カテゴリー「家族ネタ」の記事

厄払い

 うへえ。前回のアップから2カ月あまり。外に積もるビトビト雪のごとく、かろうじて「この世」に存在しています、ハイ。

 11月は娘の七五三をやったり、学芸会を観に行ったりしてプライベート的に充実しつつ、前々回の記事で書いた「超有名旅館の撮影」を契約までこじつけたり(競合は11社!)、仕事用のサイトから頂いたメールがきっかけで、新しい取引先とのおつき合いが始まったりと、仕事的には種まきチックな出来事が続いていた。

 12月に入るとまいた種は芽を出し、本格的な育ちへ入る。まさに成長期! 忙しい! 忙しすぎる!と浮かれポンチになっていた私に冷や水を浴びせたのは夫だった。

「撮影に行く途中、前のクルマが急に何かを避けたんだよね〜。何だよと思ったら、事故車があってさ〜。発煙筒を持って警察官がこっちに向かって歩いていたんだよ〜」

 ヒトごとみたいな言い草で始まった話は、想像以上に壮大かつ感動的な展開へ……。

「危ないって思って急ハンドルを切ったらさあ……」

「さぁ?」

「クルクル〜ってスピンして、ガーンドーンって!」

「は?」

「ガーンドーン……」

「ドーン?」

「ドーン……って……」

「なにそれ」

「コンクリートの壁にドーンって……」

「え」

「だから〜、クルクルってスピンして壁にガーンドーンってぶつかって でも自走できたからそのまま撮影に行って とりあえず帰って来たんだけど クルマの前と後ろがガーンドーンって感じで だからそのままだと(ここまで息継ぎなし)」

「修理?」

「修理……」

「修理にいくらかかると思ってんのよ まったくもう ってそれよりも怪我とかはないの?人は?壁は?死なせちゃったんだよオイとか壁の修理もしなくちゃいけないなんてことはないでしょうね どうなのアンタ!(ここまで息継ぎなし)」

 ゼイゼイと息を切らしながら問いただしたところ、いわゆる自損事故で、人をひいたり、壁をぶっ壊したりはしていないらしい。

 結局、クルマの修理は70万近くかかるとのことで、手頃な中古車を探している最中だ。取引先の未払いやクルマの事故など、去年は本当にロクなことがなかった……と思っていたら、なんと夫は厄年(しかも本厄)だったことが判明。正月早々、厄払いにいった次第であった。


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浮かれポンチ

 8月18日午後10時10分、東京駅から寝台特急「サンライズゆめ」が発車した。「サンライズゆめ」は東京〜広島間を走る臨時列車で、お盆やお正月など多客時のみに運行される。サンライズ出雲・瀬戸と同じ 285系電車(愛称・サンライズエクスプレス) を使用。臨時列車「サンライズゆめ」としては滅多に走らないこともあり、予約を取るのも大変なほどの人気ぶりだ。

 今回、夫と娘がコレに乗って広島の実家(夫の)へ帰省。4室しかない2人用のB個室寝台「サンライズツイン」の予約を取り、意気揚々と東京駅へ向かった。なにしろ、夫は撮り鉄出身のカメラマンだから、鼻息荒いのなんのって。その血を受け継いだ娘も、小躍りしっぱなしだ。

 そんな鉄バカ父娘は、ホームに入線してきた「サンライズゆめ」を見たとたん、ますますキ○ガイぶりを発揮。見送りに行った私と母の「別れの言葉」も上の空。さっさと乗車し、父娘ふたりで写真をバシバシ撮り始めた。

オイオイ、写真撮るのはいいんだけど、娘をホッタラカシにすんなって! おばあちゃんがホームで見送ってくるっつーのに、オマエら手ぐらい振れっつーの! ああーっ、もう発車するよ! ベルが鳴ってる! なのに、部屋から出て来ねえ! ドアの隙間からフラッシュが漏れている! うわあ、もう発車しちゃったよ! ……あーあ、いっちゃった。

ホームからは部屋のドアと廊下が見えるのみ。結局、夫と娘は発車のその瞬間まで、部屋で写真を撮りまくり。私と母はまるっきり人影のない廊下を、ただただ見送るしかなかったのである。

 ふたりは数日間、広島の実家で過ごし、寝台特急「富士はや(富士とはやぶさの略称で、併結運転をしている)」のソロ(1人用のB個室寝台)帰って来る。ふたり揃って浮かれポンチになって帰ってくるのではなかろうかと……。さて、どうなることやら。

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かわいくないのがイケナイの

 夕方のニュース番組でやっていた「質屋ウォッチング」を見た。夫に離婚を切り出され、仕方なく別居中という女性が「生活費の足しに」と質屋に行く。取材スタッフ「ご主人が離婚したい理由は何なのですか?」と聞くと、女性はこう答えた。

「結婚するとみんな、恋愛感情なんてなくなるっていいますよね。でも、私はいつも恋愛気分でいたいんです。だから、甘えすぎちゃったんだと思う」

 寝転がってテレビを見ていた夫がこの言葉に反応。ボソリとつぶやく。

「えーっ、甘えてくれるなんて、いいな……。オレはうれしいけど」

 なんだ、オマエ。甘えてほしいんか? 聞き捨てならぬ夫のつぶやきに、反応する私。

「あのね。夫が逃げ出すほど甘えるっていうのは、フツーじゃないよ」
「そうかなあ。イチャイチャして、いいじゃん」
「“ねえ、ねえ。いつ帰るの? さみしいから早く帰ってきて。いますぐ顔が見たいの〜。飲み会? そんなのダメダメ。だって、私さみしいもん。ひとりでいたくな〜い。いますぐ帰ってきて〜”……なーんていうのを毎日、やってほしいの?」
「うーん……」
「仕事で疲れていても、ベタベタしてほしい?」
「う……、うーむ」
「だから男ってさあ、ダメなんだよね。独身のかわいい女の子なんかと、ちょっと浮気して、電話で“今日、会いたいの〜。さみしい”なんていわれるとハマっちゃう。デートの帰りにさ、“ずっと一緒にいたいの”なーんていわれて、本気になっちゃう。女房は絶対にいわないセリフだもの」
「うぐ……」
「そんなに甘えてほしければ、浮気してくれば? あ、生活費は入れといて。いいぞぉ、毎日ベタベタしてくれる。でもなー、金かかるぞ〜。毎晩、こじゃれた店で外食だもんね」
「外食かあ……」
「大人のなんちゃら雑誌を買い込んでさ、デートする。あ、業界人ぶって、取材先に連れていくのはやめたほうがいいかもね。カッコワルイし」
「うーん」
「丁寧な仕事ぶりが伺える逸品、とかいうキャッチコピーが付きそうな煮物とか頼んじゃってさ。芋がコロン、花の形をしたニンジンがペロンと入った小鉢が1,200円。腹いっぱいになんねえっつーの。わはははは」
「ははは……は……」
「あ、うちは今夜、煮物だよ。大きい具沢山がんもと、小金井で採れた若竹の煮物。がんも1枚200円、若竹が山盛りで300円。白だしで炊いて、冷蔵庫で冷やしてある。あとは豆アジの南蛮漬け。豆アジは157円のパックが半額だったから、それを2パック。玉ねぎは○○さんが作った無農薬・小金井産。ま、浮気相手は、こういうの作れないでしょうけど。いいんじゃない? イチャイチャしてかわいければ」
「いや……、その……ごめん」
「いいのいいの、あやまんなくって。私がかわいくないのがイケナイの。でもねえ、ギャラの入金とか、仕事のこととか、娘のこととか、アンタの黄ばんだTシャツをどうやってきれいに洗濯するかとか、トイレくせーな。座ってしろよ、オイ。掃除しても掃除しても、ジョボジョボ飛ばしやがってとか、そんなことを毎日考えているとね、やーん、早く帰ってきてえ。なんていう気にもなれないのよね〜」
夫「ごめんなさい。もう、いいません」
私「いいのいいの、あやまんなくって。私がかわいくないのがイケナイの……(以下延々繰り返し)」

 ……エサだけで成り立っている結婚生活もどうかと思うが。

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あけましておめでとう!

 明日11日には鏡開きだというのに、いまさら何ですがあけましておめとうございます。年末年始の約2週間、毎日仮眠3〜4時間(1時間ずつの細切れ睡眠)で仕事をしていたので、実質的な正月休みは4日から。「大晦日は、さわやかなタイトルの記事で締めくくりたい」などと、ホザいていたものの、ニュース記事の作成でそれどころじゃなく、結果的には「薄らハゲ、オッケー」で締めくくり、という結末。なので、新年初の記事はさわやかにいきたいと思う。

遅ればせながらやってきた正月休み。ダメージ回復に数日を要したが、その後、休みを利用して里子に出した子猫を見に行って来た。

 7日の午後、 飼い主・cyberさんの家に、親子3人で訪問。ドアチャイムをならすと、cyberさんは子猫のエルを抱えて玄関ドアを開けた。

 ミ〜ッ、ミャオ〜……。小さな小さな鳴き声。cyberさんに抱っこされたエルは、私たちが保護したときの何倍も大きく成長していた。

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 歩くのもやっとで、手の平に乗るほどだった子猫が、こんなに立派に成長したなんて!

