充分、人生の苦渋を背負っているから大丈夫」と意味不明のはげましをするワタシ。ホントにおもしろい。ひさしぶりに女同士の楽しい時間を過ごさせてもらった。

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それ以上はいうな!

DSCN0888.JPG 夫が撮影で留守、私は子守りをしながら仕事……。昨夜は「晩飯どころじゃねーぞ」という状態で、しかも夜になっても気温が下がらず、外は風ひとつない。忙しい、暑いとくればビールが飲みたくなるわけで、男友だちを誘って娘と3人で居酒屋に出かけることにした。

 駅前で待ち合わせをしていると、私たち親子の前に1台のタクシーがやってきた。男友だちである。車内灯にうつし出された彼の姿を見て一瞬、愕然とする。


 なぜなら、彼はオレンジ色のポロシャツを着ていたからだ。
 なぜなら、私もオレンジ色のTシャツを着ていたからだ。

 動揺してはいけない。そう肝に念じながら「よっ、おまたせ」「呼び出してごめんよー」とことばを交わす。居酒屋に入った私たちはすぐさまビールを頼み、娘のジュースとともに乾杯をする。あー、うまい。最高だ。

 ひとくちのビールで心も体も天国に誘(いざな)われたそのとき、彼はこういった。

「なんか、さりげなくペアルックになっているねえ。よりによって、お互いオレンジを着るなんて」

 いうな! それ以上、何もいうな! 

 地元の居酒屋で夫以外の男とペアルックで酒を飲む私(しかも、子連れ)。だれかに見られやしないかとビクビクしながらも、冷たいビールの誘惑には勝てなかった。

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学習能力

 ガーデニング取材が終わった2日の夜、とある編集者と新宿で飲んだ。予約していた、わらびやは創作和食の店で、駅からすぐ近くだというのに静かで落ち着いた雰囲気だった。テーブルもゆったり、お隣との距離もゆったり。席数はそこそこあるが、いわゆるオオバコ店にありがちな、騒がしさはない。その店で「カリカリじゃこと豆腐のサラダ」などをつつきながら、マッタリと日本酒を飲んできた。

 途中、トイレに行きたくなったので、編集者をひとり置いて席を離れる。トイレは店内同様、和の趣きのある内装で、個室のドアは引き戸である。リフォーム雑誌の仕事をしているので、うんちくを垂れるが、最近のトイレは「引き戸」「開き戸」が主流だ。内開きだと中で人が倒れても身体が邪魔になってドアが開かず、救出できないからだ。

「引き戸か……。飲み過ぎでぶっ倒れても安心だ」などと、妙な安心感を覚えながら、個室に入る。鍵は引き戸によくある「鎌錠」で、カンヌキがカマの形をしているタイプだ。

 ところが、たまたま入った個室の鍵はなぜか壊れていて、何度やってもドアの框(かまち)とカンヌキがはまらない。よくよく見ると框との高さが微妙にズレているため、カンヌキが咬まないのだ。「仕方がない、もうひとつの個室に入ろう」と思ったが、お隣はすでに使用中。すでに「する気満々で後は出るだけを待つ身」の尿意はすでに我慢の限界である。

「ドアを押さえながらしよう」

 酔っているせいなのか、ババアになって羞恥心がなくなったのか、我ながら大胆な戦術である。しかし、洋式便座に座りながら、片手でドアを押さえるのは至難のワザだ。やむなく片足と片手を駆使しながら、なんとか用を済ませた。

 軽い疲労感を覚えながら、トイレを出ると店長とおぼしき男性がスタッフと立ち話をしていた。「トイレの鍵、壊れている?」と聞くと「あ〜、すみません。壊れちゃっているんですよ。直しておきますね〜」とさわやかな笑顔。

 はり紙ぐらいしておけよ……と、心の中でつぶやきながら席に戻る。結局、私はその晩、2回もそのトイレに入るハメになった。1回目よりも2回目のほうが、足さばきも格段よくなり、スピーディに用を足すことが出来た。

 こんなところで学習してどうする、私。

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つかの間の宴

 24日(土)は保育園の父母会総会だった。約1年間の役員生活もこの日で終わり。とはいえ、のびゆく子どもプランの委員はあと1年あるので、保育園の役員会とはまだまだおつき合いが続く。

 ここのところ、仕事ばっかりだったのでハメをはずすチャンスをうかがっていたのだが、この日の夜は「役員お疲れさん会」があったので、思いっきりぶっ飛ばしてきた。ワインをしこたま飲んで帰り、ひさしぶりに熟睡。激しいノドの乾きで爽快な朝を迎えたときは、なぜか上は半袖パジャマ、下はパンツ一丁だった。

