カテゴリー「友人ネタ」の記事

忍び寄る魔の手

携帯電話に見慣れぬ番号の着信……。12年もの間、携帯電話の番号をかえていないと、年に2〜3度は「昔の知り合い」からの電話がかかってくる。

「あ、覚えてる? オレオレ」

 あのな、オレオレ詐欺じゃないんだから。どうして男というものは、何年も連絡を取り合っていない昔の女友だちに電話をかけたがるのだろうか。決まって「携帯電話の番号を整理していてさ〜」とか「手帳を見ていたら、なつかしい名前が出てきてさ〜」といいわけしながらかけてくる。こうした電話をかけてくるのは、ほとんどがまだ独身を貫いている男。結婚している男は決して昔の女友だちに電話なんてしない。わざわざ、ホコリを舞い立たせるようなことはしない、というわけだ。

 なつかしんでくれるのはうれしいけれど、結婚してすっかり肝っ玉かあさんになった私に、どうしろというのだ。先日、電話をかけてきたSくんも「結婚して子どもが産まれたんだよね。その後、どうしてる?」と聞いてきたが「元気だけど」と答えるしかない。

 Sくんは某住宅メーカーの技術職をしていた男で、ときどき新宿で飲んでいた「飲み仲間」だ。べらんめえ調のいかにも職人気質な男なのだが、会社を退社して自分で会社を興し、下請けとしてがんばっているらしい。私が結婚するころ、Sくんもつきあっている彼女と結婚間近と話していたので、とっくにいいお父さんになっていると思っていたが、どうやらその直後、破談になってしまったらしい。苦労の甲斐あって、ようやく仕事も軌道にのり、今じゃ年収1000万を超える独身男。

「金はあるし、マンションもあるけど嫁がいないんだよなあ」

 そうつぶやくSくんをちょっと励ましてみる。大丈夫だよ、キミならいいお嫁さんが見つけられるって。

「最近さあ、もうバツイチ、子連れでもいいやって思っているんだけどよう」
「ふうん」
「だから、いろいろと相手を捜しているんだけど、なかなかいねえんだよ」
「ああ、そうなんだ」
「最近の出会い系サイトには、バツイチ専門っつーのもあって……」
「は?」
「そういうところに書き込んでいる女の人っつうのは、意外と本気なんだよな」
「出会い系……?」
「メールのやりとりとかしているんだよ、オレ」
「へえ……(出会い系で嫁探しはまずいだろ、オマエ)。」
「ところでさ、そっちはまだ円満?」
「は?」
「離婚とか、はない? ワハハ」

 ……あ、そういうことだったのね。なつかしいとかなんとか、じゃなくて要は「出会い系サイト感覚」で電話をかけてきて、挙げ句の果てには「離婚したか」をチェック。たとえ、離婚して母子家庭でいたとしても、アンタと結婚するなんてあり得ないから。

「今度よう、子連れでいいから、お茶しねえ?」
「は?(ダンナはどうしろと……)」
「海とかでもいいぞ」
「……(なにいってんだ、コイツ)。」
「飲みに行くのは無理だよなあ」

 私が電話をかけている横では、風呂から上がって真っ裸で走りまわる娘と、電話の相手を気にしつつチンコを拭く夫。離婚? あり得ない。子連れで昔の男と会う? あり得ない……。

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ダメなヤツ

 有機溶剤でラリった職人の話を記事にしたところ、リアリティあふれるコメントが続々とついて笑った。私的には「昔、中毒でした。歯なしです」なんていう、ドン引きコメントを期待していたのだが、ここの読者はまっとうな人間が多いらしい。ヨカッタヨカッタ。

 ところで、へらコブラさんのコメント「知り合いが逮捕」で思い出したことがある。中学で同級生だったMくんだ。中学時代はたいして仲良くもなかったが、大人になってからは一緒に酒を飲んだり、家に遊びに来たりと長い付き合いを続けていた。Mはまつげが長くてハーフみたいな顔立ち、いくつになっても「やんちゃな男の子」みたいな男だったが、いつごろからか何やらあやしげな行動が目立ちはじめる。

 夜中に電話をかけてきて「パーティをしているから今から来いよ」という。ロレツはまわらず、受け答えは支離滅裂。素人の私ですら「てめえ、シャブ食ってんだろ」とツッコミたくなるような様子なのに「注射器でさぁ、血を抜いてラリってんだよ」などといいわけをする。