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 cyberさんは、チャーシューや厚焼き卵、きんぴらごぼうなどの手作り料理と、大量のお酒を用意して待っていた。娘はエルと遊び、私たちは酒盛り。とっぷりと日が暮れるまで長居をしてしまったのは、いうまでもない。

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長い長い母の話

 ひさしぶりに更新をしようと思ったら、53時間ものメンテナンスが始まったばかり。ひたすら待った挙げ句、ニフティは「お知らせココログ」などという、笑うに笑えない結末を迎えた。何、書きたかったか忘れちゃうっつーの。

 母の件ではいろいろとご心配をいただき、ありがとうございました。結果としては命拾いをした……という状況です。

 11月21日の夜、動悸と足のむくみ、虚脱感を自覚。夏頃から動悸を感じていたが、いつもよりひどいので、翌22日に市の健康診断もかねて、近所の病院へ。心電図検査を行ったところ、記録不可となり、故障かと大騒ぎ。故障じゃないことに気付いた医師が大慌てで点滴を行う。しばらく安静にしていたところ、心電図が正常に戻ったので帰宅。翌日も病院へ行き、検査。異常なし。

11月24日朝、具合が悪くなり、病院へ。心電図検査を行い、「うちじゃ、手に追えない」と循環器専門の榊原記念病院を紹介され、タクシーで向かう。そのまま緊急入院。駆けつけた私が医師から受けた説明は「心室頻拍。1分間に200以上の脈拍が20分以上続く危険な不整脈です。いつ、心臓が止まってもおかしくありません。心停止になった場合、電気ショックで蘇生します」とのこと。本人は「えーっ、じっと寝ていないといけないのぉ?」というほど元気なのだが、ナースセンターでは途切れなくアラームが鳴り(母が着けているホルター心電図の警告音)、医師や看護士がバタバタと走りまわっていた。

 不整脈には大きくわけて2つあり、ひとつが心筋梗塞や心筋症などの心疾患から引き起こされたもの、そしてもうひとつは特に心疾患がないのに起きるものがある。原因を特定するにはさまざまな検査が必要で、母の場合もようやく点滴や投薬が効いてきた数日後からひとつひとつ検査を行い、考えられる原因をつぶしていった。

 心臓カテーテル検査では心筋梗塞の兆候はなかった。……となると、心筋症? ありとあらゆる検査を経て、入院10日以上たって、ようやく出た結論が「心筋梗塞でもなく、心筋症でもなかった。ただ、いまだに危険な不整脈が続いている。治療ができるか検査し、治療できるようならばアブレーションをする」というものだった。アブレーションとは、そけい部からカテーテルを挿入し、心臓の異常な部分を探し出し、電流で焼き切る治療法だ。20年ほど前から始まった治療法らしく、素人の私たちは「心臓の組織を電気で焼く!」とビックリ仰天。インフォームドコンセントの徹底……という時代のせいか、さんざん危険なリスクを説明され、そりゃあもう恐ろしいなんてもんじゃなかった。

 そして昨日。カテーテル室に入っていった母は、2時間ほどで戻ってきた。不整脈の原因となっている異常部分を見つけることができ、アブレーションが成功したのである。母の担当となって入院からずっと治療をしてくれていた20代の女性医師、アブレーションを担当した男性医師、いつもにこやかに母の世話をしてくれた看護士のみなさんには感謝してもしきれないほどだ。

 母のホルター心電図は入院中、ずっとアラームが鳴っていた。しょっちゅう、看護士さんや医師が部屋に飛び込んできて、母の様子を確認していた。担当の女性医師は、いつ止まるかわからない母の心臓のせいで、何日も家に帰らず、アラームが鳴るたびに駆けつけてくれていた。なぜか自覚症状も少なく、失神もなかった母は「これ以上、安静にできないもん」とふてくされたり、検査中に「センセ〜、こわい〜」と半泣きし、医師を困らせたりしていた。そんな母の心臓が、たった1度の治療で治ってしまうなんて……。

 現代医学に感心しつつも、大勢の人たちのおかげで救われた命だ。まだまだ長生きしてもらわなければ。今夜はようやく熟睡できる。心配してくれたみなさん、ありがとう。

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しばらくお休みします

 母が心疾患で緊急入院。動悸、胸の痛み、足のむくみで近所の病院で受診し、投薬で落ち着いていたものの、24日朝に具合が悪くなり、病院からの紹介で榊原記念病院に入院しました。病名は心室頻拍(しんしつひんぱく)。心臓がけいれんしているような発作を起こすもので、いつ意識がなくなっても、いつ心停止してもおかしくなかった。これからも、いつどうなるか予測できない……という状態での入院です。

 母はどんなにひどい発作でも、意識を失っておらず、自分がそれほど重篤な状態だとわかっていませんでしたが、医師の淡々とした説明に、自分の置かれている状況をようやく理解したようです。現在はCCUで24時間体制での治療を受けています。後から聞けば、夏頃から息苦しさを感じていたとのことですが、「太っちゃったからかな」と思い込んでいたようです。

 書籍原稿の編集を抱え、仕事をしながら病院へ通っていますが、いつ病院から呼び出しの電話が来るかとビクビクしています。もう、神様にお願いするしか、私たちに出来ることはありません。

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お泊まり子猫

 朝10時に外出から帰宅すると、マンションの自転車置き場付近で子猫の鳴き声がする。しかし、まわりを見回してもその姿は見えず。たまたま、マンションに生協の宅配を売り込みにきていた営業ウーマンも「どこにいるんでしょうかねえ」と気にしていたが、うちのマンションの植え込みやブロックの陰では毎年、何匹もの猫が出産していたので、私自身も「どこかの物陰で鳴いているんだろう」程度にしか思っていなかった。

 昼ごろ、窓を開けてパソコンに向かう。やはり、すぐ近くからミーミーと鳴く声がする。母猫とはぐれたのか、それとも出かけた母猫を探しているのか……?

 日が落ちたころ、撮影を終えて帰宅した夫が玄関をあけるなり「懐中電灯! どこかで子猫が鳴いている!」と騒ぐ。まあまあ、落ち着きなされ。自転車置き場のあたりでしょ? 朝から鳴いていたよ。そのうち母猫が連れにくるって。……という、私のことばも耳にせず、薄暗い自転車置き場やベランダの下を懐中電灯を照らして猫を探す夫。

「いたよ、いたいた!」

娘と家を飛び出し、夫の側へ駆け寄ると明かりの先に、小さな小さな生き物がうずくまっていた。

夫「どうする?」
私「そのままにしておきなよ。ヘタに人間が触ると母猫が寄ってこないもの」
娘「でも、もう真っ暗だよ。死んじゃうよ〜」
夫「朝からここで鳴いていたんだろ? このままじゃ明日の朝まで持たないよ」
娘「カラスに食べられちゃう〜」
私「……」
夫「とりあえず、保護する?」
私「……」
娘「かわいそうだよ〜」
私「……飼わないよ。マンションはダメなんだから」
夫「一晩だけ、な」
私「約束だよ。泊めてあげるだけ。飼わないからね」

 中学生になるまで団地住まいだった私は、幾度となく子犬を拾って帰り、両親を困らせていた。実は両親ふたりとも大の犬好きで「飼いたい気持ち」をグッと抑え、里親を捜すよう私を説得していたらしい。数年後、家を建てたとき、真っ先に「犬を飼う」と言い出したのは、私でも弟でもなく、父と母だった。我が家だって同じで、住んでいるマンションはペット禁止。娘がどんなに泣こうが、飼うわけにはいかないのだ。

「とにかく、今晩だけ。猫用ミルクを買ってきて飲ませよう。明日いちばんに獣医さんのところへ連れていき、健康診断と里親探しの相談するからね」

 娘と固く約束をして、子猫を家に連れて帰る。あわてて買ってきた猫用ミルクを飲ませてみると、ほんの少しだけ飲み、よほど疲れたのか眠ってしまった。3時間たつと、またミーミーと泣き、ミルクを飲んでおしっこをすると、ぬるま湯を入れたペットボトルに寄り添って熟睡。これの繰り返しだ……。

 朝まではまだ長い。……やべえ。かわいすぎる。

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以心伝心

 夫とは気持ちが通じ合っているほうだと思う。なにしろ、7年間一緒に過ごしているし、ふたりで仕事をすることも多い。また、私がブチ切れる瞬間を見事に悟り、ダメージを回避するすべをよく知っている。以心伝心だと思っていた。なのに……。

私「あ〜、アイスコーヒー飲みたい」
夫「やべっ、コーヒーフィルター切らしていたんだ!」
私「0時か……。あそこの100円ショップなら24時間営業だから開いているよ」
夫「じゃ、クルマで買ってくるか」
私「そうだねえ。明日の朝も飲みたいし」
夫「じゃ、行ってくるよ」

