カテゴリー「友人ネタ」の記事

忍び寄る魔の手

携帯電話に見慣れぬ番号の着信……。12年もの間、携帯電話の番号をかえていないと、年に2〜3度は「昔の知り合い」からの電話がかかってくる。

「あ、覚えてる? オレオレ」

 あのな、オレオレ詐欺じゃないんだから。どうして男というものは、何年も連絡を取り合っていない昔の女友だちに電話をかけたがるのだろうか。決まって「携帯電話の番号を整理していてさ〜」とか「手帳を見ていたら、なつかしい名前が出てきてさ〜」といいわけしながらかけてくる。こうした電話をかけてくるのは、ほとんどがまだ独身を貫いている男。結婚している男は決して昔の女友だちに電話なんてしない。わざわざ、ホコリを舞い立たせるようなことはしない、というわけだ。

 なつかしんでくれるのはうれしいけれど、結婚してすっかり肝っ玉かあさんになった私に、どうしろというのだ。先日、電話をかけてきたSくんも「結婚して子どもが産まれたんだよね。その後、どうしてる?」と聞いてきたが「元気だけど」と答えるしかない。

 Sくんは某住宅メーカーの技術職をしていた男で、ときどき新宿で飲んでいた「飲み仲間」だ。べらんめえ調のいかにも職人気質な男なのだが、会社を退社して自分で会社を興し、下請けとしてがんばっているらしい。私が結婚するころ、Sくんもつきあっている彼女と結婚間近と話していたので、とっくにいいお父さんになっていると思っていたが、どうやらその直後、破談になってしまったらしい。苦労の甲斐あって、ようやく仕事も軌道にのり、今じゃ年収1000万を超える独身男。

「金はあるし、マンションもあるけど嫁がいないんだよなあ」

 そうつぶやくSくんをちょっと励ましてみる。大丈夫だよ、キミならいいお嫁さんが見つけられるって。

「最近さあ、もうバツイチ、子連れでもいいやって思っているんだけどよう」
「ふうん」
「だから、いろいろと相手を捜しているんだけど、なかなかいねえんだよ」
「ああ、そうなんだ」
「最近の出会い系サイトには、バツイチ専門っつーのもあって……」
「は?」
「そういうところに書き込んでいる女の人っつうのは、意外と本気なんだよな」
「出会い系……?」
「メールのやりとりとかしているんだよ、オレ」
「へえ……(出会い系で嫁探しはまずいだろ、オマエ)。」
「ところでさ、そっちはまだ円満?」
「は?」
「離婚とか、はない? ワハハ」

 ……あ、そういうことだったのね。なつかしいとかなんとか、じゃなくて要は「出会い系サイト感覚」で電話をかけてきて、挙げ句の果てには「離婚したか」をチェック。たとえ、離婚して母子家庭でいたとしても、アンタと結婚するなんてあり得ないから。

「今度よう、子連れでいいから、お茶しねえ?」
「は?(ダンナはどうしろと……)」
「海とかでもいいぞ」
「……(なにいってんだ、コイツ)。」
「飲みに行くのは無理だよなあ」

 私が電話をかけている横では、風呂から上がって真っ裸で走りまわる娘と、電話の相手を気にしつつチンコを拭く夫。離婚? あり得ない。子連れで昔の男と会う? あり得ない……。

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ダメなヤツ

 有機溶剤でラリった職人の話を記事にしたところ、リアリティあふれるコメントが続々とついて笑った。私的には「昔、中毒でした。歯なしです」なんていう、ドン引きコメントを期待していたのだが、ここの読者はまっとうな人間が多いらしい。ヨカッタヨカッタ。

 ところで、へらコブラさんのコメント「知り合いが逮捕」で思い出したことがある。中学で同級生だったMくんだ。中学時代はたいして仲良くもなかったが、大人になってからは一緒に酒を飲んだり、家に遊びに来たりと長い付き合いを続けていた。Mはまつげが長くてハーフみたいな顔立ち、いくつになっても「やんちゃな男の子」みたいな男だったが、いつごろからか何やらあやしげな行動が目立ちはじめる。

 夜中に電話をかけてきて「パーティをしているから今から来いよ」という。ロレツはまわらず、受け答えは支離滅裂。素人の私ですら「てめえ、シャブ食ってんだろ」とツッコミたくなるような様子なのに「注射器でさぁ、血を抜いてラリってんだよ」などといいわけをする。

 そんな彼に嫌気がさし、しばらく連絡を取らずにいたところ、ひき逃げをして逮捕されたと友人から聞いた。あわてて彼の実家に電話をかけ、おかあさんと会う。彼女は泣きながら「いろいろと力になってほしい」とアタマを下げた。