 そんな彼に嫌気がさし、しばらく連絡を取らずにいたところ、ひき逃げをして逮捕されたと友人から聞いた。あわてて彼の実家に電話をかけ、おかあさんと会う。彼女は泣きながら「いろいろと力になってほしい」とアタマを下げた。

 Mが拘置所にいる間、たくさんの手紙を交わした。検閲の印が押された白い便せんには、自分がおかした罪を懺悔することばや親への感謝の気持ちがつづられている。手紙のやりとりは実刑判決、刑務所に入るまで続いた。そして、1年半後……。出所した彼はまっさきに私の家を訪ね、世話になったとお礼をいった。そのとき初めてひき逃げだけでなく、シャブの売人としても罪に問われていたことを知った。訪ねてきたMは真っ白のスーツに白いエナメルの靴。どこからどう見たってただのチンピラだ。それでも私は優しくて気の弱いところのある、子どものころのMに戻ってくれるだろうと期待していた。

 出所後しばらくして彼から「札幌に行く」と連絡が来た。親戚の店を手伝いながら、シャブがらみの付き合いを断ち、更正したいという。おう、がんばれ。おかあさんのためにも、まっとうな人間にならないとダメだよ。

 そして2年後。たまたま取材で札幌を訪れた私は、Mに電話をかけてみた。ひさしぶりに会わない? と聞く私にMは「今日は用事があるから、夜9時以降なら大丈夫」という。仕方がないので、ホテルでひとり夕飯を取りながら、彼からの電話を待つ。9時、10時、11時……。いつまでたっても電話は来ない。部屋に戻り、彼の携帯に電話をしてみるが、電源が切られていて通じない。12時、1時……。ようやく彼から電話がかかってきた。声が聞こえないほど、大音響で音楽が鳴っている。

「ずっと電話を待っていたのに。いまどこにいるの?」
「パーティがあってさ。今から来いよ〜」

 ロレツはまわらず、受け答えは支離滅裂。以前と同じだ。酒なのかクスリなのかは知らないが、更正とはほど遠い生活をしているMに腹が立った。

「いい身分だこと」
「え? なに〜?」
「人ひとり殺しておいて、パーティだと?」
「え? 聞こえないんだけど〜」
「2度と電話するな」
「なに〜?」
「お前なんて死んでしまえ!」

 Mとはそれっきり。ダメなやつは結局、いつまでたってもダメなんだ。どんなに親が苦労しても、どんなに友だちが心配しても、ダメなんだ。そのときの虚しい気持ちは、10年以上たった今でも忘れていない。

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ある夜のメールから(終)

 ※初めての方は「ある夜のメールから」「ある夜のメールから(2)」「ある夜のメールから(3)」「ある夜のメールから(4)」からどうぞ。

 poohpapaさんからのメールには「それにしても村○武範のギャラが7万円というのは不思議な感じがする。そんなはした金で仕事を請けるのだろうか」と書かれていた。

 もっともな疑問、といえよう。カメラマンやライターが同行するのだから、タレントの懐には7万円のうちの『いくらか』しか入らないはずだ。7万円すべてがタレントのギャラだとしても、その程度の金額で東京都下の立川までわざわざ来るとは思えない。

 実はコレにはからくりがある。最初のメールに書かれていた取材申し込みのやりとりを思い出してほしい。

相手は「明後日の11時半から、フジテレビの、村○武範の『食いしん坊! ××』で取材をさせていただきたい。テレビ以外の雑誌で紹介するための費用で7万ほどかかります」と話している。

 取材申し込みの時点で、相手は「日時と時間」を指定している。私の場合、締切まで日がないときは「○日までに取材したい」「この日程しかない」と頼むこともあるが、たいていは「○日ごろはどうでしょうか」「○時ごろがよろしいですか」と聞いている。

 そこで、村○氏と取材チームはこの日、「立川近辺の」「別の店や企業に」「取材する予定がある」と推測できる。コムベトナムの前後に、すでに確定している取材先があるはず。1軒の取材で7万円でも、1日で5軒行けば35万。ページの大きさによって7万以上もあるはずだから、うまく近場をまわれば、かなりの金額を稼げるわけだ。

 翌日(取材前日)にコムベトナムのママさんが断りの電話を入れたところ、案の定「もう取り消せない」だの「村野さんが楽しみにしている」だの「手配しちゃった」だの、相当なものだったらしい(poohpapaさんがマママの横で一部始終を聞いていた。時間にして20分も粘っていたそうだ)。だって今さら「翌日の11時半」に「他の取材先の近場」で「7万円のお金を払って取材させてくれる」ような店なんて見つからないもの!