バタン、ブルルル〜……。

夫「ただいま〜」
私(パソコンに向かいながら)「おかえり〜、あった?」
夫「あったよ、あった! おいしいかわかんないけど」
私「……は?」

 振り返るとそこには、750mlのペットボトルを抱えた夫が満面の笑顔で立っていた。

私「なにそれ」
夫「コーヒー」
私「フィルター買いに行ったんじゃないの?」
夫「あっ!」

 バタン、ブルルルル〜……。

ガソリン代をかけて再び100円ショップに向かった夫。節約してんだか、浪費してんだか……。バカ。

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歌舞伎町でさわやか飯

 昨夜はアニメ映画の試写会が当たったので、夫と娘は有楽町・よみうりホールへ。ひとり家に「残った」私は、冷蔵庫に「残って」いた明太子でパスタをつくり、これまた冷蔵庫に「残って」いた鶏の立田揚げ3個と枝豆で「残り物ごはん」を済ます(残さず食べた!)。

 実はもうひとつアニメ映画の試写会に当たっていて、来週娘を連れていく予定だ。「今日はオレが連れていくから、今度はオマエが行けよ〜」「夕方の回に映画を見て、終わったらオレも合流するから、3人で夕飯でも食べよう」と夫。場所は毎晩飲んだくれていた歌舞伎町……。会社の同僚に「歌舞伎町の女」「新宿ザル(飲んべえのザル、という意味)」と名付けられていた私が、親子で「新宿ごはん」ですよ、おい。

 ハタチそこそこの、夜遊び全開のころ……。まだ実家に住んでいた私は「警察24時」系のドキュメンタリー番組を見るたび、ドキドキしていた。両親と夕飯を食べながら、番組を見ていると、かならずといっていいほど歌舞伎町ネタが放映される。

「大久保公園横で倒れている女性がいるとの通報!」
「歌舞伎町のバーでケンカ発生!」
「痴情のもつれ! 流血カップル!」

 ナレーションが流れるたび、モザイクのかかった画面に目をこらす。ぶっ倒れているあの女、私じゃないよね……。着ているコートの色は……? あ、違うな。うわー、この店、この間行ったばかりだよ! ケンカで血まみれって……私じゃないよね。違うよな、うん……違う違う。ああ、ヨカッタ。

 そんな私が、今度は夫と娘を連れて新宿ごはん。なんてサワヤカなんだ〜! と、思ったのもつかの間。飲んだくれ女が「子連れで食事ができる店」を知るはずもなく……。思い出すのはオカマバーや渋めの居酒屋、バーばかり也。どうする? オレ。

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友だちの罪

 たまに電話をかけてくると、挨拶もそこそこに「アニキいる?」と夫を呼び出す弟。そんな彼が珍しく「アタシあて」に電話をかけてきた。時刻は夜の11時すぎ。弟の声はとてつもなく暗い。

「あのさ……、アネキに頼みっていうか、協力を頼みたいんだけど」
「え? なに?」

(まさか金の工面じゃないだろうね。いやいや、コイツは甘ったれでシャキッとしない男だけれど、これまで1度も金の工面を頼んだことはない。じゃ、なんだ? 女のことか? あっ! もしかして痴漢で逮捕されちゃったとか……じゃないよねえ。うーん、なんだろう。なんだろう。なんだろう)

「実はさ……」
「うん」
「友だちがさ……」

(なーんだ、友だちの話か。ん? まさか友だちに金貸してやってくれ、とかじゃないよねえ)

「友だちがさ……。やっちゃったんだよね」
「やっちゃったって? 事故ったとか?」
「……いや、その……」
「だから何なのよ! どうしたっていうの?」
「その、あの……。人を……」
「ひいちゃったの?」
「殺しちゃったんだ……」

(いいいいい……いま、なんていった?)

「人をね、殺しちゃったんだよ」
「……」
「……」
「……で、逮捕されたの?」
「うん」
「……で、その人とオマエはどういう関係なの?」
「ずっと前からのネット仲間で、旅行に行ったり、連絡を取り合う仲」
「親しいの?」
「うん。ここのところ、いくら電話をしても繋がらなかったんだ。それで、実家に電話をかけたんだけど、親御さんが電話口に出て、実は……って話してくれたんだ」
「ふーん。そうなんだ」
「でも、でもさ。そいつ、人を殺めるような奴じゃないんだよ。だから信じられなくて」
「犯罪を犯した人なんて、ヤクザでもなけりゃ、みんな『まさかあの人が』っていうじゃん。人を殺すような人じゃなくても、殺しちゃったってことはあり得る」
「確かにそうだね。でも、本当に信じられなくて、ネットで検索したらネットニュースにも出ていた……。自供したって書いてあった」
「そっか。悲しいね。で、私に何をしてほしいの?」

 弟はただ、このことを話したくて電話をしてきたんじゃないと、わかっていたから、私はつとめて平静を装った。

「どうしてこんなことになったのか知りたいんだ」
「いま、お前にできることはないよ。警察に聞いたところで教えてくれるわけがないし、面会に行っても相手は会いたくないかもしれない。手紙だって出せば届くけれど、彼がそれを喜ぶかどうか……」
「逮捕の記事を書いた新聞社の記者に電話したらどうかな」
「よほどの大事件でもない限り、警察発表を載せただけで独自調査はしていないよ」
「そっか……。どうしてこんなことに……」
「逮捕された時期を考えると、もう起訴されて公判待ちだろうね。。逮捕されると、48時間以内に送検されて、その後、警察からこう留請求が出されて裁判所がそれを認めると、最大20日間こう留される」
「そうなんだ……」
「こう留中は警察の留置場に入れられ、起訴するための取り調べや証拠がためが行われるの。こう留中に自白したり、きちんとした証拠が揃い、公判で有罪に持っていけそうだと警察が判断すれば、そのまま起訴。そこからは留置場じゃなくて拘置所に入り、公判待ちね。公判で有罪になり、刑が確定すれば刑務所に収監される。オマエの友だちは、いまたぶん拘置所で公判待ちだと思うよ」
「公判待ちか……」
「なぜ、彼が殺人を犯したのか、本当に人を殺めたのかを知りたければ、公判を傍聴するしかないの。後は弁護士をつまかえて聞き出すとか」

 弟の気持ちはよくわかる。心配する気持ちと信じたくない気持ち、どうして ?という疑問……。私自身も20代のころに、中学時代の友人が逮捕され、拘置所にいる彼と、ひんぱんに手紙のやりとりをしていたことがある。「そんなことをするやつじゃないのになぜ?」「どうしてそんなことに」と思いつつ、はっきりと聞けぬまま、手紙をやりとりしていた。まさか、アイツが……って気持ちなんだよね。弟は。

 いま、弟ができることはほとんどない。友だちが人を殺したことはショックだろうが、理由は何であれ、罪は償わなければならない。

「オマエにとって大切な友だちであるならば、いまは親御さんに電話をかけて『僕ができることがあったらいってください』というだけでいい。罪を償って刑務所から出てくるのを待てるのなら、なにも急ぐ必要はないよ」

 人生は長い。弟にとって彼が本当の友だちなのか、ただの知り合いなのか。それはきっと何年も後になってからわかるはずだ。

「ところで、アネキ……」
「ん?」
「逮捕とかこう留とか、やたら詳しいね」
「……(苦笑)」

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ささやかな宴会

 先日、仕事の谷間でちょっとだけ時間が空いたので、ここぞとばかり吉祥寺へ出かけ、酒を飲んできた。メンバーは友人あっくんと夫、娘、私の4人。夜の帳が下りると同時に店へ入り、鳥手羽揚げ4人前、ビールのピッチャー、こどもびいるを注文。スパイスの効いた、揚げたての手羽先揚げをむさぼりながら、ビールを飲んでいると仕事でコチコチになった頭がゆっくりと溶けてくる。ああ、いい感じ。あまりに気持ちがいいので、手羽先にかぶりつく娘をからかってみる。

「手羽先、おいしい?」
「うん」
「皮がパリパリでおいしいよね」
「うん」
「それ、鳥肉なんだよ」
「知ってるよ」
「保育園で飼っている烏骨鶏(うこっけい)だよ」
「え……」

 娘、ドン引き。手羽先を持ったまま、固まっている。そりゃ、そうだよね。烏骨鶏当番とかいって毎日、エサやりを手伝っているもんね。ああ、ごめんごめん。冗談がキツすぎた。

 ひと通り、飲んで食べて満足した後は、いせや本店へはしご酒。2階の座敷に陣取り、焼き鳥と焼酎でまったり過ごす。あまりに気持ちがいいので、焼き鳥にかぶりつく娘をからかってみる。

「焼き鳥、おいしい?」
「うん」
「お肉がやわらかくっておいしいよね」
「うん」
「それ、鳥肉なんだよ」
「知ってるよ」
「保育園で飼っている烏骨鶏(うこっけい)だよ」
「え……」
 
 あー、ごめんごめん。ママ、ちょっとホロ酔い。

 それにしても、いせや本店はあいかわらずグダグダな雰囲気で、ここで飲んでいると「オレの人生、これでいいのか」とか「真っ当にならなきゃ」みたいな、哲学チックな気持ちになるから不思議だ。マクドナルドのスマイル0円を見習え、と思うほどの愛想の悪さとか、絶対に妖怪としか思えないおばあちゃん店員とか、公害に匹敵する焼き物の煙とか、ドドメ色のカウンターで背中を丸めて焼酎をすするオッサンとか、カオスっぽい空気が、人生を考えさせているのかもしれない。ま、そんなことはどうでもよくって、おばちゃん、ジャンボシューマイまだ?