 Mが拘置所にいる間、たくさんの手紙を交わした。検閲の印が押された白い便せんには、自分がおかした罪を懺悔することばや親への感謝の気持ちがつづられている。手紙のやりとりは実刑判決、刑務所に入るまで続いた。そして、1年半後……。出所した彼はまっさきに私の家を訪ね、世話になったとお礼をいった。そのとき初めてひき逃げだけでなく、シャブの売人としても罪に問われていたことを知った。訪ねてきたMは真っ白のスーツに白いエナメルの靴。どこからどう見たってただのチンピラだ。それでも私は優しくて気の弱いところのある、子どものころのMに戻ってくれるだろうと期待していた。

 出所後しばらくして彼から「札幌に行く」と連絡が来た。親戚の店を手伝いながら、シャブがらみの付き合いを断ち、更正したいという。おう、がんばれ。おかあさんのためにも、まっとうな人間にならないとダメだよ。

 そして2年後。たまたま取材で札幌を訪れた私は、Mに電話をかけてみた。ひさしぶりに会わない? と聞く私にMは「今日は用事があるから、夜9時以降なら大丈夫」という。仕方がないので、ホテルでひとり夕飯を取りながら、彼からの電話を待つ。9時、10時、11時……。いつまでたっても電話は来ない。部屋に戻り、彼の携帯に電話をしてみるが、電源が切られていて通じない。12時、1時……。ようやく彼から電話がかかってきた。声が聞こえないほど、大音響で音楽が鳴っている。

「ずっと電話を待っていたのに。いまどこにいるの?」
「パーティがあってさ。今から来いよ〜」

 ロレツはまわらず、受け答えは支離滅裂。以前と同じだ。酒なのかクスリなのかは知らないが、更正とはほど遠い生活をしているMに腹が立った。

「いい身分だこと」
「え? なに〜?」
「人ひとり殺しておいて、パーティだと?」
「え? 聞こえないんだけど〜」
「2度と電話するな」
「なに〜?」
「お前なんて死んでしまえ!」

 Mとはそれっきり。ダメなやつは結局、いつまでたってもダメなんだ。どんなに親が苦労しても、どんなに友だちが心配しても、ダメなんだ。そのときの虚しい気持ちは、10年以上たった今でも忘れていない。

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ある夜のメールから(終)

 ※初めての方は「ある夜のメールから」「ある夜のメールから(2)」「ある夜のメールから(3)」「ある夜のメールから(4)」からどうぞ。

 poohpapaさんからのメールには「それにしても村○武範のギャラが7万円というのは不思議な感じがする。そんなはした金で仕事を請けるのだろうか」と書かれていた。

 もっともな疑問、といえよう。カメラマンやライターが同行するのだから、タレントの懐には7万円のうちの『いくらか』しか入らないはずだ。7万円すべてがタレントのギャラだとしても、その程度の金額で東京都下の立川までわざわざ来るとは思えない。

 実はコレにはからくりがある。最初のメールに書かれていた取材申し込みのやりとりを思い出してほしい。

相手は「明後日の11時半から、フジテレビの、村○武範の『食いしん坊! ××』で取材をさせていただきたい。テレビ以外の雑誌で紹介するための費用で7万ほどかかります」と話している。

 取材申し込みの時点で、相手は「日時と時間」を指定している。私の場合、締切まで日がないときは「○日までに取材したい」「この日程しかない」と頼むこともあるが、たいていは「○日ごろはどうでしょうか」「○時ごろがよろしいですか」と聞いている。

 そこで、村○氏と取材チームはこの日、「立川近辺の」「別の店や企業に」「取材する予定がある」と推測できる。コムベトナムの前後に、すでに確定している取材先があるはず。1軒の取材で7万円でも、1日で5軒行けば35万。ページの大きさによって7万以上もあるはずだから、うまく近場をまわれば、かなりの金額を稼げるわけだ。

 翌日(取材前日)にコムベトナムのママさんが断りの電話を入れたところ、案の定「もう取り消せない」だの「村野さんが楽しみにしている」だの「手配しちゃった」だの、相当なものだったらしい(poohpapaさんがマママの横で一部始終を聞いていた。時間にして20分も粘っていたそうだ)。だって今さら「翌日の11時半」に「他の取材先の近場」で「7万円のお金を払って取材させてくれる」ような店なんて見つからないもの!

 これは詐欺ではなく、巧妙な広告営業。取材を受けて、後から「食いしん坊! ○○じゃなかった」「テレビで紹介するといったのに」と文句をいったところで、相手はこういうはずだ。

「フジテレビの、村○武範の『食いしん坊! ××』取材をさせていただきたい」ではなく「フジテレビの『食いしん坊! ××』の村○武範取材をさせていただきたい」といいました。聞き違いじゃないですか?