 これは詐欺ではなく、巧妙な広告営業。取材を受けて、後から「食いしん坊! ○○じゃなかった」「テレビで紹介するといったのに」と文句をいったところで、相手はこういうはずだ。

「フジテレビの、村○武範の『食いしん坊! ××』取材をさせていただきたい」ではなく「フジテレビの『食いしん坊! ××』の村○武範取材をさせていただきたい」といいました。聞き違いじゃないですか?

「テレビ以外の雑誌で紹介するための費用で7万ほどかかります」といっただけで「テレビで紹介する」とはいってません」

 こうしてある夜の事件は解決したのであった……。

(おわり)

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ある夜のメールから(4)

 ※初めての方は「ある夜のメールから」「ある夜のメールから(2)」「ある夜のメールから(3)」からどうぞ。

 取材を申し込んできたのテレビ局ではなく、出版社だった……ということを知り、思い出したのは皮膚科で見た、ある雑誌のことだった。

「雑誌の取材を受けました」

 およそ病院には似つかわしくない、こんな貼り紙に気づいたのは待ち合い室の長椅子に腰かけたときだった。本棚には子ども向けの絵本とともに、同じ雑誌が何冊も並んでいる。私はそのうちの1冊を取り出して、付箋紙の貼ってあるページを開いた。

 見開きのモノクロページに、華々しいキャッチコピーと先生のインタビュー記事。開院までの経歴や患者に対する気配りなど、それはそれは「すばらしく」書かれている。インタビュアーは女性タレントのか○うかずこ。にこやかな笑顔で先生にインタビューする様子が写真で掲載されていた。

「へえ……。見開きとはずいぶんとチカラを入れたもんだ」

 ライターという仕事柄か、素直に雑誌を見ることができない性分である。ついつい他のページを、あら探しでもするようにめくっていく。ああ、なるほど……。病院、企業、飲食店となんでもアリ、インタビューだけで構成されている雑誌か。しかも、どの取材先でもタレントやら俳優やら女優やらがインタビュアーをつとめている。要するに普通の雑誌とは違い、編集ページを装った広告記事だけで成り立っている雑誌なのだ。 そのとき、ちょうど診察室に呼ばれた私は、先生にいじわるな質問をする。

「センセ、雑誌見ましたよ。取材を受けたんですか?」
「ああ、そうなんだよねえ」
「インタビュアーがか○とうかずこさんでしたね」
「うんうん、そうなんだ」
「取材させてくださいって来たんですか?」
「そうなんだよね。それでインタビュアーはタレント3人のうち、誰がいいですかって聞くから、か○うさんがいいってリクエストしたんだよ」
「……で、取材は無料でしたよね?」
「え?」
「お金、取られたんですか?」
「え? ま、まあ」
「それって取材じゃなく、広告ですよ」
「……」
「宣伝になりますよって、何冊も買わされたでしょう」
「……」

 コムベトナムへの取材はこれと別の雑誌だが、やっていることは同じはずだ。すぐさまpoohpapaさんにメールを送り、事件の全貌を説明した。(最初のメールを開封してから約2時間18分が経過=午後11時18分)。しかしその直後、彼はいくつかの疑問を私に投げかけてきたのであった……。

(つづく)

 明日あたり&全5話で終わらせたいが、どうなることやら。19日から海行くからさぁ、その前になんとか……。

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ある夜のメールから(3)

 ※初めての方は「ある夜のメールから」「ある夜のメールから(2)」からどうぞ。

 取材時間、広告ページと2つの点でやはり怪しいと判断した私は、poohpapaさんにメールを送った。(最初のメールを開封してから約51分が経過=午後9時51分)。

「特番かも……」と淡い期待はわかりますが、ほとんどの店主はこうした宣伝効果に目がくらみ、騙されています。100%に近い確率で詐欺だと思いますので、明日テレビ局に確認してください。もしも、本当の撮影であっても、お金がなぜ必要なのか、なんの雑誌にいつ載せるのかをきちんと説明してもらうこと。本当に広告であれば「どこに載せるか、いつ載せるかわかりません」などという答え方はしないはずです。たとえば、制作会社が撮影を担当していて、局やスポンサーには内緒で裏金を集めている可能性もあります。こうした行為も詐欺ですので、気をつけてください。

 そして、poohpapaさんからの返事が届いた(最初のメールを開封してから約1時間33分が経過=午後10時33分)。彼からのメールには思いもよらない新事実が!