 いつまでも飲んでいたかったけれど、あまり遅い時間に子どもを連れ歩いていると、いせや本店近くの交番でおまわりさんににらまれてしまうので、早々に帰宅。風呂も入らずに寝たところ、髪から焼き鳥の匂いが漂ってきた。うん、いい夜だ。

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父の威厳(母バージョン)

 我が家では先日ちょっとした事件があった。それは気が遠くなるほど仕事が重なっていた3月末のこと。以前から娘と約束していたこともあり、なんとか1日だけ都合をつけて遊園地に行ってきた。遊園地で遊び、隣接する温泉でくつろいだ後、帰宅のためにモノレールで立川へ向かう。車内は4人掛けのボックスシートで、ポツポツと人が立っている程度の混雑ぶり。

 遊園地の最寄り駅からモノレールに乗り込み、夫と娘の3人でボックスシートに座る。隣のボックスには20代の女がひとり。豹柄のパンプスを履いた、だらしない雰囲気の女だ。

「絶対に〜、あたしのこと好きにさせてやる〜」
「あんな女よりも、あたしのほうが彼のこと好きだよ〜」
「そうそう〜、モノにしてやるって感じ〜」

 携帯電話を片手に、なにやら大声で話している。見た目同様、しゃべり方もだらしなく、しかも話しているのは「好きな男をどうモノにするか」という、キャバクラ通いのオヤジみたいな内容である。おまえ、いまここで話す必要があるんか? 車内のみんなに聞かせる必要があるんか?

 あまりのバカ女っぷりにあきれていると、娘が小声で「ママ〜、電車で電話はダメなんだよね?」といった。そう、ダメダメ。よくないよねえ。日頃、電車に乗るたび、娘には少しずつマナーを教えてきた。うるさくしちゃダメだ。降りる人が先。お年寄りには席を譲りなさい。携帯電話は迷惑だからいけない。なのに他人がすぐ横でマナー違反をしているのに、知らん顔をしていていいものか? 他人はいいけれど、あなたはダメでいいのだろうか? しきりに「ねえ、ダメなんだよね? よくないんだよね?」と問う娘。さて、どうしたものか……。

「携帯電話、うるさ〜い!」

 確実に聞こえる声で、注意をしてみるが、女は知らん顔で電話を続ける。もう1度「携帯電話、うるさ〜い!」といったあたりで、車内の人々が振り返る。ああ、見ているよ。みんな。でもなあ、かあちゃんの威厳を保つためには、ちゃんと注意をしないとダメなんだよ。見て見ぬふりはできないだよ……。

 絶対に聞こえているのに、シカトする女。あいかわらず、話し続けている。娘は私と女の顔を交互に見ながら、事の成りゆきを見守っている。……とそのとき!

「うるせえ! 電話やめろ!」

 車内にこだまする夫の声は、電車が通ったときのガード下に匹敵する100デシベルはあったはずだ。静まり返る車内。あわてて電話を切る女。なぜかうれしそうな娘。あの温厚だけが取り柄の夫に何があったんだろうか?

 立川に到着し、電車を降りたとたん、娘は興奮した様子で「パパ、すごいねえ。怒ったらこわいねえ」と私にささやいた。そうなんだよねえ。パパってさ、ふだんはママに怒鳴られっぱなしなんだけどねえ。すごいね、パパって。いざというときは頼りになるねえ。

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父の威厳(父バージョン)

※はじめに 「父の威厳(母バージョン)」からお読みください。

 車内で堂々と電話をかけている女を見て、娘が「ママ〜、電車で電話はダメなんだよね?」といった。そう、ダメダメ。よくないんだ。でもなあ、注意しづらいしなあ。日頃、マナーを教え込んでいる娘の手前もあるし、放っておくわけにはいけないよなあ。うーん、どうしよう。あ、やべえ。ママがイライラし始めた。まゆ毛が寄って、口がヘの字になっている。ああああ、隣の女より、こっちのほうがやばいよ。ママがキレるとスゲーからなあ。やばい、やばすぎるよ。

「携帯電話、うるさ〜い!」

 来た! ママがキレた! ああ、もうオレには止められねえ……。娘も乗客もポカーンとしている。なのに、隣の女は知らん顔だ。おまえ、うちのかーちゃんの怖さを知らねえな。装甲車女って呼ばれているんだぞ。シカトすんなよ。謝るなら今のうちだぞ!

「ケ・イ・タ・イ電話、うるさ〜い!」

 うわあああ。レベルアップしているよ。「・(ナカグロ)」入り! やべえ。次は手が出るかも。もももももう、いい加減に電話切ったほうがいいっすよ。あんた。あ……。にらんでる、にらんでる。ママがオレをにらんでいる〜! そうだよね、そうだよね。知らん顔はいけないよね。はい。このまま電車を降りたら、何いわれるかわかんねえ。男のクセに注意のひとつもできないヘタレ、って怒鳴られるよ、きっと。どどどどどうしよう。ゴクッ(つばを飲み込んで)。

「うるせえ! 電話やめろ!」

 車内にこだまするオレの声は、電車が通ったときのガード下に匹敵する100デシベルはあったはずだ。静まり返る車内。あわてて電話を切る女。なぜかうれしそうな娘。そして、満足げに微笑むうちのかーちゃん。

 立川に到着し、電車を降りたとたん、娘は興奮した様子で「パパ、すごいねえ。怒ったらこわいねえ」とママにささやいた。いや、違うんだ。隣の女に注意したのは、ママがものすごく怖かったから。あのまま、電車を降りていたら、パパは生きて帰れなかったんだ。娘よ、ごめん。パパはママが怖いんだ。

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夫婦の在り方

 いま、わたしは変わろうとしている。
 それは夫婦の在り方を再確認する術となろう。
 いま、わたしは夫を知ろうとしている。
 深く、そして真剣に……。

 なんだか辛気臭いポエムではあるが、あながち間違っていない。結婚7年目にして夫を理解しようと努力している。コトのきっかけは夫が引き受けた「鉄道マニア向けドリル」だ。そもそもこの仕事、私の友人であるライター兼エディター兼女社長の理恵姐さんから来た話だ。

「ねえ、おたくのダンナ、確か鉄オタだったよねえ」
「そうだよ。家計にとってはクソの役にもならん趣味だけどな」
「知り合いの編集者が鉄オタを探しているんだけど」
「ライターじゃなくて、鉄オタのカメラマンでいいの?」
「いいのいいの。いままで撮影した鉄道写真のフィルム代ぐらいにはなるよ」
「じゃ、やらせる(笑)」

 そんなわけで引き受けたものの、夫はあくまで「鉄道写真を撮るのが好きなカメラマン」であって、ライターじゃない。ドリルの問題づくりをしても、文法から言いまわしまでがメチャクチャなので、必然的に私がチェックしている。しかし、文法や言いまわしを正しくするためには、使われている言葉の意味を正確に知る必要があり、ものすごい勢いで夫を質問攻めにすることとなる。

「車籍はあるけど本線走行ができないっていうのはどういう意味?」「半室グリーン車って?」「元空気溜管の引き渡し改造ってナニ?」

 夫はハアとため息をつくと「そもそも車籍っていうのは法律上、本線の走行を行なうために鉄道車両の登録を行なうことをいい、車籍はまだあるものの、修理不可能だったり、すでに古くなって走行できない車両を“車籍はあるけれど本線走行ができない”というんだ。半室グリーン車っていうのは、グリーン車の需要があまり見込めない路線で車両の半分を普通車両に改造したものをいい、主に……」とイッキに語りはじめた。その様子はココリコミラクルタイプに出てくる「夢のない男」そのもの。 私の隣にココリコの田中がいる〜! 長ゼリフを語っている〜! と思ったとたん「ブフッ」と吹き出してしまった。

 結婚して以来、いや……夫と知り合って以来、こんなに夫の「鉄ネタ」を真剣に聞いたことはあっただろうか? 確実にない。夫が鉄ネタを語ろうとしたとたん「意味、わかんねー!」と一喝していた私が、いまは彼のことばに耳を傾けている。嫌々ながらも会話をする必要に迫られた私たちであったが、なんだか、いままで以上に絆が深まった気がする。もうこれは仕事なんかじゃない。夫婦の在り方を問う試練なのだ。

 この仕事が終わるころ、私はすっかり鉄ネタに詳しい女になっているだろう。たぶん、それはきっと「家計にとってはクソの役にも立たない」と思うが……。

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血は水よりも濃し

 男勝りでがらっぱち、喧嘩早くて波瀾に富んだ人生を歩む。生真面目で無口な父親と、明るくて家庭的な母から生まれたにしては【何かが違う】ような気がしてはいたのだが……。

 父と母と弟の血液型はA型、私はO型……。しかも両親が「多摩川を散歩していたときに、段ボールに入ったお前が流れてきたんだ」などと作り話をするため、血液型についての知識をロクに持っていなかった私は、自分を「本当の子じゃない」と信じていた。父はバツイチで母と結婚。だから「私は前妻の子なんだ」と納得する。

 高校生になってもそんなことを信じている私を見て、あきれた母が戸籍謄本を取り寄せた。そして、このくだらない「薄幸の少女」物語は終わりを告げたが、それでもただ何となく【両親と似ていない部分】を感じとっていたのである。