「テレビ以外の雑誌で紹介するための費用で7万ほどかかります」といっただけで「テレビで紹介する」とはいってません」

 こうしてある夜の事件は解決したのであった……。

(おわり)

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ある夜のメールから(4)

 ※初めての方は「ある夜のメールから」「ある夜のメールから(2)」「ある夜のメールから(3)」からどうぞ。

 取材を申し込んできたのテレビ局ではなく、出版社だった……ということを知り、思い出したのは皮膚科で見た、ある雑誌のことだった。

「雑誌の取材を受けました」

 およそ病院には似つかわしくない、こんな貼り紙に気づいたのは待ち合い室の長椅子に腰かけたときだった。本棚には子ども向けの絵本とともに、同じ雑誌が何冊も並んでいる。私はそのうちの1冊を取り出して、付箋紙の貼ってあるページを開いた。

 見開きのモノクロページに、華々しいキャッチコピーと先生のインタビュー記事。開院までの経歴や患者に対する気配りなど、それはそれは「すばらしく」書かれている。インタビュアーは女性タレントのか○うかずこ。にこやかな笑顔で先生にインタビューする様子が写真で掲載されていた。

「へえ……。見開きとはずいぶんとチカラを入れたもんだ」

 ライターという仕事柄か、素直に雑誌を見ることができない性分である。ついつい他のページを、あら探しでもするようにめくっていく。ああ、なるほど……。病院、企業、飲食店となんでもアリ、インタビューだけで構成されている雑誌か。しかも、どの取材先でもタレントやら俳優やら女優やらがインタビュアーをつとめている。要するに普通の雑誌とは違い、編集ページを装った広告記事だけで成り立っている雑誌なのだ。 そのとき、ちょうど診察室に呼ばれた私は、先生にいじわるな質問をする。

「センセ、雑誌見ましたよ。取材を受けたんですか?」
「ああ、そうなんだよねえ」
「インタビュアーがか○とうかずこさんでしたね」
「うんうん、そうなんだ」
「取材させてくださいって来たんですか?」
「そうなんだよね。それでインタビュアーはタレント3人のうち、誰がいいですかって聞くから、か○うさんがいいってリクエストしたんだよ」
「……で、取材は無料でしたよね?」
「え?」
「お金、取られたんですか?」
「え? ま、まあ」
「それって取材じゃなく、広告ですよ」
「……」
「宣伝になりますよって、何冊も買わされたでしょう」
「……」

 コムベトナムへの取材はこれと別の雑誌だが、やっていることは同じはずだ。すぐさまpoohpapaさんにメールを送り、事件の全貌を説明した。(最初のメールを開封してから約2時間18分が経過=午後11時18分)。しかしその直後、彼はいくつかの疑問を私に投げかけてきたのであった……。

(つづく)

 明日あたり&全5話で終わらせたいが、どうなることやら。19日から海行くからさぁ、その前になんとか……。

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ある夜のメールから(3)

 ※初めての方は「ある夜のメールから」「ある夜のメールから(2)」からどうぞ。

 取材時間、広告ページと2つの点でやはり怪しいと判断した私は、poohpapaさんにメールを送った。(最初のメールを開封してから約51分が経過=午後9時51分)。

「特番かも……」と淡い期待はわかりますが、ほとんどの店主はこうした宣伝効果に目がくらみ、騙されています。100%に近い確率で詐欺だと思いますので、明日テレビ局に確認してください。もしも、本当の撮影であっても、お金がなぜ必要なのか、なんの雑誌にいつ載せるのかをきちんと説明してもらうこと。本当に広告であれば「どこに載せるか、いつ載せるかわかりません」などという答え方はしないはずです。たとえば、制作会社が撮影を担当していて、局やスポンサーには内緒で裏金を集めている可能性もあります。こうした行為も詐欺ですので、気をつけてください。

 そして、poohpapaさんからの返事が届いた(最初のメールを開封してから約1時間33分が経過=午後10時33分)。彼からのメールには思いもよらない新事実が!

相手は「臨時休業しなくていい」「当日、領収証を持って行きますから現金でお支払いください」といっていたそうです。店が混んできたら逃げる気でしょうか? 取材を申し入れてきた「○○通信社」というのは実在していて、調べたところ出版社のようです。タレントを使って企業のトップにインタビューして「○○ニッポン」という雑誌に掲載しているようです。

「出版社」「タレントを使った取材」という重大なキーワード。取材を申し込んできたのは、テレビ局じゃなくて出版社だったのだ。このメールを読んだ瞬間、私はひとりの人物を思い出した。近所の皮膚科の先生である。

(つづく)

 みなさん、ごめんなさい。さっさと完結したいのだけれど、終わらない。それほど複雑な話なのだ。徹夜仕事の後、がんばって書いたので許して……。

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ある夜のメールから(2)

 ※初めての方は「ある夜のメールから」からどうぞ。

 水曜日の夜9時ごろ、poohpapaさんからのメールが届いた。それを読んだ私はすぐさま電話で、詐欺の可能性を指摘。しかし、鼻の穴をおっ広げて「それは詐欺だ」と話したものの、万が一違っていたら? 本当の取材だったら? ……という心配がアタマをよぎる。明日の朝、poohpapaさんがフジテレビに電話して、番組担当者から「そんな取材は知りませんよ」といわれたとしても、詐欺として確定するわけじゃない。約束の日に、取材を申し込んだ本人が来店し「村○は後日、取材に来ます」といいながら、てきとうな話をして金を受け取り、どこかへ雲隠れしない限り、コムベトナムのママさんを騙したとはいえない。もしも事前に通報して大騒ぎになった挙げ句、実は誤解だったとしたら私の責任は重大だ。