「ねーねー、私、なんでパンツなの?」と聞くと、夫はものすごーいイヤな顔をしながら「上だけでも着せてあげただけ、マシだろうが」と言い放った。

 ……と、いうことは半袖パジャマは夫が着せてくれたのか。

 ……と、いうことはすっぱだかで寝ていたのか、私。

 しばらく徹夜が続いていたからな、しゃーないやんか。そんな、ひとりごとをつぶやきながら、ズボンを履く私であった。

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酒飲みの血が騒ぐ 

 今日は徹夜で保育園の決算と予算案を作り、昼からはもうひとりの会計係と我が家で最終確認。1時間遅れで役員会へ駆けつけ、一段落したのは夜6時を過ぎたころだった。

 当然、娘は「お腹しゅいたよ〜。ごはん食べたいよ〜」と訴える。さて、どうしようか。冷蔵庫には野菜も肉も魚もあるけれど、今から作っても娘の空腹加減に間に合いそうもない。外も暖かいし、夫は仕事で遅い。

 あれこれ考えたすえ「たまにはママとふたりでご飯を食べに行こうか」と提案してみる。娘は「パパは?」とちょっとだけ夫のことを気にしたものの、すぐさま「どこ行く?」「ママとふたりね」とルンルンだ。風が気持ちいいので、手をつないで駅まで歩くことにする。最近はすっかりことばが上手になって、ちゃんと話し相手になるからおもしろい。ふたりで保育園の話をしながら歩く。

 駅前にふたり席が個室風になっている居酒屋があるので、そこに入ってみる。ファミリー層の多い場所柄か「土曜日だけはお子さまランチがあります」という。とりあえずメニューを広げて娘に「何を食べようか」と聞いたところ、まっさきに指差したのはシシャモだった。

 シシャモってアンタ……。

 まあ、いい。食いたいものを食わせてやろうではないか。「他は?」と聞くと、今度は枝豆を指差し「これがいい!」とキッパリ。結局、無理して頼んだお子さまランチにはほとんど手をつけず、枝豆とシシャモをわしわし食べていた。あとは私が頼んだ海鮮チャーハンと、ぼんじり(鶏の尾骨のまわりの肉。脂がのっていてウマイ)を奪い取ったぐらいか。

 3歳にしてこのセレクトは渋すぎる。酒飲みになることは確実だ。血とはおそろしきものである。

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酒は怖い

 以前もここに書き込んだが、OL時代は毎晩、新宿で飲み歩いていた。妊娠してすぐに飲むのを辞め、いまではすっかり控えめになっているが、若いころはホントにすごかったのである。ひと晩で、日本酒なら1升を空けていた。もちろん、ひとり分。飲みっぷりのよさに、1度訪れた店では必ず顔を覚えられた。

 あるとき、店のオヤジが「そんなに日本酒が好きなら、利き酒で勝負しろ! 5杯の日本酒を飲んで銘柄を全部当てたら、会計をタダにしてやる」といい出したので「売られたケンカは買う!」とばかりに、チャレンジしてみた。単なる飲んべえであって、グルメではない。舌には自信がなかったが、引くに引けない。1杯目、2杯目、3杯目と順調に当てた。オヤジの顔色がちょっと変わった。4杯目を当てたころには、店中が熱気に包まれていた。さて、5杯目。飲んでみたところ、独特の香りに覚えがあった。まだ、このお酒が大流行する前で、都内でもこれを置いている店はほとんどないころである。私は答えた。「上善如水(じょうぜんみずのごとし)でしょ!」オヤジはいまにも泣きそうな顔をして、こういった。「持ってけ、ドロボー」

 そんな酒好きの傾向は小学生のころ、すでに現れていた。私が生まれ育ったのは東京の福生市。のどかな田園地帯でレンゲ畑や牛舎がたくさんあるようなところだ。通学路の途中には、多摩自慢という日本酒の蔵元があって、火入れ(貯蔵前の加熱殺菌)の時期になると、工場の煙突から白い湯気とともに日本酒の香りが漂う。小学生だった私は、工場を囲む塀にもたれかかり、匂いをかぐのが何よりも楽しみだった。あたりが暗くなるまで匂いをかぎ続け、親が探しに来たこともある。「日本酒の匂いが好きだ」と主張する我が子を見て、母親は何を思ったのだろうか。

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熱くて寒い夜

 昨日の昼間「今晩はワケあって独身です。だれか一緒に飲みませんか」という、まるで出会い系サイトの書き込みのようなMLが流れてきた。どこの「にわか独身貴族」かと思ったら、顔見知りのお父さん。独身ということばにめっぽう弱くなっている私。心とは裏腹にカラダは正直である。自分でも気づかぬうちに「夫と娘を置いていくので、逢い引き希望」とMLを流していた。

 待ち合わせはやっぱり、薄暗い喫茶店のほうが「それっぽく」ていい。まわりの視線を気にしながら、コーヒーをすすり「じゃ、そろそろ……」などといって、静かに店を出る。そんな後ろめたさを期待していたが、彼が指定してきた待ち合わせ場所は長崎屋の入口。年末大売り出し真っ最中の長崎屋では、そんな淫靡な気分を味わえるはずもなく、淡い期待は打ち砕かれる。

 その後は、居酒屋でひたすらワインを飲み続け「小金井の保育」「小金井の学童」「小金井の子育て」を熱く語りあった。朝の3時までにワイン3本を飲み干し、タクシーでご帰還。ふとんに入りながら「7時間も自称・独身男といたのに、これでいいのか。いいのだ」と自問自答する私であった。

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