 ……そして昨日、ひょんなことから自分のルーツを知ることとなる。親戚のおじと父との会話で、愛人と九州に住んでいた祖父の話が出てきた。「ところで、おじいちゃんはいつごろ家を出たの? 愛人を作ってから? それとも他の原因があったの?」と聞いたところ、小一時間に渡って鶴男(おじいちゃん)の半生を聞かさせる羽目になった。

 鶴男は戦前、弁士(無声映画の語り手)や遊廓の用心棒(地廻り)などもしていたそうだ。地廻りとはいわば、遊廓周辺をごろつくチンピラみたいなもの。女にはモテるが、年中喧嘩ばかりの生活を送っていたという。そんな鶴男にも好きな女ができ、私の祖母と結婚する。そして、父が生まれ「いつまでもこんな生活は続けていけない。カタギになろう」と足を洗った。しかし、しょせん町のチンピラだ。工場に勤めたものの、長続きせずに辞めてしまう。

「弁士をやっていただけあって、口がうまいんだから商売でもやれよ」

 そんな誘いに応じて始めたのが、地方を転々とするテキヤの仕事だ。戦後、全国的な組織であった全日本飯島連合会(現在の飯島会)に身を置き、盛り場などでさまざまなものを売っていたという。

「足を洗ったのに、結局ヤクザになったわけ?」

 そう聞くと父とおじは「実はそうだったんだよ」と苦笑いをした。宴会があると、殴り込みを警戒して座布団の下にドスを忍ばせながら酒を飲んでいた鶴男。幼いころからほとんど家にはおらず、父が17歳のときに博多に店を構えたきり、東京に戻ることはなかった。そして、その後は愛人とともに暮らし、お骨になって帰ってきた。

 酒、博打、女、喧嘩……。わずかな金だけを東京に送り、好き放題の一生を過ごした祖父。そして、そんな祖父とは違う人生を歩もうと、夜学に通い警察官になった父。真面目で努力家の父の血を引く私が、なぜヤクザなライター稼業をし、酒に目がない豪快な人生を歩むのか。「なぜ両親と違うのか」「いったい誰に似たのだろう」という長年の疑問に、ようやく合点がいった。鶴男の血を受け継ぐ女、それが私なのである。

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屁は死の香り

 私の父は5人兄弟の長男。私が中学生だったころ、祖母が「歳をとってひとり暮らしだと心細い」といいだしたため、母屋を壊して家を建て、同居することにした。祖父は父がまだ成人する前に愛人と逃げ、死ぬまで九州で暮らした。そんな苦難の人生を歩んだせいだろうか、祖母はとにかく気が強い女だった。

 その鼻っ柱の強さは近所でも有名で、線路をへだてた町で親戚が道を訪ねたところ「ああ、あの気の強いばあさんか。何の用事かしらないけれど、訪ねていくなんて大変だねえ」といわれたほどだ。結婚して15年もの間、気ままに暮らしていた母が、そんな祖母とうまくいくわけがなく、家が完成したと同時に「同居」はご破算、祖母は同じ敷地の別棟で暮らすこととなる。そして、嫁姑の戦いはその後、祖母が死ぬまで続いた。

 そんな気の強いばあさんがある日、ポックリと死んだ。胸が痛いといいだして、近所の医院に行ったのだが、待ち合い室でバッタリ倒れ、そのまま帰らぬ人となった。同居して以来、母の泣く姿ばかり見ていた私にとって、祖母の死は悲しいものではなかった。ああ、死んだの。ふーん。という感じだ。母を憎み、父を憎み、それだけでは物足りず、孫の私に対してもチクチクと嫌みをいっていた人だ。うれしかったわけではないが、ああやれやれ、これで嫌なことから開放されるというのが正直な気持ちだった。

 通夜の晩、クタクタになった私たち家族は、風呂に六一〇(むとう)ハップという入浴剤を入れて疲れを癒した。六一○ハップは硫黄が原料というだけあってニオイがすごい。まさに屁のニオイ。風呂場だけでなく家中に充満するほどの威力だ。しかし、どんな入浴剤よりも体は温まり、疲れも取れる。だから「もうダメだ。疲れて死ぬ〜」というときだけに使う、最終兵器なのである。

 そして、告別式の日……。葬儀を済ませた私たちはお坊さんとともにタクシーに乗り込み、火葬場へ向かった。助手席にお坊さん、後ろには私と母、弟が座る。その日は真冬だというのに、まるで春のように暖かい日だった。車内の温度が上がるにつれ、不穏な空気が流れる。……? なにこのニオイ。

 同じく、異様なニオイに首をかしげていた母は「あっ」という顔をして、私を見た。そして、お坊さんに気づかれないよう、何かを伝えようとしている。……ん? 胸元? 喪服の胸元に鼻を突っ込んで、モワ〜ン(手で湯気が出ているようなジェスチャーをしている)。 モワ〜ン? あっ! ああああっ!

 湯上がりにシャワーを浴びたにもかかわらず、私たち親子3人からは六一○ハップのニオイが漂っていたのだ。サンサンと降り注ぐ日射しに、定員いっぱいのタクシー。しかも、窓を締め切ったまま……。あわてて窓を少し開けたものの、タクシーの車内は屁の香りで充満していた。

「屁のニオイがする……」
「オレじゃない……」
「じゃ、誰だ……?」

 お坊さんと運転手さんはそう思っているはず。そんなことを考えたとたん、ものすごい勢いで笑いの神様がやってきて、私の体に乗り移った。

 ブフッ!

 笑いをこらえたら、口から屁みたいな音が出てしまった。もう、もうダメだ……。ますます、屁をこいたと思われる。笑いが止まらず、母はすでに涙目になっていた。押さえても押さえても出てくる笑い声。親子3人、死に物狂いで笑いを押さえようとするも、相乗効果でよりひどい状態に……。泣きマネでごまかそうとも思ったが、そんな小手先のごまかしでは、どうにもならないところまでいっていた。

 火葬場に到着しても、思い出し笑いが次々と私を襲ってくる。花をたむけるときも、お坊さんのお経を聞いている最中も、親戚が集まって話しているときも……。ばあさんの葬式で、狂ったように泣き笑いをする孫。六一○ハップの風呂に入るたび、思い出す事件である。

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伝説の男

 母が顔なじみの業者に風呂場のリフォームを頼んだ。25年も不動産屋で働き、空き部屋のリフォームでたくさんの業者と取引をしていた母だが、なかでも内装を手掛けるM氏はその人柄やまじめな仕事ぶりで、厚い信頼を置いている。直腸がんをわずらい、会社を退職してからも実家の修繕やリフォームはすべてM氏に頼んでいた。30代後半で小さな工務店の社長をしているM氏は、人あたりもいいが男気もある。義理を受けた人にはとことんつくす、というような、一本筋の通った男なのだ。

 リフォームを計画した当初、勤めていた不動産屋がらみの義理で、母はM氏ではなく他の業者に発注しようと考えていた。それを聞いた私は「退職金もボーナスもなく25年もの間、週に1度きりの休みで働きつづけた上に何の義理があるというの? M氏に頼まないのであればリフォームは反対。他の業者がどんな仕事をするかもわからないのに、それでも頼む?」と猛反対。ほどなくして、M氏に発注をしたと聞き「彼ならきちんとやってくれるはずだ」と安心していた。

 材料費や職人の工賃を差し引けば、自らの儲けはほとんどない状態だというのに「○○さんには長年、お世話になっていますから、ぜひやらせてください。きっちりやりますから」と逆に頭を下げる。洗面所のクロス張りやフローリング敷き、換気扇取り付け、階段のカーペット張り替えまでサービスでしてくれるという。たまたま、大工仕事の原稿を書いていたこともあり、ちょくちょく実家を訪れて工事の様子を見ていたのだが、たくさんの職人を監理し、細部まで気を使っているのがよくわかる仕事ぶりだった。

 ……そして、リフォーム最終日。その日は階段のカーペットを敷き直す作業が予定されていた。前日、M氏は「接着剤を使うので、明日はお出かけしてください。匂いがすごくて頭が痛くなりますから」といい、「アナタは大丈夫なの?」と心配する母に「自分は慣れていますから」と笑っていた。

 朝からひとり、作業を始めるM氏。母はいわれた通りに外出し、私の家にやってきた。そして午後1時ごろ、彼の携帯に電話をかけ、作業の進行状況を確認する。

「あ、作業はどんな感じ?」
「あと5〜6段で終わります。午後3時ごろには家に入れますよ」

 そんなやりとりをし、母は3時になるのを見計らって実家に戻っていた。家につき、玄関のドアを開ける。その瞬間、ものすごい匂いが鼻をつき、母は一瞬めまいを起こした。……この匂い、普通じゃない! 嫌な予感を抱きながら玄関に入ると、うすぐらい階段の下でM氏がうずくまっているのが見えた。

「ちょっと! アンタ何やってんの!」

 大きな怒鳴り声に、M氏はハッと我にかえる。母は窓という窓を開け、M氏を抱えて玄関先に引きずり出した。

「しばらく外にいなさい! そこに座って!」

 M氏はカーペットの接着剤に含まれる有機溶剤(シンナー、トルエン)の急性中毒になっていた。職人仲間でも急性中毒症で死んだ人がいて、その危険性は重々承知。しかも「窓を開けなきゃ」とわかっていたにもかかわらず、そのことすら忘れてしまうほどラリってしまったという。あと数時間、発見しなければ急性中毒症による呼吸困難で死んでいたはずだ。