 とにかく冷静になって考えてみようと、poohpapaさんのメールを読み返してみる(最初のメールを開封してから約40分が経過=午後9時40分)。

相手は「明後日の11時半から、フジテレビの、村○武範の『食いしん坊! ××』で取材をさせていただきたい。テレビ以外の雑誌で紹介するための費用で7万ほどかかります」と話している。

 私はここで【あること】に気づく。通常、雑誌の取材はカメラマンとライターのふたりで行く。スチールカメラのセッティングや料理の準備、インタビュー、撤収までを行って早いときで1時間。写真点数が多かったり、インタビューのボリュームが多いときは2時間以上かかることもある。テレビの撮影で、タレントが来店するのであれば、タレント本人にマネージャー、ディレクター、カメラマン、音声、照明など大所帯であろう。しかも本当に「食いしん坊! ××」ならば、タレントと店主のからみ(同席をして会話をする)もあるから、長丁場となるはず。今は水曜日の夜9時すぎ。とてもとても【明後日=金曜日のランチタイム直前に訪れて、通常営業の店内で撮影】などあり得ないのだ。怪しい、怪しすぎる……。

 加えて、もうひとつ怪しい部分を発見する。「食いしん坊! ××」はキッコーマンがスポンサーで放映している。「テレビ以外の雑誌に載せるため」といったらしいが、雑誌掲載に金が必要なのは広告ページであり、キッコーマンの広告ならともかく、「食いしん坊! ××」の広告ページなど見たことはない。しかも、テレビで放映したものを焼き直しして、雑誌広告に使うとは考えられない。やっぱり怪しい……。

「冷静になって考えても怪しい」と結論づけた私は、2つの疑問点を挙げてpoohpapaさんにメールを送った(最初のメールを開封してから約51分が経過=午後9時51分)。

(つづく)

 なんだか「24(TWENTY FOUR)」並みの分刻み展開に! 以前書いた「僕の名前はジャック・バウアー」を思い出す……(笑)

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ある夜のメールから

 ※この話はもともと私がネタにする話ではないが、ある人からの「よろしければお使いください」との言葉に甘え、書くものである。

 数日前の夜9時ごろ『悪徳不動産屋の独り言』のpoohpapaさんから1通のメールが届いた。彼とは先日、初体面し、おいしいベトナム料理をたらふくごちそうになってきている(悪徳不動産屋と下ネタの女王)。彼からのメールはそのベトナム料理店「コムベトナム」のママさんから聞いた話に関係していた。

「コムベトナム」に取材の申し込みがあったらしい。相手は「明後日の11時半から、フジテレビの、村○武範の『食いしん坊! ××』で取材をさせていただきたい。テレビ以外の雑誌で紹介するための費用で7万ほどかかります」と話している。本人が来てテレビで紹介されるなら本物かもしれないし、大変な宣伝効果になる。でも『食いしん坊! ××』は現在、松○修造がやっているはず。テレビ取材を受けてカネがかかるって、どうも釈然としない。poronさん、裏事情に詳しければご教授ください」

 メールの内容はおおむねこんな感じ。「裏事情に詳しければ……」と私にメールを送る、というのが釈然としない気持ちではあったが、たらふくごちそうになった身だ。少しでも役に立たねばなるまい。

 まず最初、poohpapaさんからのメールを読んで思い出したのは「ライター詐欺」であった。駆け出しのころ、大手タウン誌Tの仕事をしていたのだが、取材先の飲食店でしょっちゅう詐欺の話を聞かされた。ある日、ライターを名乗る男がやってきて「タウン誌Tに掲載したい。ロケハンをしているので料理をいくつか出してくれないか」という。集客効果抜群の雑誌であったため、オーナーは「ぜひ載せてくれ」と好きなだけ飲み食いをさせてライターを帰らせた。しかし、待てど暮らせど取材の申し込みはなく、名刺の住所や電話はウソだった……という話だ。コムベトナムの件もこれと同様で、絶対に詐欺の仕業だとピンと来た。メールなんか打っている猶予はない。あわててpoohpapaさんに電話をかけ、鼻息も荒く「それは詐欺ですよ、絶対! 取材で金を取るなんてあり得ません! 明日にでもテレビ局に電話をかけて確認してください。もしも詐欺であったら、そのままにせず、きちんと通報をしてください」と話をした。poohpapaさんはひととおり私の話を聞くと「やはり変ですよね。明日、テレビ局に確認してみます。本当にどうもありがとう」と電話を切った。

 しかし……! 話はこれだけでは終わらなかった。 詐欺だと思っていた相手は実は……!(つづく)