相手は「臨時休業しなくていい」「当日、領収証を持って行きますから現金でお支払いください」といっていたそうです。店が混んできたら逃げる気でしょうか? 取材を申し入れてきた「○○通信社」というのは実在していて、調べたところ出版社のようです。タレントを使って企業のトップにインタビューして「○○ニッポン」という雑誌に掲載しているようです。

「出版社」「タレントを使った取材」という重大なキーワード。取材を申し込んできたのは、テレビ局じゃなくて出版社だったのだ。このメールを読んだ瞬間、私はひとりの人物を思い出した。近所の皮膚科の先生である。

(つづく)

 みなさん、ごめんなさい。さっさと完結したいのだけれど、終わらない。それほど複雑な話なのだ。徹夜仕事の後、がんばって書いたので許して……。

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ある夜のメールから(2)

 ※初めての方は「ある夜のメールから」からどうぞ。

 水曜日の夜9時ごろ、poohpapaさんからのメールが届いた。それを読んだ私はすぐさま電話で、詐欺の可能性を指摘。しかし、鼻の穴をおっ広げて「それは詐欺だ」と話したものの、万が一違っていたら? 本当の取材だったら? ……という心配がアタマをよぎる。明日の朝、poohpapaさんがフジテレビに電話して、番組担当者から「そんな取材は知りませんよ」といわれたとしても、詐欺として確定するわけじゃない。約束の日に、取材を申し込んだ本人が来店し「村○は後日、取材に来ます」といいながら、てきとうな話をして金を受け取り、どこかへ雲隠れしない限り、コムベトナムのママさんを騙したとはいえない。もしも事前に通報して大騒ぎになった挙げ句、実は誤解だったとしたら私の責任は重大だ。

 とにかく冷静になって考えてみようと、poohpapaさんのメールを読み返してみる(最初のメールを開封してから約40分が経過=午後9時40分)。

相手は「明後日の11時半から、フジテレビの、村○武範の『食いしん坊! ××』で取材をさせていただきたい。テレビ以外の雑誌で紹介するための費用で7万ほどかかります」と話している。

 私はここで【あること】に気づく。通常、雑誌の取材はカメラマンとライターのふたりで行く。スチールカメラのセッティングや料理の準備、インタビュー、撤収までを行って早いときで1時間。写真点数が多かったり、インタビューのボリュームが多いときは2時間以上かかることもある。テレビの撮影で、タレントが来店するのであれば、タレント本人にマネージャー、ディレクター、カメラマン、音声、照明など大所帯であろう。しかも本当に「食いしん坊! ××」ならば、タレントと店主のからみ(同席をして会話をする)もあるから、長丁場となるはず。今は水曜日の夜9時すぎ。とてもとても【明後日=金曜日のランチタイム直前に訪れて、通常営業の店内で撮影】などあり得ないのだ。怪しい、怪しすぎる……。

 加えて、もうひとつ怪しい部分を発見する。「食いしん坊! ××」はキッコーマンがスポンサーで放映している。「テレビ以外の雑誌に載せるため」といったらしいが、雑誌掲載に金が必要なのは広告ページであり、キッコーマンの広告ならともかく、「食いしん坊! ××」の広告ページなど見たことはない。しかも、テレビで放映したものを焼き直しして、雑誌広告に使うとは考えられない。やっぱり怪しい……。

「冷静になって考えても怪しい」と結論づけた私は、2つの疑問点を挙げてpoohpapaさんにメールを送った(最初のメールを開封してから約51分が経過=午後9時51分)。

(つづく)

 なんだか「24(TWENTY FOUR)」並みの分刻み展開に! 以前書いた「僕の名前はジャック・バウアー」を思い出す……(笑)

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ある夜のメールから

 ※この話はもともと私がネタにする話ではないが、ある人からの「よろしければお使いください」との言葉に甘え、書くものである。

 数日前の夜9時ごろ『悪徳不動産屋の独り言』のpoohpapaさんから1通のメールが届いた。彼とは先日、初体面し、おいしいベトナム料理をたらふくごちそうになってきている(悪徳不動産屋と下ネタの女王)。彼からのメールはそのベトナム料理店「コムベトナム」のママさんから聞いた話に関係していた。