 母が発見したとき、M氏は張り終えたカーペットの上に接着剤をドボドボと垂らし、ひたすらネリネリしていたらしい。午後1時に電話をしたことも覚えておらず、自分自身どうやってカーペットを張ったのかもわからないと話していた。

 翌日、私が実家にいると、M氏が訪ねてきた。母と私が「いい歳してラリってんじゃねーよ!」とからかうと、M氏は「女房子ども置いて、シンナー中毒なんかで死ねないっすよ」と苦笑い。その日以来、うちの家族はM氏のことを「伝説の男」と呼んでいる。

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まったりバーベキュー

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 心身ともにクタクタになったときは「ゆたかな自然」「うまい飯」「うまい酒」に限る。みなの者たちがあくせくと働いている平日に保育園も仕事も休み、あっくんも誘って4人でバーベキューをしてきた。前日の、しかも夜9時すぎに「明日、バーベキューしたくね?」といい出し、昼過ぎからノソノソと公園へ向かう。なんとも「まったりとしたバーベキュー」だ。

 そもそもバーベキューというものは何日も前から計画をしたり、大所帯でやるものと思いがちだが、気合いを入れて準備をすると、片付けも大変だし、雨が降っただの、早起きしなきゃだの、面倒くさくなる。当日、起きたときに空を見て、適当に買い物をし、最低限の機材で、少人数でやるのがいちばん気楽。酒なんて台所にすっ転がっているやつを寄せ集めれば充分なんである。

 今回もそんな感じで、押し入れにしまったあったグリルと調理道具セットを引っぱりだし、公園へ向かう直前にスーパーで買い物。散歩のご夫人が横切るだけの閑散としたバーベキュー場で、肉をジウジウと焼きながら、シャルドネやビール、ベトナム焼酎、泡盛を飲む。牛もも肉のかたまりは塩とこしょうだけでジックリと焼き、分厚く切ってほおばる。あっくんが通販で購入したホルモン焼きは野菜と一緒に炒めて食べた。冷蔵庫から持って来たきゅうりはスティック状に切り、岩手のおばちゃんが作った南蛮みそをつける。娘はどんぐりと枯葉拾いに夢中だ。ああ、おいしい料理おいしい酒おいしい空気がカラダにしみる……。

 あっくんは昼酒が効きすぎて、2回も酒をこぼしていた。自分の腕に。びしょびしょだよ、アンタの腕……。しかも、ものすごい千鳥足なので娘に笑われていた。まさにドラマに出てくる酔っ払い。千鳥足の見本みたいな(笑)。

 ものすごく贅沢な平日の午後を過ごし、心身ともにリフレッシュ。ああ、もう仕事なんてしたくねーよ!

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刺し殺す

 仕事で調べものをしているうち、なぜか怪し気なサイトにたどりついた。どうやら児童ポルノばかりを紹介するアダルトサイトらしい。いかがわしいキャッチコピーとともに、幼い子どもの裸体を映した画像サムネイルが
紹介されている。娘を持つ母親にとっては神経を逆なでし、吐き気すら覚えるようなサイトだ。

 画像サムネイルのひとつに、青いビニールプールで遊んでいる少女が映っていた。学校の校庭らしい場所で、裸のままプールに入っている。ほんの少しうちの娘に似ているじゃないか。同じ年頃だろうか。訳もわからないまま、こんな風にビデオで撮影され、性の対象として売られているなんて……。盗撮なのか、それとも金のために親が子どもを売ったのか?

 私はいたたまれない気持ちで、その画像をクリックしてみた。キャッチコピーには「金のために親が娘を12万円で売った! あどけない5歳の無修正ビデオ!」と書かれている。無料サンプルのボタンをクリックすると、動画が始まった。シーンは学校の校庭。カメラが少しずつ青いビニールプールに近づいていく。うつむきながらおもちゃで遊ぶ少女の身体を、カメラはなめまわすように映していく。

 あっ!

 カメラに顔を向けた少女を見て、私は思わず叫んだ。それはまぎれもなく私の娘だった! カーッとアタマに血がのぼり、身体は怒りに震える。いったい誰がこんなことを!

 そのとき、サンプル動画は娘のかたわらにいた撮影スタッフを映し出した。照明や音声、見たこともない男たちのなかに、たったひとりだけ見覚えのある男がいた。……夫だ! あの野郎、金のために娘をこんなことに利用したのか! 娘にこんなことをさせて、素知らぬ顔をしていたなんて! 最低だ! 殺してやる!

 夫はとある広告の撮影に出かけている。あと1時間ぐらいで帰ってくるだろう。家に入ったとたん、まずは問いただし、認めたところでぶん殴ってやろう。そして、包丁で刺し殺す。それでもきっと私は、腹の虫が収まらないだろう。

 ……そんな殺人計画を立てたところで、私はハッと目を覚ました。寝汗をビッショリかいている。……夢だった。締切りの原稿を書き終え、娘と一緒に昼寝をしていたのだ。暑さで寝苦しかったため、眠りが浅かったらしい。

 本当に広告の撮影に出かけていた夫はほどなくして帰ってきた。夢の話をし「あんたを刺し殺すつもりだった」と告白すると、彼は「うーん」といって黙り込んだ。「バッカじゃねえの」と笑うだろうと予測していた私は拍子抜けした。まさか……? まさか正夢だったらどうしよう……。

「まさか、心当たりがあるんじゃないよね」

 おそるおそる問いただす。すると夫は「あきれて何もいえなかったんだよ!」と怒り出した。ああ、よかった。私の見る夢はいつも、異常なほどリアルだ。子どものころ、見た夢を話すと母は「よくそこまで細かい設定で夢が見られるわねえ」とあきれかえっていた。心臓に悪いうえに、夫婦仲まで危うくなりかねないような夢。おちおち昼寝もできたもんじゃない。

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多摩川競艇花火大会

DSCN4317 25日に予定されていた多摩川競艇の花火大会は、台風で翌26日に延期。夫と娘、私の母、親友あっくんとともに出かけてきた。昨年に続いて2回目の見物。台風一過の晴天で丸一日、太陽が照りつけたアスファルトは夜になっても熱がこもっていて、シートを敷いて座り込むと死ぬほど暑い。あっくんは私の母に「オンドルみたいですね」と話しかけていた。お前はオンドル経験者なのか、北朝鮮じゃあるまいし、と問いつめたい気持ちだったが、せっかくの花火見物だ。適当に笑っておこう。

 休憩を含めて約1時間、1,000発の花火を楽しんで帰宅。その夜、娘は「ポーン」という音の屁をこきながら「お尻から花火の音がする!」とゲタゲタ笑っていた。

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混んだ車内で何が起きるか

 昨夜(つか、もう一昨日の夜だな)は、地震のせいで夫が戻らなかった。舞浜のホテルで撮影の仕事があり、終わったのが夕方4時すぎ。機材を片付けて「さて帰ろうか」と思った瞬間、地震が起きた。普段ならクルマなのに、よりによってこの日は電車。深夜12時近くまで京葉線が止まっていたので帰るに帰れず、ホテルの従業員休憩室で夜明かししたのである。

 私は小金井から一歩も出ず、娘と盆踊りに出かけ飲んだくれていた。夫が帰宅難民だというのに、こっちは東京音頭&炭坑節。ノンキなもんだ。

 それにしても地震の後はどこの駅も人があふれ、復旧した電車も死にそうなほど混んでいたらしい。他人と他人が密着するのはタダでさえストレスだというのに、通勤電車以上の混雑だと相当疲れるはずだ。ましてや夏休み最初の週末。小さい子どもを連れた人はさぞ大変だったろう。

 旅行へ行った日、私たち親子は通勤時間帯の中央線に乗って新宿へ向かった。覚悟していたほどの混雑はなく、娘も大人たちにつぶされずに立っている。ああ、よかった。この程度なら大きい荷物を持った私たちでも、ヒンシュクを買うことはないな。……そんなことを考えたそのとき、隣に立っていた夫が口を開いた。

「ゆうべ寝るときにふと心配になったんだ」
「なにを?」
「電車が混んでいたら大変だなって」
「子連れで大荷物だしねえ」
「いや、そうじゃなくてお前が……」
「は?」
「痴漢にあったらどうしようって……」
「ハァ?」
「お前が痴漢されたらどうしようって」
「バッカじゃねえの?」
「ちょっと心配でさぁ」
「若い娘ならいざ知らず、こんなババアのケツを触りたがると?」
「……(苦笑)」
「触りたいならどうぞどうぞって感じ」
「そうかぁ……」
「だいたいねえ、私が何人の痴漢を捕まえたと思ってんの? 30段以上の階段を転がり落ちて骨折したのが1名、電車から引きずり降ろしてホームで袋だたきにしたのが3名、大捕り物の末に現行犯逮捕したのが1名。痴漢されたらそれこそストレス発散でボコッてやる」
「で、でも……。そんなことをしていたら9時半のスーパービュー踊り子に乗り遅れちゃうよ……。お弁当も買わなくちゃいけないし……」

 あのねえ、そういう問題じゃないんだけど……。だいたい、こんな会話を他の乗客に聞かれるのもはずかしい。妻が痴漢にあわないかを心配する気の弱そうな夫、そしてその横で武勇伝を披露する「いかにも強そう」な妻……。ああ、はずかしい。

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はっしゃしま〜す!