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悪徳不動産屋と下ネタの女王

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 以前から「悪徳不動産屋の独り言」のpoohpapaさんに「ぜひ、立川でベトナム料理を食べましょう。ごちそうしますよ」とのお誘いをいただいていたのだが、なかなか都合がつかず、ようやくお会いすることができた。親友のあっくんもどうぞ、という言葉に甘えて、大食い大酒飲みペアで行ってきたのである。

 待ち合わせはpoohpapaさん&さとひろさんの御用達の「ベトナム料理/コムベトナム」。地下への階段を降りていくと、まだお客さんが誰もいない店内で、ちょこんと座っている2人の姿。あいさつをする私とあっくんを見て、poohpapaさんはきっと後悔しただろう。「こりゃ、食いそうだな」と。

 ベトナム料理はあまり縁のない私だったが、それはそれはおいしくって遠慮ひとつせず、たんまりごちそうになってきた。焼き大エビのベトナム風カレーソースを手づかみで、しかも指についたソースをしゃぶりながら食べていると、我ながら「初対面のふたりを前になんて行儀の悪いオンナなのだろう」と思ったり……。いや、行儀などを気にしていられないほど、おいしかったんだから!

 poohpapaさんはblogの記事やコメントで感じていた通り、とても優しくて繊細な人だった。ときには反感を買いかねない記事をアップしていることもあるが、あれはpoohpapaさんの繊細な気持ちと、忍耐強さの裏返しだと思う。あんなに温和な人が怒るとき、というのはよほどのことなんだと実感した。

 さとひろさんはpoohpapaさんの隣で、ニコニコとすてきな笑顔で静かに座っていた。テンション全開の私たちの話をうんうんと聞いてくれる、控えめだけど芯のしっかりした女性、という印象。

 たくさん笑って、たくさん食べて、たくさん飲んでシアワセいっぱいの一夜であった。poohpapaさん、さとひろさん、本当にありがとう。ちなみに上の写真はさとひろさんとあっくんの手。料理が来たときに撮影すればよかったのだが、すっかり忘れて食べ終わってから撮った。下の写真はお会計をしているpoohpapaさん。どことなく「ああ、こんなに……」と背中が物語っているように見えるのは気のせいか。

 poohpapaさん、さとひろさん、あっくんのblogでも記事がエントリされているので、ぜひこちらもどうぞ。

●悪徳不動産屋の独り言/人生で最高の飲み会
●猫とひなたノルン/世界でひとつの「ノルン」グッズ
●ささらほうさら/至福の宴

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グタグタなふたり

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 先日、仕事のコラムで銭湯のマナーについて書いた。明け方になってようやく完成したものの、原稿と一緒にアップするイメージ写真がない。手持ちの写真を探したところで銭湯の写真などあるはずもなく、考えたすえに出かけたのが小金井公園内の東京江戸たてもの園。ここには「千と千歳の神隠し」に出てきた湯屋のモデルとなった銭湯・子宝湯が移築展示されていて、お湯は張っていないものの、古い体重計やのれん、木桶などを撮れば「風情ある銭湯のイメージカット」の完成だ。上の写真はそのときに撮影した古い和傘屋や酒屋、仕立て屋など。いい感じの小道具が揃っていて、ずいぶんと撮りだめをしてきた。

 小金井公園へは朝10時に家を出て、自転車とCoCoバス(コミュニティバス)を乗り継いで到着。東京江戸たてもの園に入る前、友だちのあっくんに「ヒマだったら犬の散歩に来い」と電話をし、むりやり呼びつける。撮影が終わると、あっくんと合流し、木陰のテーブル席に座り、まったりとコーヒーを飲んだ。平日の午前中。静かで涼しくて、風が気持ちがいい……。ああ、なんて贅沢なんだろう。横を通りすぎるのはベビーカーを押した若い母親か、あてもなく歩くオヤジだけ。

私「平日の公園ってさ、グタグタなオヤジが多いねえ」
あ「グタグタって?」
私「ヨレヨレの服で、ぼんやりと遠くを見ている」
あ「すいません。グタグタなオヤジです」
私「グタグタなオヤジとお茶している私はなんだ」
あ「グタグタなオバサン……」

 気分がよかったのはここまで。呼ぶんじゃなかった。

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芽生えた命の選択

 15年来の女友だちからは娘ふたりの写真を印刷した年賀状が届いていた。上の娘はもう小学校5年生だという。今年の写真は友だちの顔にうりふたつで思わず大笑い。「こんなソックリになっちゃって……」という感じだ。

 実は彼女がこの子を身ごもったとき、バツイチ子持ちであったうえに、それを隠して年下の男の子と付き合っていた。ある日、彼女から「生理が来ないんだけど〜」と半べその電話が来た。ふたりで待ち合わせてドラッグストアへ行き、行きつけのスナックで即検査。トイレから「うわ〜」と叫び声がして、私とマスターはやっぱりと顔を見合わせたのである。