「コムベトナム」に取材の申し込みがあったらしい。相手は「明後日の11時半から、フジテレビの、村○武範の『食いしん坊! ××』で取材をさせていただきたい。テレビ以外の雑誌で紹介するための費用で7万ほどかかります」と話している。本人が来てテレビで紹介されるなら本物かもしれないし、大変な宣伝効果になる。でも『食いしん坊! ××』は現在、松○修造がやっているはず。テレビ取材を受けてカネがかかるって、どうも釈然としない。poronさん、裏事情に詳しければご教授ください」

 メールの内容はおおむねこんな感じ。「裏事情に詳しければ……」と私にメールを送る、というのが釈然としない気持ちではあったが、たらふくごちそうになった身だ。少しでも役に立たねばなるまい。

 まず最初、poohpapaさんからのメールを読んで思い出したのは「ライター詐欺」であった。駆け出しのころ、大手タウン誌Tの仕事をしていたのだが、取材先の飲食店でしょっちゅう詐欺の話を聞かされた。ある日、ライターを名乗る男がやってきて「タウン誌Tに掲載したい。ロケハンをしているので料理をいくつか出してくれないか」という。集客効果抜群の雑誌であったため、オーナーは「ぜひ載せてくれ」と好きなだけ飲み食いをさせてライターを帰らせた。しかし、待てど暮らせど取材の申し込みはなく、名刺の住所や電話はウソだった……という話だ。コムベトナムの件もこれと同様で、絶対に詐欺の仕業だとピンと来た。メールなんか打っている猶予はない。あわててpoohpapaさんに電話をかけ、鼻息も荒く「それは詐欺ですよ、絶対! 取材で金を取るなんてあり得ません! 明日にでもテレビ局に電話をかけて確認してください。もしも詐欺であったら、そのままにせず、きちんと通報をしてください」と話をした。poohpapaさんはひととおり私の話を聞くと「やはり変ですよね。明日、テレビ局に確認してみます。本当にどうもありがとう」と電話を切った。

 しかし……! 話はこれだけでは終わらなかった。 詐欺だと思っていた相手は実は……!(つづく)

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悪徳不動産屋と下ネタの女王

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 以前から「悪徳不動産屋の独り言」のpoohpapaさんに「ぜひ、立川でベトナム料理を食べましょう。ごちそうしますよ」とのお誘いをいただいていたのだが、なかなか都合がつかず、ようやくお会いすることができた。親友のあっくんもどうぞ、という言葉に甘えて、大食い大酒飲みペアで行ってきたのである。

 待ち合わせはpoohpapaさん&さとひろさんの御用達の「ベトナム料理/コムベトナム」。地下への階段を降りていくと、まだお客さんが誰もいない店内で、ちょこんと座っている2人の姿。あいさつをする私とあっくんを見て、poohpapaさんはきっと後悔しただろう。「こりゃ、食いそうだな」と。

 ベトナム料理はあまり縁のない私だったが、それはそれはおいしくって遠慮ひとつせず、たんまりごちそうになってきた。焼き大エビのベトナム風カレーソースを手づかみで、しかも指についたソースをしゃぶりながら食べていると、我ながら「初対面のふたりを前になんて行儀の悪いオンナなのだろう」と思ったり……。いや、行儀などを気にしていられないほど、おいしかったんだから!

 poohpapaさんはblogの記事やコメントで感じていた通り、とても優しくて繊細な人だった。ときには反感を買いかねない記事をアップしていることもあるが、あれはpoohpapaさんの繊細な気持ちと、忍耐強さの裏返しだと思う。あんなに温和な人が怒るとき、というのはよほどのことなんだと実感した。

 さとひろさんはpoohpapaさんの隣で、ニコニコとすてきな笑顔で静かに座っていた。テンション全開の私たちの話をうんうんと聞いてくれる、控えめだけど芯のしっかりした女性、という印象。