DSCN3629 4月末、開通前だと気づかぬまま、40分も来ないバスを待っていた私たち親子であったが(参照/ 娘と私の40分)、ようやくリベンジ乗車を果たした。先週末、友人あっくんと武蔵小金井の焼き鳥屋で待ち合わせをしていたので、親子3人バスで出かけたのだ。

 午後7時。外はまだ夕暮れ、我が家はこれから酒盛り、というのに、小金井市のコミュニティバス「CoCoバス」はもう最終便(はやっ!)。真っ赤に光る行き先表示板を横目に乗車する。ひとり100円なり。

「東小金井駅からのバスとは仕様が違うんですね」

 イスに座ったとたん、発車待ちの運転手さんに話しかける夫。仕様ってなんだよ、おい。

「ええ。新しいバスと古いバスで微妙に違うんですよ」
「へえ。床のデザインも違いますよね」
「ええ。これは古いほうのバスなんです」
「通路の幅も違う気が……」
「少しこっちのほうが広いかもしれません」

 盛り上がる夫と運転手。さすがは鉄オタだけあって見るところが違うな、夫。バスの仕様なんかじゃなく、たまには女のケツを凝視してみろ。

 一方、娘は車内の時計を凝視しながら、ひとりアナウンスの練習。さすが鉄オタの娘。やることが違う。

「ななじ、じぇろじぇろふんになりましたぁ! はっしゃしま〜す! きをつけてくだしゃ〜い! つぎは〜、むさしこがねい〜、むさしこがねい〜!」

 ……着いちゃうのかよ(笑)。

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子ども×子ども=想像以上

DSCN3202 書かなきゃならない原稿がいくつもあるクソGWだというのに、夫の姪っこが泊まりに来た。朝6時まで原稿書きをして仮眠をしていると「おばちゃ〜ん! 起きなよ〜!」と姪っこの腹上ダイブ。夫と娘が駅まで迎えに行き、家の玄関を開けた直後の出来事である。調子に乗った娘も一緒にダイブ。ふたりが交互に飛び込んでくるので、さすがに寝ていられず。

 子ども×子どもの、相乗効果は想像以上だ。我が家はこの瞬間からキ○ガイ部落と化す。最初のうちは「ほらほら、静かにしなさい」とたしなめていた私であったが、半日もしないうちに「うるせえぞ、ゴルァ!」と吠えるように。しかし、そんな程度でおとなしくなるわけもなく、私の怒声に「キャア〜♥」とはしゃぐ始末。あのな、オマエら。ここはお化け屋敷じゃないんだけど……。

 ようやく2日間の大騒ぎが終わり、姪っこが帰る時間がやってきた。母親が迎えに来て「お義姉さん、お世話さまでした。ほら、まゆちゃんもお礼をいいなさい。楽しかったでしょ?」という。しかし、彼女はうつむいたまま、なんだかショボンとしている。ああ、そうか。楽しかったから帰りたくないのね。まあ、うるさかったけれど、また遊びに来ればいいよ。そんな「おばちゃんの優しさ」に包まれていた私だったが、それは甘かった。姪っこは悲し気な顔をして、母親にこう告げた。

「あのね、おばちゃんが怒ると怖かった……」

 怒られて、はしゃいでいたのは誰だよ!

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ケツの穴と親の務め

 朝5時、本日締切のweb用コラムを執筆中。2本のうち、1本を書き終えたところだ。隣の寝室では夫は屁をしながら、娘はヘソを出しながら寝ている。目クソ鼻クソならぬ、屁クソ腹クソである。夫の屁を聞きながら書く原稿はケツの穴同様、締まったものにならず。ユルユルの脱力原稿。

 ケツの話、で恐縮だが昨日、実家に「ケツの話あれこれ」で書いたおじが来た。娘と一緒に顔を出すと、GW明けにはまた入院だというのに、昼間っからビールをガブガブ飲んでいる。今月中には腹をザックリ切って直腸ガンを取り、人工肛門になる人が、だ。かわいい姪っ子である私が「少しは酒を控えろ」と忠告しているのに「じょうだんじゃねえ。死ぬかもしれねえっつーのに我慢してられっか」と飲み続けるので「だったら万が一、死んじゃったときのことを話し合っておこう」といってやった。

「葬式にはよー、たくさんの女が駆け付けるから整理券でも配ってくれ」「隠し子がいるかもしれねえから、後々のことは頼むわ」「死ぬ前にもういっぺん、彼女と一発やっておこう」

 ……当分、死にそうもないので放っておくことにした。障害を持つアッコ(娘)のためにも1分1秒でも長生きするのが親の務めだと思う。

「ケツの穴がなくなろうと、チンコが立たなくなろうと、とにかく長生きしてよ」

 私がそういうと、おじは「いやだよぉ、穴がなくなるのも、立たなくなるのも!」と半ベソになっていた。心に響くところが違うだろ……。

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母の日の悩ましさ

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 写真はおととしの母の日に、義母(左)と実母(右)に送った花束。以前はどちらかといえば「楽しみな行事」であった母の日が、結婚してからというもの、ちょっとだけ悩ましい。「一年中、花さえあれば幸せ」な実母はラクだけれど、どちらかといえば「花より団子」な義母へのプレゼントはそうもいかない。結婚当初は私なりに悩みに悩み、あれこれと送っていたが、どうも義母の反応がイマイチ。よろこんではくれるのだけれど、ちょっと的がはずれちゃったかな……と、感じたことが続いたので、それからは事前に「今年は何がいい?」と聞くようにした。

「何がいい?」と聞くと義母は「そうねえ、じゃあスイミングで着る水着がいいわ」「今年はガーゼのハンカチにして」とリクエストしてくる。裏表のない人だから、余計な勘ぐりを入れなくていいし、贈るものに悩むよりはいいけれど、リクエストされた品で義母の趣味に合うものを探すのも意外と大変だ。

 今年のプレゼントは、いま聞いている最中。気に入ってくれそうなものがすぐに見つけられる品だといいな、と淡い期待を抱きながら、彼女の返事を待っている。

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我こそがお姉ちゃん

 以前、ここで書いた、アッコちゃんが泊まりにきている。彼女のおとうさんは「ケツの話あれこれ」のおじである。育ての母が亡くなってから、施設で暮らしていたアッコが春休みで帰京。おじは彼女のために一時退院させてもらったものの、検査だなんだで病院通い。そこで「よかったら、うちに泊まりなよ」ということになったのだ。

 彼女はとても照れ屋で、話しかけてもうつむいたまま、蚊の泣くような声で返事をする。ギャーギャーとうるさい娘と一緒だとアッコが気疲れちゃうかなと心配したが、大丈夫そう。

 昨夜はみんなで銭湯へ行った。精神年齢が小学生程度のアッコに対し、娘はあれこれ世話を焼きたがる。しかし、アッコはすでに30すぎ。彼女にとっても娘は「世話をしてあげたい存在」であり、女ふたりで「我こそがお姉ちゃん」と張り合っているのだからおもしろい。3人で露天風呂に入り、のんびりしているとさっそくおせっかいが始まる。

娘  「アッコちゃん、床がすべるから気をつけてね」
アッコ「……」
娘  「熱くない? こっちのお風呂に一緒に入る?」
アッコ「……」
娘  「さ、あがって身体を洗いましょ」
アッコ「……手、つなぐ?」
娘  「?」
アッコ「すべるから危ないよ。手、つないであげる」
娘  「そうね。危ないもの。手、つないであげる」

 どっちが世話焼きなんだか、わかんねえ! 人の世話を焼く前に自分でちゃんとケツが洗えるようになれ!

 湯けむりのなか、手をつないで転ばないようにソロリソロリと歩くふたりを見ながら、なんだか微笑ましく思ってしまった。

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食らう女

 スーパーで「タラバガニ1匹まるごと」が安かったので、迷った挙げ句に購入。せっかくなので軍手装備で解体ショーをしてみた。なぜ、タラバまるごとなのか。それは娘の好物だからだ。4歳の娘はナマイキにも甲殻類フェチである。生まれて初めて、おがくずのなかでモゾモゾと動くタラバを見たとき、きっと「食べるのかわいそう」と泣くはず、と予測していた。なのに娘は、これから刺身となっていくタラバを「おいしそう。早く食べたい」と言い放ったのである。もちろん、エビも大好きでエビ料理は多めに作っておかないと、夫婦ともども食いっぱぐれる恐れがある。

 そんな女だ。金がかかってしようがねえ。

 今回購入したタラバはボイルしたものだったので、さっさと解体する。娘はまず脚を手に取り、ズルズルと身を引きずり出して食べ、しあわせそうなツラをしていた。夫も私も手を出すことがためらわれるほどの勢いで、脚を制覇していく。そして、最後にはいちばん身を取り出しずらい甲羅部分にまで手を伸ばした。