「どうしよう」と困惑する彼女に、私は「自分で決めなさい」「彼と相談して」としかいえなかった。彼女はカフェでアルバイトをしながら、養育費を一銭ももらわずに子どもを育てていた。もちろん、生活はギリギリ。当時、駆け出しライターで貧乏だった私とたまに焼き鳥屋へ行っては、なじみの店員に「ふたり合わせても有り金3,000円。超えそうになったら注文ストップしてね」なんてやっていたほどだ。だから、そんな彼女に「ひとりで産んで、ひとりで子ども2人を育てなさい」などといえるはずがない。

 妊娠したこと、バツイチであること、子どもを育てていることを話した年下の彼は動揺した。彼女の親は「結婚できるわけじゃないのだから、堕ろしなさい」と出産には大反対。産婦人科に中絶手術を予約したものの、当日になって「やっぱりイヤ。産んで育てる」とドタキャンした。すでに子どもを産み育てている彼女は「せっかくの命を殺すことなんてできない」という気持ちが強かったのだ。そして、親と彼氏を説得して無事に女の子を出産。現在は未入籍ではあるが彼氏と前夫の子ども、そのときお腹にいた女の子、その後生まれた女の子と一緒にシアワセな家庭を築いている。

 私はあのとき以来、困惑する彼女を「自分で決めなさい」と突っぱねたことを後悔していた。もっと親身になっていればよかった、もっと何かできたんじゃないかと。でも、今年の年賀状を見て、そんな偽善は必要なかったんだと気づく。彼女が「産む」と決めたからこそ、「育てることができた」のだし、反対されながらも「家庭を持つ」ことができたのだ。自分の道は誰かに決めてもらうものじゃない。ましてや命の選択ならなおさらのこと。

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年賀状の功罪

 男友だちからメールが届いた。10年ほど前にとある雑誌のライター、読者という立場で知り合い、仲良くなった人だ。ここ数年はお互いに結婚したり、住んでいる場所が離れていることもあって飲みに行く機会が減り、年賀状のやりとりしかしていない。そんな彼からのメールだ。


 昨日年賀状が届きました。ありがとうございます。ブログを読んでいて年賀状どうしようか悩んでいるうちに出しそびれてしまいました。

 嗚呼。読んでいたのか、これを。メールを読む限り「オレは本当にporonさんが元気なのかを知りたいのか」と悩んでいるうちに年が明けたのだと推測できる。

 この記事を書いたせいなのか、今年の年賀状は少ないように思う。本当はみんな「もういいよ、こいつは」と思っていたのだろう。私は彼に年賀状を送っていた。投函したのは30日の早朝。彼の顔を思い浮かべ「元気かい? たまには会いたいねえ」と思いながら送った。なのに、届いたのは1月5日だという。どういうことなんだ。小金井から横浜まではがき1枚を送るのに1週間もかかっていては「私はアンタが元気なのかを知りたいのだよ」という力強いメッセージが届かないではないか。これなら、年賀などと書かずに普通のはがきで出せばよかったよ。

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クリスマスツリーの前で……

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あっくん「クリスマスツリー、きれいだねえ」

娘「きれいだねえ」

あっくん「サンタさんにどんなプレゼントをお願いするの?」

娘「パパとママのおしごと!」

あっくん「。・゚・(ノд`)・゚・。 ウワァ〜ン」




 あっくんは10年来の友だち、娘も元気に実在しておりますが、この記事はフィクションです。ちなみに、カメラマンのパパとライターのママは年末年始無休でお仕事を承っております。

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キャバクラでの在り方

 独身時代、生命保険会社に勤める男友だちと飲んだときのことだ。ひさしぶりに会った彼は、腹まわりの肉が一段と増え、いかにも中間管理職、といった雰囲気。居酒屋に入り、お互いの恋人や仕事の話で盛り上がりながら、ふたりで日本酒をクイクイと空けた。

 場所は新宿、午前1時すぎ。店はもうすぐ閉店、すでに終電もない。ふたりでホテルに入るような付き合いではなかったので、タクシーで帰ろうと提案。しかし、ホロ酔い気分の彼は「まだ、飲みたい」「お気に入りのいい店があるんだ」といいだした。まあ、まだ少しは飲めそうだ。彼オススメの「いい店」へ連れていってもらおうか。

 その店は、雑居ビルの地下にあった。店へと続く階段がやたらとまぶしい。よくよく見ると、マメ電球とミラーがワッサリと並んだ階段だった。下からは、耳をつんざくほどの音楽が聞こえてくる。どう見ても「BAR」とか「居酒屋」じゃないのは明らか。不安を抱えながら階段を降りると、重厚なドアと黒服のボーイが待ち構えていた。キャバクラだった。