 たくさん笑って、たくさん食べて、たくさん飲んでシアワセいっぱいの一夜であった。poohpapaさん、さとひろさん、本当にありがとう。ちなみに上の写真はさとひろさんとあっくんの手。料理が来たときに撮影すればよかったのだが、すっかり忘れて食べ終わってから撮った。下の写真はお会計をしているpoohpapaさん。どことなく「ああ、こんなに……」と背中が物語っているように見えるのは気のせいか。

 poohpapaさん、さとひろさん、あっくんのblogでも記事がエントリされているので、ぜひこちらもどうぞ。

●悪徳不動産屋の独り言/人生で最高の飲み会
●猫とひなたノルン/世界でひとつの「ノルン」グッズ
●ささらほうさら/至福の宴

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グタグタなふたり

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 先日、仕事のコラムで銭湯のマナーについて書いた。明け方になってようやく完成したものの、原稿と一緒にアップするイメージ写真がない。手持ちの写真を探したところで銭湯の写真などあるはずもなく、考えたすえに出かけたのが小金井公園内の東京江戸たてもの園。ここには「千と千歳の神隠し」に出てきた湯屋のモデルとなった銭湯・子宝湯が移築展示されていて、お湯は張っていないものの、古い体重計やのれん、木桶などを撮れば「風情ある銭湯のイメージカット」の完成だ。上の写真はそのときに撮影した古い和傘屋や酒屋、仕立て屋など。いい感じの小道具が揃っていて、ずいぶんと撮りだめをしてきた。

 小金井公園へは朝10時に家を出て、自転車とCoCoバス(コミュニティバス)を乗り継いで到着。東京江戸たてもの園に入る前、友だちのあっくんに「ヒマだったら犬の散歩に来い」と電話をし、むりやり呼びつける。撮影が終わると、あっくんと合流し、木陰のテーブル席に座り、まったりとコーヒーを飲んだ。平日の午前中。静かで涼しくて、風が気持ちがいい……。ああ、なんて贅沢なんだろう。横を通りすぎるのはベビーカーを押した若い母親か、あてもなく歩くオヤジだけ。

私「平日の公園ってさ、グタグタなオヤジが多いねえ」
あ「グタグタって?」
私「ヨレヨレの服で、ぼんやりと遠くを見ている」
あ「すいません。グタグタなオヤジです」
私「グタグタなオヤジとお茶している私はなんだ」
あ「グタグタなオバサン……」

 気分がよかったのはここまで。呼ぶんじゃなかった。

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芽生えた命の選択

 15年来の女友だちからは娘ふたりの写真を印刷した年賀状が届いていた。上の娘はもう小学校5年生だという。今年の写真は友だちの顔にうりふたつで思わず大笑い。「こんなソックリになっちゃって……」という感じだ。

 実は彼女がこの子を身ごもったとき、バツイチ子持ちであったうえに、それを隠して年下の男の子と付き合っていた。ある日、彼女から「生理が来ないんだけど〜」と半べその電話が来た。ふたりで待ち合わせてドラッグストアへ行き、行きつけのスナックで即検査。トイレから「うわ〜」と叫び声がして、私とマスターはやっぱりと顔を見合わせたのである。

「どうしよう」と困惑する彼女に、私は「自分で決めなさい」「彼と相談して」としかいえなかった。彼女はカフェでアルバイトをしながら、養育費を一銭ももらわずに子どもを育てていた。もちろん、生活はギリギリ。当時、駆け出しライターで貧乏だった私とたまに焼き鳥屋へ行っては、なじみの店員に「ふたり合わせても有り金3,000円。超えそうになったら注文ストップしてね」なんてやっていたほどだ。だから、そんな彼女に「ひとりで産んで、ひとりで子ども2人を育てなさい」などといえるはずがない。

 妊娠したこと、バツイチであること、子どもを育てていることを話した年下の彼は動揺した。彼女の親は「結婚できるわけじゃないのだから、堕ろしなさい」と出産には大反対。産婦人科に中絶手術を予約したものの、当日になって「やっぱりイヤ。産んで育てる」とドタキャンした。すでに子どもを産み育てている彼女は「せっかくの命を殺すことなんてできない」という気持ちが強かったのだ。そして、親と彼氏を説得して無事に女の子を出産。現在は未入籍ではあるが彼氏と前夫の子ども、そのときお腹にいた女の子、その後生まれた女の子と一緒にシアワセな家庭を築いている。

 私はあのとき以来、困惑する彼女を「自分で決めなさい」と突っぱねたことを後悔していた。もっと親身になっていればよかった、もっと何かできたんじゃないかと。でも、今年の年賀状を見て、そんな偽善は必要なかったんだと気づく。彼女が「産む」と決めたからこそ、「育てることができた」のだし、反対されながらも「家庭を持つ」ことができたのだ。自分の道は誰かに決めてもらうものじゃない。ましてや命の選択ならなおさらのこと。

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