「これはさ、食べづらいところだからパパにあげなよ」
「え〜、ここ、食べたいのに〜」
「い、いや……。オレはいいよ」

 娘の迫力に圧倒され、悲し気な様子でメンチカツをつつく夫。結局、私と夫はツメの身をしゃぶる程度で終わってしまった。

「そういえば、お前と付き合っていたころ、よく日本料理屋で飲んだよな」
なぜか、私との過去を回顧する夫。それがなんだ。

「お前もエビカニが好きでさ、よく頼んでいた……」
そういや、そうだ。タラバの炭火焼きとか、伊勢海老の刺身とか。

「そのうえ、浴びるほど日本酒を飲むし」
だって、おいしいんだもん。文句あっか。

「金、かかって仕方がなかったよ」
そういう女と結婚したんだろ。

「こいつ(娘)もきっと彼氏に苦労させるんだろうなぁ」
苦労って……。

「納豆とモヤシが好物の女と結婚すりゃよかったよ!」

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ケツの話あれこれ

「ケツに火がつく」とは、まさに今の私を表現するにピッタリなことばだ。28日までに8本のコラム作成(各1,000〜1,500文字)、29日までに企業サイトで使う社員プロフィール12人分作成(各1,000文字)、4月5日までに小金井市の審議会資料作成(190項目×8項目の表)とアンケート分析(A4版50ページ)、4月7日までにインタビュー原稿作成(4,500文字)が待っている。なのに、あろうことか花見シーズンの到来。あちらこちらから花見や酒盛りのお誘いメールが続々と届き、すでにアタマの中は宴会モード。「どういう手順で仕事を片付ければ酒が飲めるのか」ということばかり考えているので、ますます仕事が進まない。バカだ。ホントに。

 ケツ、で思い出したのだが、仲のいいおじに直腸ガンが見つかった。口が悪くて飲んだくれのおじだが、気のよさは天下一品。もともと、痔瘻持ちで手術したのだが、組織検査でガン細胞が見つかったのである。昨年2月にやはり直腸ガンで母親が手術していたので、私自身はショックではなかったが、おじ本人は相当落ち込んでいる。

 見舞いにいったところ、本格的な手術を前にちょっとビビリ気味。「うちのお父さんは心臓で胸をザックリ、お母さんは直腸ガンで腹をザックリ、私も帝王切開でハラキリしたんだから、おじさんも仲間だよ」となぐさめておいた。

「ケツの穴がよぅ。なくなっちゃうんだよ」

 おじは半べそになっていう。ガンの位置が肛門に近いので人工肛門になるという。わかるよ、つらいのは。でも、一緒にメソメソしても仕方がないので「チンコがなくなるよりマシだよ」となぐさめる。一瞬、6人部屋の病室が静まり返ったように感じたのは気のせいか。姪っことして精一杯、なぐさめたつもりだったのだが……。

「そうだよな。チンコがなくなるわけじゃあるめえし。たかがケツの穴ぐれえ、くれてやる」

 おじは妙な納得をしていた。さすがはうちの家系、と満足して帰宅した。

 

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対決

 我が家に4泊したのち、弟夫婦の家に泊まっていた義父が、再び戻ってきた。夫と一緒におじ(義父の弟)の家へ泊まりに行くためだ。夫と義父が1晩、世話になるというのに、何の手みやげも用意していなかったので、栗おこわを作って持たせることにした。これなら、おじさんとおばさんが食べてもいいし、みんなで朝食にしてもいい。出がけ間際に完成した栗おこわをせっせとパックに詰める。マンションの庭から取ってきた南天の葉を飾ると、なかなか立派な感じ。

 実は先週からの風邪がひどくなり、身体中が痛いわ、セキが止まらないわでイライラしている私。そんなときに限って、義父が余計なことをいう。

「あれ? 何しているの?」
「栗おこわを持っていってもらおうと思って」
「いや、いいよ。向こうも夕飯を用意して待っているんだから」
(んなこと知ってます)
「明日、おじさんとおばさんが召し上がってもいいし」
「いやいやいや、いいよ」
「手みやげも用意していなかったので」
「じゃ、ひとパックでいい。そんなにいらんよ」
「ひとつじゃ、格好がつきません!」

 ここらへんで私のイライラが加速。

「いやいや、そんなに食べられんよ」
「せっかく作ったんだから持っていってください」
「……」
「作り立てだから、しばらく封を開けてくださいね」
「クルマは寒いんだからすぐに冷めるだろ」
(そうじゃないって!)
「湯気でビチョビチョになるんです」
「クルマで揺れたら……」
「お義父さん、出発の時間ですよ!」

 どうして「ありがとう」といえないのか。もう、うるさいったらありゃしない。具合が悪くなりそうだ。

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Suicaのオキテ

 法事のため、家族で外出をする数日前のことだ。父が母のためにSuicaを買ってきた。「なに、これ?」「お金は?」「触るだけ?」「切符は?」と矢継ぎ早に質問する母に、父は少々困り気味。それを遠巻きに見ていた弟が、仕方なく口をはさむ。

弟「これにお金をチャージしておくんだよ」
母「へえ」
弟「残金があるうちは、これだけで改札を通れる」
母「ふぅん」
弟「忘れちゃイケナイことがひとつある」
母「なになに?」
弟「改札を通るとき、年をいわないと閉まっちゃうよ」
母「ええ!? 年、いうの?」
父「そうなんだ。言い忘れると大変」
母「うそでしょ!」
弟「本当」
母「じゃ、パパも71って言っているの?」
父「言っている」
母「じゃ、あんた(弟)も毎日言っているの?」
弟「32ってね」
母「……。年をごまかしたらどうなるの?」
弟「改札が閉まって警報機が鳴る」
母「ええええっ!」
弟「絶対に忘れるなよ」

 そして外出当日。喪服姿で改札の前にたたずむ母。しばらくして、弟をつかまえて怒り出した。

母「誰も年なんて言っていないじゃないの!」
弟「みんな、小さい声で言っているんだよ」
母「ほ、ほんと?」
弟「さ、行くよ。サンジュウニ!」

 改札をさっそうと抜ける弟。続いて父も「ナナジュウイチ」といいながら通過。改札の入り口でひとり残される母。

母「ロ、ロクジュウ!」

 無事に通過してホッとする母。父も弟もニヤニヤしている。……と、そのとき。

母「ところで、年って数え? それとも満年齢?」

 母よ。物騒な世の中。人を疑ってみるのも生きる知恵です。
 父よ。世間を知らぬ母に優しくしてあげなさい。
 弟よ。親をからかうな。

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葬儀をマジメに考える

 親戚が亡くなり、この土日で通夜と告別式が行なわれた。母はいままで行なわれた親戚の葬儀同様、通夜から帰ってすぐに仕込みをし、朝早く起きて煮物や山菜おこわを作って告別式へ出かけていった。へたをすると朝から午後まで何も口にしていない遺族や親戚のため、火葬場の待ち合い室でつまめるように持っていくのだ。私自身も高校生のころから親戚の葬儀にはエプロンを持って出かけていくようになる。ときには、おにぎりや厚焼き卵を作ったり、通夜ぶるまいの席でお酒をついだりもしていた。

 今回も母は料理を持参し、お茶をふるまい、憔悴しきっている遺族の代わりにさまざまな手伝いをしていた。一方、まるでお客さまのように座ったままの親戚も多い。いい年をしたオバサンが、お茶ひとつ入れようとせずに行儀よく座っているさまを見ると、情けない気持ちになる。

 訃報を聞いてすぐ私の母は、親戚中に電話をかけて葬儀の日程を知らせた。しかし、幾人かの親戚は「出られるかどうか相談します」と答えたという。亡くなった人と確執があったとか、場所が遠すぎるという理由ではない。親戚同士の付き合いが少ないからだ。

「父の立場では甥の奥さんだけど、自分は会ったことないし」
「母から見れば、いとこの奥さんだけど、娘の私にとっては遠縁」

 そんな、付き合いの薄さがこういう返事になったのだろう。しかし、自分の親が年老いて参列できないのであれば、子どもが親の代わりに駆け付ける、葬儀ぐらいは義理でも出てほしいと思うのだ。自分とのつながりが薄くても「遺族の母と自分の母が仲良くしていた」「父の葬儀で世話になった」なんていうこともあるはず。結婚して自分の家庭を持ったとしても、それで終わりではなく、親が大切にしていたつながりは子どもが(たとえ少しでも)受け継ぐべき。そんなことを考える私は古くさい人間なのだろうか。

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ささやかなシアワセ?

DSCN2790  何年ぶりだろうか。子どもにせがまれて連れてきた遊園地。いまさら絶叫マシンやお化け屋敷ではしゃぐ歳でもあるまい。夫と娘が乗り物を楽しんでいる間、私はベンチでのんびりとながめていよう。そう思っていたのに。


 まさかこの歳で、カブト虫に乗るとは思わなかった。
 まさかこの歳で、空を飛ぶとは思わなかった。

 ママはさ、昔は裏番だったんだよ。OL時代は水商売に間違われるほどの厚化粧だったんだよ。私のケツをさわった痴漢を電車から引きずり出して、ボコボコにしたこともあった。人にはいえないこともたくさんしてきた。そんな私がカブト虫に乗ってグルグルグルグル……。

 「ああ。これがささやかなシアワセ、ってやつなんだ」と思いながらも、なぜか唇をグッとかみしめる私。

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ほめて育てる