「ちょ、ちょっと。ワタシ、ジーンズだけど大丈夫?」
「へーきへーき」

 もはやジーンズか否か、という問題ではない。女の私が客として入店してもいいのか、という問題である。しかし、酔っ払いの彼はうれしそうな顔をしているだけだ。

「○○さ〜ん!」

 席についたとたん、なじみの女の子たちが続々と集まってくる。彼は見たこともないような、満面の笑顔で話を始めた。その横で、自分なりの「正しい振る舞い」を必死に考える私。この疎外感、ひさしぶりの感覚だ。ふと思い出しように、水割りを作ってくれるものの、キャバ嬢たちもどう扱えばいいのか困っている様子。「○○さんとは長いんですかぁ?」と聞かれ「5年ぐらいですけど」と即答し、流れる沈黙。ああ、コマッタ。

 身の置き場を悩みつつ、ふと店内のステージを見ると、いつの間にか「見られている感たっぷり」に歌う彼の姿が。あまりにも気持ちよさそうなので、声をかけずに店を出る。さようなら、○○くん。思い出をありがとう。

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感謝の夜

DSCN1208.JPG 女友だちとの時間があまりにも楽しく、そのまま家に帰るのももったいなくて、新宿駅から電話をかけて地元の男友だちを呼び出す。時間はすでに11時半だ。もう、夫と娘は熟睡しているだろう。武蔵小金井の居酒屋に入り、楽しかったことをツラツラと話すワタシに、うんうんと聞き入る彼。

「友だちと飲みに行きたい」といったら、タクシーで帰るかもしれないからと、そっと2万円を差し出した夫。「いいコにしていてね」といったら「早く帰ってきてね」と手を振る娘。夫を亡くしてつらい時期を過ごしたのに「元気にしている?」と気づかい、誘ってくれる女友だち。「いまから飲もうよ」と迷惑きわまりない酔っぱらい女を、あたたかく見守ってくれる男友だち。

 こういう人たちに囲まれているから、ワタシは元気でシアワセでいられるんだと感謝した夜。

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笑いの夜

DSCN1200.JPG 締切前日に原稿を完成させ、飲みに行く。女友だちから「ねえ、ひさしぶりに会えない?」という電話をもらい「いいよいいよ、行くもんね」と約束した日は、400字×6本分の締切前日。二日酔いでまともな原稿がかけるはずもないので、さっさと入稿。人間、目標があるとがんばれることを証明したかったんである。

 先日、編集者と行った創作和食店を予約し、明け方に原稿を仕上げて、少しだけ仮眠をとって、晩ご飯を作って出かける。ひさしぶりに会う彼女は、10年ほど前に仕事で知り合ったライターである。ワケあって昨年、未亡人になったばかりだ。あっちは未亡人、こっちは育児疲れ、おまけに締切に追われる身とくれば飲みたくもなるわけで、ふたりで黒糖焼酎をグビグビと空けた。

 飲んでいるうちに、彼女が「新橋にさ、いい立ち飲み屋があるのよ。今度、行かない?」という。いいね、女ふたりで立ち飲み。でもさ、立ち飲み屋って殺伐としていて、チャラチャラ飲めないよね。店で浮かないで、かっこよく飲みたいねえ。などと答えると、彼女は真顔でこういった。

「立ち飲み屋ってさ、背負っている人以外お断り、よね」

 未亡人がいうセリフとしては最高傑作だ。「あんたはもうすでに充分、人生の苦渋を背負っているから大丈夫」と意味不明のはげましをするワタシ。ホントにおもしろい。ひさしぶりに女同士の楽しい時間を過ごさせてもらった。

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それ以上はいうな!

DSCN0888.JPG 夫が撮影で留守、私は子守りをしながら仕事……。昨夜は「晩飯どころじゃねーぞ」という状態で、しかも夜になっても気温が下がらず、外は風ひとつない。忙しい、暑いとくればビールが飲みたくなるわけで、男友だちを誘って娘と3人で居酒屋に出かけることにした。

 駅前で待ち合わせをしていると、私たち親子の前に1台のタクシーがやってきた。男友だちである。車内灯にうつし出された彼の姿を見て一瞬、愕然とする。


 なぜなら、彼はオレンジ色のポロシャツを着ていたからだ。
 なぜなら、私もオレンジ色のTシャツを着ていたからだ。

 動揺してはいけない。そう肝に念じながら「よっ、おまたせ」「呼び出してごめんよー」とことばを交わす。居酒屋に入った私たちはすぐさまビールを頼み、娘のジュースとともに乾杯をする。あー、うまい。最高だ。

 ひとくちのビールで心も体も天国に誘(いざな)われたそのとき、彼はこういった。

「なんか、さりげなくペアルックになっているねえ。よりによって、お互いオレンジを着るなんて」

 いうな! それ以上、何もいうな! 

 地元の居酒屋で夫以外の男とペアルックで酒を飲む私(しかも、子連れ)。だれかに見られやしないかとビクビクしながらも、冷たいビールの誘惑には勝てなかった。

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ALFREXのおっさん

DSCN0767.JPG 夕飯が済んでくつろいでいるとき、携帯電話に着信があったことに気づいた。留守番メッセージを聞いてみたら、ALFREXの佐野さんだった。「アルフレックス」と耳にすると、ついついイタリアの高級ソファを思い浮かべるが、あっちは「arflex」、こっちは「ALFREX」。佐野さんはALFREXの社長で、勝新太郎の座頭市とか、七人の侍シリーズとかのフィギュアを作って販売している。ものすごくリアルなフィギュアで一躍有名になった会社だ。テレビや週刊誌なんかでもずいぶん紹介されたので、見たことのある人も多いだろう。左上の写真はいちばん最初に制作した座頭市フィギュアのチラシ。ずいぶん前にもらったやつだけど、引っぱり出して撮ってみた。

 彼とはもう10年近い付き合いだ。小柄でいっつもニコニコしていて、見るからに「人がよさそう」なおっさん。なんで知り合ったのかは別として、駆け出しライターのころは彼にたかって酒を飲んだりしていた。まだ20代でピチピチしていた私が「ねえ、今日会えない?」と電話をかけると、6歳年上のおっさんは「うんうん、いいよ。いいよ。じゃ、どこに行こうか」と飲み屋に連れていってくれたものだ。単に酒が飲みたかったけれど、相手も金もなかった私。別に飲ませてくれればダレもよかった。彼はそんなことは百も承知でよく遊びに連れていってくれた。ホントにいい人。

 私が結婚をしてから、すっかり飲みに行くこともなくなったが、年に1回ぐらいは電話で話す。もともと彼は、プランニングとか印刷などのなんでも屋(いまでもそーなんだけど)なので「○○の見積りを出すんだけど、どのぐらいの値段が妥当かぁ」と私が電話をしたり、「○○を紹介してくれそうな雑誌はない?」と彼が電話をしてくる程度だが、とぎれることなく細々とつながっている。ハタから見るとアヤシイ関係だけど、いいのいいの。つらいときや苦しいときに手を差し伸べてくれた人は大切にしないと。

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男からの贈り物

 男からの贈り物は、いくつになってもうれしいものだ。今日は男友だちが「帰省していたから」と大根と文旦(ぶんたんと読む。黄色い柑橘類)と、手づくりのモチを持って来てくれた。なんだか、品物だけを見ると贈り物というより供え物だ。

 彼はいつも帰省すると「おふくろがさ、お友だちにもあげなさいってたくさんよこすんだよ」といいながら、いろいろと持ってきてくれる。たいてい、畑で作った野菜とか手づくりコンニャクなど、田舎のお母さんらしいセレクトで、主婦ゴコロをくすぐられる品ばかりである。

 若いころはしょっちゅう、男から贈り物をされていたのに、結婚したとたん、夫は誕生祝いすらよこさない。OLのころなんか、誕生日になると会社の受付にバラの花束が届いたり、センチュリーハイアットのケーキとシャンパンを用意してくれる男がいたものだ。なんという違いなのか。

 ある年の誕生日はすごかった。男の友だちに囲まれて飲んだくれたのち、タクシーでご帰還。家の前までフラフラと歩いてくると、玄関の前に黒い影が……。なんだろうと思いつつ、近づいてみるとシクラメンの鉢植えと日本酒が置いてあった。なんだか、墓参りみたいな2点セットだ。そして、添えられたカードにはこうかかれていた。
「誕生日おめでとう。来たけれど留守だったので、しばらくクルマで待っていました。帰ったら電話ください」

 なんて健気な男なのだろうか。

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逢い引き第2弾

 連休だというのに夫が仕事だった。

「ママ〜、今日はドコ行く?」と無邪気に微笑む娘。外を見てみると、隣りに住む大家さんちの木がものすごい勢いで揺れている。寒いよ、絶対。今日は自転車しかないというのに、この突風のなか、どこへ行けというのだ。

 ため息をつきながら外を見つめる私。気分はすっかり深窓の令嬢。「じいや、外はどんな世界かしら?」「汚(けが)れたことばかりでございます。ご存知ないほうがお嬢様のため……」「そう、やはりお家がいちばんね」

 そうそう。お家がいちばんなのである。しかし、娘の執拗な攻撃は終わらない。「公園? おつかい? 自転車のる?」そんなとき、同じ小金井市民の男友達から電話が来た。「犬の散歩に行くけど一緒にどう?」まさに渡りに舟とはこのこと。完全防寒の体制で準備を整え、小金井公園へ。人工芝の丘でソリ滑りをしたり、散歩をしてたっぷり遊び、娘も満足気だ。

 この男友達とはもう10年以上の付き合いであり、今では家族で世話になっている。3人+2匹で歩く様は、どう見てもファミリーだ。犬連れ、娘連れではあるがレッキとした「夫の居ぬ間の逢い引き」状態。

 夫が帰宅したとたん、娘は「あのねえ、あっくんとワンワンと公園行ったよ。楽しかったよ」と報告。夫は「ヨカッタねえ。楽しかったんだ」と答え、笑顔で終了。いつもながらオトコとの逢い引きに寛大な夫であった。

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